横浜・馬車道の総合診療クリニック

脳卒中(脳血管障害)

|脳卒中とは?

 

 脳卒中とは一般的用語であり、正式な医学用語ではありません。正式には <脳血管障害> です。脳血管障害のうち急激に発症したものは、脳血管発作 (Cerebrovascular attack  CVA) または 脳卒中(Stroke・ Apoplexy) と呼ばれています。脳卒中の <卒> は卒倒(そっとう)(突然倒れる)の卒で“突然に”の意味、<中>は中毒(毒にあたる)の中で“あたる”という意味ですから、脳卒中とは脳の病気で突然に何かにあたったようになる(倒れる・意識を失う)ことを意味します。

脳卒中という言葉はは中国から渡ってきた言葉ですが、西暦760年の日本の書物に既に認められています。日本でも長い歴史をもっていることがわかります。近代医学が発展する前から、人々は卒中という病気があることをある程度理解していたことの証拠でもあります。

 

日本における脳卒中の現状と患者動向
  • 脳卒中の患者数は現在約150万人といわれ、毎年25万人以上が新たに発症
  • 脳卒中は、<がん・心臓病>に次いで日本における死因の第3位
  • 「寝たきりになる原因」の3割近くが脳卒中などの脳血管疾患
  • 全医療費の1割近くが脳卒中診療に消費
  • 高齢者社会・成人病増加により、脳卒中患者は2020年には300万人超えすと予想

脳卒中の分類

|脳血管障害の分類

3つの代表的な脳血管障害 脳梗塞  脳出血 くも膜下出血です。

 

脳梗塞(Apoplexy) 脳血栓  脳塞栓  一過性脳虚血発作

脳の血管が細くなったり、血管に血栓が詰まったりして脳に酸素や栄養が供給されなくなるために脳の細胞が障害を受ける病気です。

 

血栓の詰まり方による分類

 

脳血栓症

脳の比較的太い血管が動脈硬化によって狭くなります。血栓により更に狭くなり、徐々に詰まることもあります。または高血圧が原因で脳の細い血管が変性・狭小化して血管が詰まります。

 

脳塞栓症

脳の血管に、心臓などでできた血栓が流れてきて血管をふさぎます。

 

一過性脳虚血発作

一時的に脳の血管が詰まります。しかしすぐに血流が再開します。脳梗塞の前兆として現れることがあります。意識障害・麻痺・失語・顔面神経麻痺・構語障害などの症状が出現しますが、時間の経過と共に改善して行きます。

 

詰まる血管の太さによる分類

 

症状やその程度は障害を受けた脳の場所と範囲によって異なります。

 

ラクナ梗塞

脳の細い血管が詰まって起こる脳梗塞【小梗塞】
脳の太い血管は次第に細い血管へと枝分かれして行きます。この末梢の毛細血管が狭くなり詰まるのがラクナ梗塞です。血流が届きずらい <分水嶺> の領域に好発します。日本人に最も多いタイプの脳梗塞で、主に高血圧によって起こります。症状の自覚はなく知らない間に梗塞は形成されます。脳ドックなど検診でCT
MRIなどを撮影した際に発見されることがほとんどです。
ラクナは「小さなくぼみ」という意味です

 

アテローム血栓性脳梗塞

脳の太い血管が詰まって起こる脳梗塞【中梗塞】
動脈硬化(アテローム硬化)で狭くなった太い血管に血栓ができ血管が詰まるタイプの脳梗塞です。動脈硬化を発症・進展させる高血圧・高脂血症・糖尿病など生活習慣病が主因です。

 

心原性脳塞栓症

脳の太い血管が詰まって起こる脳梗塞【大梗塞】
心臓にできた血栓が血流に乗って脳まで運ばれ、脳の太い血管を詰まらせるものです。原因として最も多いのは、不整脈の1つである心房細動です。

 

心房細動とは?
不整脈のひとつで心房が十分の収縮が出来ず <震える>だけの細動の状態を指します。この時左心房に血液が淀み血栓を形成します。怖いのは発作性心房細動です。普段は通常の脈拍ですが、本人が自覚しない時に発作的に細動し、知らない間に左心房に血栓ができてしまうからです。元巨人軍監督の長嶋茂雄氏を襲ったのも、この心原性脳塞栓症(発作性心房細動+脳血栓脳梗塞)です。

 

脳出血(Itracranial Hemorrage)

脳の中の細かい血管が破れて出血します。脳の深部の細い血管に高血圧や加齢によって小さなこぶがたくさんでき、これが急に血圧が上昇した時などに破裂して脳のなかに血腫が形成されます。

 

好発部位 内包(被殻・視床)(70-80%)・大脳皮質下・小脳・橋・脳幹部

 

最も重篤なのは脳幹の橋出血で、脳出血の5%程度がこの部分で起きています。脳幹は、生命を維持する上で非常に大切な場所。発作後数分で意識がなくなり両手両足が動かなくなり、数時間で死亡することもあります。

くも膜下出血(Subarachinoid Hemorrage)

脳血管にできた動脈瘤(Aneurysm)・脳動脈奇形(AVM)が破れてくも膜の下に出血します。脳を包む3枚の膜(外から硬膜⇒くも膜⇒軟膜)のうち、くも膜と軟膜の間(くも膜の下)に出血が起こるのがくも膜下出血です。

その他にもやもや病・慢性硬膜下血腫等も脳血管障害に分類されています。
脳卒中のなかで、脳梗塞が約75%・脳出血が15-20%・くも膜下出血が5-10%という結果が出ています。日本で脳卒中で悩む患者さんの3/4が脳梗塞であるという報告もあります。

 

脳動脈瘤とは? 脳動静脈奇形とは?

脳動脈瘤は、脳の動脈のある部分がコブ状に膨らんだ状態
脳動静脈奇形は、脳の血管の一部が毛細血管に分化せず異常な血管で動脈と静脈が直接連結した状態通常の血管より弱く、血圧が加わると破裂してくも膜下出血となります。遺伝的要素が強く、血管病変を有する家系の方によく見られます。

<追悼手記>

元巨人軍コーチ 木村拓也氏がくも膜下出血でグランドで倒れ急逝されました。バットを持ってノックをしようとしていた時でした。突然の頭痛・意識障害でグランドに倒れてしまいました。全国の同年代の人々に衝撃を与えたことは記憶に新しいところです。You Tubeなどでその発作の起きた状況が見て取れます。

 

私の大学時代の友人・野球部の同輩の整形外科医も44歳の若さでこの世を去りました。夏休み帰省中の家族が連絡がとれず不審に思い、知人に頼んで自宅を探索してもらったらすでに息を引き取っていたそうです。

 

木村氏にも3人の子供さんがいました。私の友人にも家族がいました。彼らだけでなく家族を残して若くして急逝してしまう、それがくも膜下出血の怖さです。

 

運命といえばそれまでですが、極めて残酷な結末となります。その同輩が逝去してもう何年も経ちますが、毎年その時期になると、ふと思いだします。我が友の冥福を心より祈りたいと思います。

脳梗塞の症状

脳卒中の症状は様々です。しかし共通の特徴は突然発症することです。症状の始まりを時間的に特定できます。脳梗塞・脳出血は、脳の一部の働きを突然失うため症状がほぼ共通しております。くも膜下出血の症状とは異なります。

 

|脳梗塞と脳出血の代表的症状

片麻痺・顔面神経麻痺

  片方の手足・顔面の左右半分・が突然に動きずらくなる

感 覚 障 害

   片麻痺と同じ部位の感覚が鈍くなる・しびれる

言 語 障 害 

構語障害   呂律が回らない まともに話せない
運動性失語  言葉が出なくなる
感覚性失語  相手の言葉を理解できなくなる

 

運動失調

  麻痺はないのに急に足元がふらつく・立てない、立てない・歩けない

視覚障害

  急に片目の視力がなくなる・視野の一部が欠損・物が二重に見える

意識障害

  ぼんやりする・反応が悪くなる・呼びかけに反応しない・目を開けない

 

脳出血の場合も頭痛を伴うことがありますが、その場合は、先ほど申し上げた片麻痺、言語障害、失調、視覚障害などを伴っています。

 

|くも膜下出血の代表的症状

 

激しい頭痛

今までに経験したことのない激しいようなレベル(金づちで叩かれたような
頭痛は数日や1週間以上続きます。くも膜下出血は再発作を起こしやすく、発作が起こるごとに死亡率が高まります。

嘔 吐 

発作と同時に起こりやすい

意識障害

ぼんやりする・反応が悪くなる・呼びかけに反応しない・目を開けない

 

クモ膜下出血の症状は、今までに経験したことのないような激しい頭痛が突然生じ、意識がなくなりますが、通常、手足の麻痺は典型的ではありません。

 

 

院長のひとりごと  今まで何人もくも膜下出血の患者様を診察してきました。激しい頭痛という初期症状は絶対とう訳ではありません。<何となく頭痛がする> そんな症例でも頭部CTスキャンを撮影したら極わずかにクモ膜下に出血していたケースも経験したことがあります。脳卒中の家族歴もある患者様は要注意です!

 

脳梗塞の前兆 <一過性脳虚血発作>

一過性脳虚血発作(Trangent Ischemic Attack TIA)は、突然脳卒中の症状がおこり、普通5-15分間以内に、長くても24時間以内に治ってしまう発作です。1週間程度継続し回復するケースもあります。症状が短時間で消失しますが放置すると約2割の方は数年以内に脳梗塞になりやすいです。治療によって脳梗塞になるのを予防することが可能ですので、必ず専門医を受診してください。また、症状が現れた時点では一過性脳虚血発作と本物の脳梗塞とは区別できませんので、すぐに救急車を呼んで専門医を受診してください。

 

 

院長の独り言  そう言えば、小渕恵三 元総理も国会の発言中にこのような症状が発現してましたね。その数日後脳卒中で倒れてしまいました。

 

|病気に気づいたらどうする

 

 軽い症状でも脳卒中らしいと感じたら、1分でも1秒でも早く専門医のいる病院へ行くことです。そのためには、家族に脳卒中の危険因子を多くもつ高齢者がいる場合は、万一の場合、近くのどこの病院に運べばよいかを普段から考えておくとよいと思います。脳卒中は恐ろしい病気ですが、施設の整った専門医のいる病院に1分でも早く連れていくことで、死を免れたり後遺症を少なくすることができます。

 

脳卒中の原因

|脳卒中の原因

 

 脳卒中を起こす最大の原因は、<高血圧><加齢>だといわれています。しかしその他の危険因子もあります。脳梗塞・脳出血・くも膜下出血かによって危険因子は多少異なります。

 

脳梗塞・脳出血の原因

 

高血圧  加齢  糖尿病  心臓病  脂質異常症  肥満  喫煙

 

多量飲酒  ストレス  脱水  炎症  血液凝固系異常(血が固まりやすい)

 

遺伝(抗リン脂質抗体症候群  高インスリン血症  高ホモシスティン血症)

 

くも膜下出血の原因

 

動脈瘤  動静脈奇形  高血圧  遺伝

 

脳動脈瘤の好発部位
前交通動脈 (Acom) ・ 中大脳動脈の最初の分枝部 ・ 内頚動脈-後交通動脈 (IC-PC) とされています

脳卒中の検査

|脳卒中の検査と予防

 

危険因子を察知・治療

健康診断で危険因子(メタボリックシンドローム・肥満など)が見つかれば、早めに生活習慣の改善や治療をすることが脳卒中の予防につながります。

脳MRI+MRA(脳ドック)

 

MRI  脳実質の病変を同定
MRA  脳動脈を3Dで描写 動脈の狭い箇所や動脈瘤を発見できる

 

無症候性脳梗塞や未破裂動脈瘤が見つかることもあります。この時ただ心配するだけではなく、早急に専門の医師(神経内科医、脳外科医、脳卒中専門医など)に相談してください。いろいろな予防法があります。

頭部CTスキャン

MRIより簡便に撮影できますので急性期の診断や脳卒中発症後・くも膜下出血術後のフォローアップに撮影します。MRIは撮影に時間がかかります。脳動脈瘤のクリッピングなど体内に金属が存在するケースは撮影できないからです。

脳卒中の予防

|脳卒中の予防

 

脳卒中を防ぐ食生活は、高血圧や動脈硬化を防ぐ食生活の延長線上にあります。
血液をサラサラに、かつ丈夫でしなやかな血管を保つ生活が、脳の健康にもつながるのです。

 

血圧を正常に保つためには、バランスのよい食事を心がけ、飲酒は1日1合以内を適量とし、血圧を上昇させる塩分は控えることです。血圧調整に影響のあるカリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルも積極的にとりましょう。酢酸やクエン酸などは、酸味が減塩をサポートするとともに血管を拡張して血流をスムーズにする働きが期待できます。

 

血圧の高い人では、脳卒中の発作を招くような急激な血圧上昇のもととなることも避けなければなりません。食生活では便秘を防ぐ食事を心がけることです。食物繊維が不足しないように野菜や海藻、豆類などを十分にとりましょう。食物繊維はコレステロールの吸収を抑え、ブドウ糖の吸収を穏やかにする働きもあります

 

脂質のとりすぎは血液中のLDLコレステロール(悪玉)や中性脂肪を増加させ、動脈硬化を促進させる原因となります。しかし、コレステロールを制限しすぎると血管がもろくなり脳出血の原因となります。
そこで心がけたいのが肉を控えて魚を摂ること。青魚に含まれるn-3系不飽和脂肪酸のEPAやDHAには、LDLコレステロールを減らし、HDLコレステロール(善玉)を増やす作用があります(図表9)。オリーブ油や菜種油、アーモンド油などに多く含まれるオレイン酸にも、HDLコレステロールを減らさずにLDLコレステロールのみ減らす作用があります。動脈硬化はコレステロールの酸化で促進されます。酸化防止に働く抗酸化成分の摂取も大切です。

 

肥満は血圧と深い関係があり、糖尿病や動脈硬化とも深い関係があります。食べ過ぎは禁物ですが、ダイエットのために食事の量を控えると栄養のバランスが崩れがちになります。血管を作る組織の材料として欠かせないたんぱく質、身体の潤滑油として重要なビタミン、ミネラルは十分に補給する必要があります。魚介類に含まれるアミノ酸の一種であるタウリンには、血圧やコレステロールを下げる働きがあります。

 

日本の中でも東北地方、特に秋田県は脳卒中死亡率が高いことで知られています。高血圧の大きな原因となる塩分摂取量が多いほか、低コレステロール、酒どころのために飲酒量が多いことなどの要素が重なって脳卒中、特に脳出血の発症が多く死亡率を高くしているといわれてます。
脳卒中には誘因となる危険因子はいくつもあり、大量飲酒、喫煙、運動不足といった生活習慣のほか、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病などそれぞれの疾患が独自に、あるいは複合して脳卒中の危険因子となります。
これらの危険因子となる疾患は遺伝的な要因や体質による場合もありますが、多くの場合は生活習慣が引き金になっています。脳卒中はそれまで元気だった人にある日突然起きますが、長年にわたる生活習慣が積み重なった結果ともいえるのです。

 

 

 

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