爪白癬
爪白癬 (つめはくせん)とは、手足の白癬が進行し、爪の間に白癬菌が侵食して、爪自体が白癬菌に感染した状態となり、爪の肥厚肥厚・変色・変形 が起こる病気です。頻度は全白癬患者の20%程度です。水虫が進行して指先・指の間だけでなく爪にまで広がってしまった水虫の末期症状と位置付けられます。
|爪白癬の疫学
- 足白癬を長期間に渡り保有しているほど罹患しやすい
- 中高年が患いやすい
- 10代や20代であってもかかりうる
- かつては男性の罹患率が高かった
- 靴を長時間履くタイプの女性にも罹患しやすい
爪白癬の原因
足元の温度・湿度が高くなり、水虫の原因である<白癬菌>の繁殖が促進してしまうために起こります。爪白癬は多くの場合、足や手白癬に続いて起こります。これらを放置することが最も大きな原因です。
- 長時間靴を履き続ける
- 密閉性の高いブーツなどを履き続ける
- 足や手白癬を放置する
爪白癬の分類
爪白癬には複数の病型があります。
遠位爪下型
最も多いタイプ。爪甲の先端部が白色から黄色に濁って、爪甲の下の角質部分が厚くもろくなり全体として爪が厚くなる(先端部が 楔状に濁るタイプも遠位爪下型に含める)
表在型
爪甲の表面が白色になる
混濁型
爪甲の付け根が濁る爪白癬は足に多いのですが、手指の爪に生じることもあります。
爪白癬の症状
|爪白癬の発症形態
足の爪伸ばしていると、汗や垢などの汚れが溜まり白癬菌の温床となります。長時間靴やブーツなどを履いたり、雨でぬれたりすることで発症します。最初は爪ではなく、爪と隣接する指先が水虫(足白癬)となるケースが多く、そこから爪の間へと感染しゆっくりと進行して行きます。
|爪白癬の症状
- 初 期 爪の先の色が、白っぽくなるだけであり、自覚症状はない。軽度のかゆみ程度
- 進行期 次第に指側(爪根部)に白癬菌が侵食し、症状が進行する
- 末 期 爪全体の色が <白→黄色→茶色→黒色> に変化
爪の組織が盛り上がってポロポロと剥がれ落ちるようになります。白癬菌が拡散し新たな足う白癬・爪白癬の原因となります。
治療せずに放置し症状が進行すると、靴を履くことや歩くことになど日常生活にまで支障をきたすようになります。糖尿病の患者様は合併症の危険も生じてきます。生活スタイルが変わらないので他の指にも白癬が拡大し、家族にも感染が広がるため早期治療が必要です。
爪白癬の検査と診断
直接爪から検体を採取し薬品を加える 直接鏡検(顕微鏡での検査)KOH法 で行います。
爪白癬では皮膚と違って菌要素を見つけにくいこと、および菌の形態が不整形で判定しにくいことが多いので注意が必要です。
爪白癬の治療
爪白癬は足白癬(水虫)の末期症状なので極めて早い治療が必要です。治療法には 内服・外用治療 の2つの方法があります。ごく初期であれば、進行した爪を切断し皮膚には外用薬を塗り完治が可能ですが内部まで進行した爪白癬は、処方内服薬なしには、完治は困難です。
初期であれば、比較的に早く治療することが可能であるので、早急に医師の診断を受けることが必要です。爪の表面だけに白癬菌が寄生し白濁している場合は、そこを削り取って外用薬を塗布つければ治ります。しかし爪が厚くなり、黄〜白濁する爪白癬は内服薬でないと治りません
通常、爪の水虫で皮膚科を受診すると内服薬を処方されます。外から塗るだけの外用薬では、爪の内側の白癬菌まで薬の有効成分が届かないからです。つまり内服薬で血液に有効成分を運ばせ、内側から患部に届けるというわけです。
|爪白癬の内服治療
足白癬の場合、スプレーや塗り薬のような外用薬で治療しますが爪白癬は外用薬で根治することは極めて困難です。内科・皮膚科などで内服薬を処方してもらい継続して服用し治療を行います。
爪白癬の代表的な内服薬には テルビナフィン(ラミシール) ・ イトラコナゾール(イトリゾール) の2種類があります。
テルビナフィン(ラミシール)
1日1回1錠を6カ月以上毎日内服 ・ 他の薬剤との飲み合わせの問題が多い
ラミシールの主成分は<テルビナフィン>というもので、水虫の原因である白癬菌を死滅させ増殖を防ぎます。1日1回朝食後に1錠服用し、爪が完全に生え変わるまで(個人差有)3〜12ヵ月に渡って飲み続けることになります。ラミシールにはクリーム・軟膏など様々な形状のものがありますが、外用薬のラミシールでは患部まで浸透しないため、内服して体内から患部に作用させ治療します。
イトラコナゾール(イトリゾール)
パルス療法1日2回4カプセル(合計400mg)を1カ月に1週 3サイクル)
イトラコナゾールは1週間内服して、その後3週間休薬、これを1パルスとして、3回繰り返すパルス療法があります。
肝機能などの重篤な副作用をおこす事があるため、治療前と治療開始後2カ月は月1回の血液検査が必須となります。爪への貯留性が高く内服中止後もしばらくは改善してゆく傾向があります。
皮膚真菌症診断・治療ガイドライン
- 短期間で治療を完了したい場合 イトラコナゾールのパルス療法
- 時間がかかっても高い治癒率を期待する場合 テルビナフィンの連続投与
かつてはグリセオフルビンが用いられていました。副作用の問題や新薬の登場などもあり、2008年に日本では生産を終了したため現在では処方されていません
抗真菌内服薬の主な副作用
- 肝炎、肝不全などの肝障害
- じんましん、かゆみ、発疹など
- 胃の不快感・吐き気・下痢・悪心・腹痛
- 血液成分の減少・貧血
上記のような副作用の可能性があるため医師の診察を定期的に受けながら治療する必要があります。
内服期間と爪の発育
爪が完全に生え変わり、しばらく経過するまで内服薬を服用するので気長に根気よく治療をする必要があります。
- 爪は完全に生え変わるまでの期間 手の場合6ヶ月・足の場合12ヶ月
- 生え変わりのスピードの違い 親指は早い・小指は遅い
- 爪の長さや生え変わりのスピードなどは個人差がある
抗真菌薬内服治療と医療経済
一般的に内服治療は最長で1年間程服用し続けますので経済的負担も軽視できません。健康保険の適応で患者様が3割負担の場合
テルビナフィン(ラミシール) 1日1回1錠 1ヶ月 約3,000円 年間36,000円
イトラコナゾール(イトリゾール) 1日2回1錠 1ヶ月 約10,000円 年間120,000円
(パルスは更に高額)
となります。悪化した爪水虫の治療は長期間に及ぶことが多く、再発したら更に経費がかさみます。内服治療には副作用の心配と費用の覚悟が必要となってきます。
|爪白癬の外用治療
爪水虫は初期段階から治療を開始できれば、抗真菌剤外用薬だけで完治させることも可能です。外用薬使用により爪白癬で崩れていた爪が硬く崩れにくくなり、白癬菌の拡大を防止になります。
外用薬のメリット
- 外側からの滅菌 患趾の爪の間に外用薬を塗布し外側からも滅菌する
- 足白癬の治療・予防 爪白癬の元凶である足白癬を同時に治療・予防する
外用薬使用前に <水虫用の石鹸>で洗って、タオルで拭いて清潔しておきましょう。日本ではエフィナコナゾール(製品名クレナフィン 科研製薬製造販売)のみが承認されています。外用薬は、朝晩1日2回するのが効果的です。塗り薬の場合、手指に感染したり感染範囲が拡大する可能性もあり、その場合にはスプレータイプの使用をお勧め致します。
現在水虫が気になっているという患者様は、「爪の先端が白っぽくなった」「爪に白いラインができた」 などの皮膚→爪への感染症状を見逃さないようにご注意ください。
爪水虫治療薬の最新情報
欧米では、副作用を考慮し最初は外用薬治療から始めるのが一般的です。最近では、副作用が無く爪の上から塗ってもしっかり内部まで浸透する <Dr.Gsクリアネイル> という外用薬が注目を集めています。この新薬の主成分 <トルナフタート> が硬い爪の組織を通って白癬菌に直接作用します。無臭でノンアルコール、色も目立たない乳白色です。国内では、水虫の外用薬として <ラミシールクリーム(軟膏)> が一般的ですがラミシールには爪から浸透して患部に届く作用はありません。
<病気に気づいたらどうする>
成人の爪白癬の罹患率はかなり高いとされています。爪の肥厚や変形が高齢者の起立、歩行障害、転倒事故の原因になることも指摘されています。重症になるとますます治療が難しくなるため、なるべく早く内服治療を開始します。
爪白癬の予防
日常生活の中で水虫・爪水虫の予防や悪化を防ぐことが今後の治療を進めていくうえで重要になります。次のような事を心がける事で、治療・予防の効果が上がります。
高温度と高湿度で白癬菌は活性化します。白癬菌に感染している足は、毎日洗い、拭き、空気にさらして乾燥させましょう。できれば、水虫専用の石鹸で洗いましょう。
- 職場での工夫
- 職場では、通気性のよいサンダルなどに履き替える
- 職場にも1足ほど靴を置いておき、帰りはそれを履いて帰り、交互に使う
- スプレータイプの市販薬などを使う
毎日の通勤でかなり足がムレてしまうようなら、職場に替えの靴を置いておき、出社時と退社時で違う靴を履くのも良い方法です。
他の指への感染は爪水虫を起こしやすくします。
- 靴下は、一日2回とりかえる
- 靴下は、五本指に分かれている物を使う(吸湿性の良いコットン製の物を選ぶ)
- 靴・スリッパを2足以上にして、毎日交互に履くようにする
- 靴・スリッパを新しくするか、洗ってよく乾かす
- 市販の通気性の良い、靴内に敷くシートを使う
- 就眠中には足趾の間に挟んで使うトーセパレーターを使用する
このような方法で、他の指への感染はある程度防げます。
感染している家族の治療
- 足白癬・爪白癬の家族には率先して治療してもらうことで拡大を防ぐことができます。
掃除・床拭き・洗濯
- 患部からポロポロと落ちる角質は白癬菌の塊の可能性が高いです。室内をキレイに拭き掃除することにより同居する家族への感染を防ぎます。カーペット・マット なども洗って日光で乾燥させましょう。
風呂・水洗い
- お風呂マット、スリッパを共用しない(感染者と分離する)
- 足が蒸れたり、外出から戻ったりしたら、水虫専用のソープで洗う
- 風呂から上がったら、足をタオルで丁寧に拭き、風を当てて乾かす
- 風呂用マット・手洗い用マットは、小まめに取り替える
お風呂上がりに足の水分をふき取るマットは白癬菌の温床です。少々面倒ですが、感染している人とそうでない人のマットは完治するまで分けた方がいいでしょう。同様に、家族間でのスリッパの共用は避けましょう。
温泉・プールなど
- 不特定多数の人が裸足で出入りする大浴場やプールには100%白癬菌が存在します。被害の拡大を防ぐために <洗浄・乾燥> を徹底しましょう。<ファンガソープEX>などの水虫用の石鹸は予防にも役立つので、水虫感染者用と家族用に分けて用意すれば完璧です。
田島クリニック
TEL 045(264)8332
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1F Etoile Yamashita, 118-1 Yamashita -Cho, Naka-ku, Yokohama, 231-0023
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