横浜市中区・馬車道 総合診療クリニック 内科・小児科・外科系

逆流性食道炎 GERD

|逆流性食道炎とは?

 

逆流性食道炎とは胃食道逆流症(Gastroesophageal Reflux Disease GERD)のひとつです。胃・十二指腸内容が胃から食道への逆流することで発生する食道の炎症性疾患です。胸やけなどの症状が現れます。胃液は消化のための強酸性の胃酸・消化酵素を含んでおり強い刺激性があります。このため胃は粘膜によって保護されています。一方食道は胃液への抵抗力が弱いため逆流した胃酸により損傷を受けやすいのです。

  • 胃内容  酸やペプシンを含んだ胃酸
  • 十二指腸内容  胆汁酸・膵液

 

|逆流性食道炎が起こるメカニズム  下部食道括約筋の役割

 

健康体では胃液が食道に逆流しない仕組みが働いています。下部食道括約筋は、食道と胃のつなぎ目(噴門部)にある筋肉で、嚥下時には弛緩して食道から胃に食物が落ちるようにし、通常は食道を締めて胃の内容物が逆流を防止しています。一方食道のぜん動運動で胃内容物が逆流した場合それを胃へ戻し、胃液や胃内容物による食道の損傷を防止しています。

  • 下部食道括約筋の持続的なゆるみ  胃酸の逆流防止機能が弱まる
  • 胃酸の増加  胃酸が多いほど胃液・胃内容物が逆流時に食道が損傷される

 

|ピロリ菌と逆流性食道炎

 

ピロリ菌は胃の中に生息する細菌で、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの病気の原因のひとつです。ピロリ菌感染感染者は、逆流性食道炎の発症率が低いと言われています。

ピロリ菌感染 ⇒ 胃炎の発生 ⇒ 胃酸分泌が減少 ⇒ 逆流性食道炎の発症低下

上記のメカニズムにより逆流性食道炎の発症率は減少します。またピロリ菌の除菌によって逆流性食道炎が一時的に起きる可能性がありますが、その後自然に寛解する傾向にあります。

逆流性食道炎の原因

|逆流性食道炎のメカニズム

 

胃液・胃内容物の逆流は、食事の内容・肥満・加齢・姿勢などにより下部食道括約筋等の食道を逆流から守る仕組みが弱まったり、胃酸が増えすぎることで起こります。

 

下部食道括約帯(LES)

 

食道と胃の境(食道下端)には下部食道括約筋を中心とする下部食道括約帯(LES)があって胃内容の逆流を防止しています。下部食道括約帯は通常閉じていますが、嚥下運動時には開大します。一方一過性下部食道括約帯弛緩といわれる状態があり、座位や立位の際にこの弛緩が比較的長く持続します。これが頻回に起こるのが胃食道逆流症の主な原因とされています。腹圧をかけた時に下部食道括約帯が弛緩したり、下部食道括約帯がまるで機能しないケースもあります。

下部食道括約帯以外の逆流防止システム

  • 食道裂孔のピンチコック作用
  • ヒス角のフラップバルブ作用
  • 腹部食道・粘膜のロゼッタ形成

食道裂孔ヘルニア
その他に胃食道逆流症を起こしやすくする病態に、食道裂孔ヘルニアがあります。

 

|逆流性食道炎の原因

 

逆流性食道炎を引き起こしたり、増悪させたりするファクターは次の様なものがりあります。

 

食事・加齢・肥満・ストレス・姿勢・飲酒・喫煙・腹圧・薬剤

 

食 事   過飲過食・高脂肪食・高タンパク食

 

 

 1.過飲過食・暴飲暴食

 

過飲過食・暴飲暴食は胃酸の分泌を高め、逆流時に食道を損傷しやすくなります。また過食により胃が拡張され下部食道括約筋が弛緩します。

 

 

 2.高脂肪食

 

脂肪分の過剰摂取により十二指腸から分泌される コレシストキニン(Cholecystokinin CCK) という消化管ホルモンが分泌され下部食道括約筋が弛緩します。また脂肪の多い食事は、胃酸を増やすことによっても胃液の逆流を起こしやすくします。

 

 

 3.高タンパク食

 

タンパク質の多い食事は消化に時間がかかり、胃に長くとどまるため、胃液の逆流が起こりやすくなります。

 

加 齢

加齢により下部食道括約筋が緩み、その機能が低下します。食道ぜん動運動・唾液量なども減少し、逆流した胃液を胃に戻すことができなくなります。

 

肥 満

肥満と逆流性食道炎との関係は現在明確化されていませんが、肥満の人は逆流性食道炎の原因のひとつである食道裂孔ヘルニアになりやすいことは判明しています。また肥満体型の方は腹圧が上昇しやすく、胃酸が逆流しやすいです。

 

ストレス

ストレスにより胃酸の分泌量が高まり、食道のぜん動運動の機能も低下します。

 

姿 勢

元来姿勢の悪い方、背中の曲がった患者様は、腹部が常時圧迫されます。これにより胃の中の圧力が高まり胃液の逆流が起こりやすくなります。

 

飲酒・喫煙

飲酒・喫煙は、胃酸の分泌を高めます。メタボリックシンドロームの原因にもなります。

 

腹圧の上昇

妊娠・肥満・便秘・運動などによる種々の原因により腹圧が上昇します。これにより胃の中の圧力が高まり胃液の逆流が起こりやすくなります。

 

薬 剤

喘息・血圧・心臓の病気などに使う薬の中には、下部食道括約筋を弛緩する作用があるものがあります。

逆流性食道炎の分類

逆流性食道炎は内視鏡による重症度で分類されます。ロサンゼルス分類が一般的に広く用いられています。

  • Grade N 正常粘膜
  • Grade M 明らかな糜爛や潰瘍がなく、発赤だけを認めるもの
  • Grade A 粘膜障害が粘膜ひだに限局し、5mm以内のもの
  • Grade B 粘膜障害が粘膜ひだに限局し、5mm以上で相互に癒合しないもの
  • Grade C 複数の粘膜ひだにわたって癒合し、全周の75%を超えないもの
  • Grade D 全周の75%以上にまたがるもの

非びらん性胃食道逆流症(non-erosive reflux disease NERD)とは?
胸やけ、ゲップ、前胸部の灼熱感などの逆流性食道炎に比較的特徴的な症状がありながら内視鏡検査で食道下部に異常が見つからない場合がしばしばあります。これはNERDと呼ばれ、逆流性食道炎とは別の病態と考えられています。NERDの原因については、食道粘膜の過敏性、食道上部の知覚過敏帯への胃液刺激などが想定されていますが、特定されていません。NERDは逆流性食道炎に比べ、若い女性で、比較的やせ気味の人に多くみられ、食道裂孔ヘルニアもあまり合併しません。

逆流性食道炎の症状

逆流性食道炎の典型的な症状は次のようなものがあります。

 

胸焼け(Heartburn) 

胃液や胃の内容物が食道に逆流すると胸のあたりに焼けるような不快な感じがする胸やけが起こります。
心窩部から胸部にかけて起こります。

 

呑 酸(どんさん)

?酸とは酸っぱい液体が口まで上がってきてゲップが出る症状です。重症化すると吐いてしまうこともあります。食事中・後、横になったとき、前屈したときに喉や口に胃酸が逆流することにより起こります。

 

胸痛・胸部違和感・不快感

胃酸の逆流により胸の痛みや胸がしめつけられるような、狭心症に似た痛みを感じることがあります。

 

喉の痛み・違和感・声のかすれ

逆流した胃液で、のどに炎症が起こり、違和感や痛みを感じることがあります。ひどくなると食べ物が飲み込みづらくなったり、声がかれたりすることもあります。

 

心窩部不快感

みぞおちに何か詰まったような不快感を感じます。炭酸飲料を飲みたくなる気分です。

 

腹部膨満感

心窩部を中心にお腹が張った感じがします。

 

嘔吐・げっぷ・流涎

?酸が重症化すると、胃液の逆流によりにより嘔吐・げっぷがひどくなりよだれが出ます。

 

食物による食道痛 

刺激物が食道を通過する時に、障害された食道粘膜を刺激し痛みを感じます。

 

咳・喘息・咽頭痛

逆流した胃液が喉や気管支を刺激し、食道の粘膜を通して神経を刺激したりして起こると考えられています。
就寝中逆流物の気道への誤嚥による呼吸器症状咳や喘息が起こることがあります。逆流性食道炎の治療を行うと、喘息の症状が改善する患者さんもいます。

 

不 眠

上記症状により睡眠障害となるケースもあります。

逆流性食道炎の検査と診断

逆流性食道炎の診断や治療の効果をみるために以下に示すような問診や検査が行われます。

 

問 診

逆流性衝動炎の診断・治療では、問診により症状を正しく伝えることが重要です。逆流性食道炎などの診断のために特別に作られた世界共通の問診票(QUEST問診票)を使って、症状を判定します。

 

内視鏡検査(胃カメラ)

上部消化管内視鏡(胃カメラ)を口か鼻から入れ、モニターで食道の粘膜の状態を確認する検査です。食道でのびらん・潰瘍・腫瘍の存在、重症度を判定します。粘膜の色調変化およびびらん・潰瘍の大きさや広がりを観察します。特に発赤や白色浮腫を示す色調変化型の食道炎にも注意する必要がありますし、内視鏡的に変化を認めにくいGERD(NERD)もあります。逆流性食道炎の程度分類にはロサンゼルス分類がよく用いられています。最終的には24時間pH測定を行います。

  • 分光画像内視鏡  胃・バレット食道・正常食道の粘膜の色調の変化から判別を行う
  • 拡大内視鏡     血管走行や腺構造の違いが調べる

 

食道内pHモニタリング

食道への胃酸逆流を評価します。モニターにより24時間検査し、食道内pHが急速に4以下に低下した時に胃酸逆流と判定します。

 

組織検査

食道の病変が逆流性食道炎によるものか、がんなど他の病気によるものかの区別が難しい場合は、内視鏡検査の時に病変部分の組織をとって病理組織学的検査を行います。

 

酸分泌抑制薬による診断(PPIテスト)

症状があっても内視鏡検査で異常ない場合や、内視鏡検査施行困難な患者様に施行する診断方法です。
逆流性食道炎や非びらん性胃食道逆流症の治療に使われるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を7日間試用して、効果判定をします。胸やけなどの症状が良くなれば、逆流性食道炎や非びらん性胃食道逆流症の可能性が高いと診断されます。

逆流性食道炎の治療

逆流性食道炎の治療には次のようなものがあります。

 

薬物療法・生活習慣の改善・手術療法・精神療法

 

薬物療法

一般的な薬物療法では、胃酸を抑えることが目的とされます。

 

プロトンポンプ阻害薬(Proton-pump inhibitor PPI)  第一選択薬・制酸効果は最強
H2ブロッカー(Histamine H2-receptor antagonist)  効果発現が比較的早い

 

アルギン酸ナトリウム(Sodium alginate)          胸焼け(Heartburn)や消化不良(Indigestion)
炭酸水素ナトリウム(Sodium Hydrogen Carbonate)   胸焼け(Heartburn)や消化不良(Indigestion)
炭酸カルシウム(calcium carbonate)            胃酸過多に対しての制酸剤

 

その他消化管運動賦活薬なども併用されます。

 

プロトンポンプ阻害薬(Proton-pump inhibitor PPI)の保険適応
胃潰瘍  8週間まで
難治性逆流性食道炎  PPIの長期投与が可能

 

生活習慣の改善

日常生活においては胃酸過多・胃酸の逆流を避けるようにします。消化の良いものを食べ、暴飲暴食を止め食後横になることは極力避けましょう。就寝時には頭を少し高くする(Fowler体位)ことも効果ありと言われています。規則正しい生活に努め ストレスを避ける、ためないように心がけましょう。肥満は解消し、油ものやチョコレートなど逆流しやすい食品の制限も必要です。

 

手術療法

内科的治療で効果がない場合は外科的治療を行います。食道裂孔ヘルニアを併発し重症例では手術(噴門部形成術など)を行う場合もあります。 腹腔鏡下ニッセン法が主流ですが、食道の蠕動の悪いものにはトペー法、ドール法も行われます。コリス法、ダイタル法も短食道症例に対して行われることがあります。

 

精神療法

薬物療法に加えて根治を目的とした精神科的治療を平行して行う場合もあります。治療は長期化する場合が多く逆流性食道炎の症状により睡眠障害・うつになるケースに対し施行されます。

 

田島クリニック

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