骨粗しょう症 Osteoprosis
|骨粗しょう症とは?
骨強度が低下し、骨折しやすくなる骨の病気です。健康な骨には、網目状の構造をした骨梁がぎっしり詰まっています。ところが、骨粗しょう症では骨梁が細くなったり折れたりして、スカスカでもろい骨になります。正常な骨では、骨吸収と骨形成のバランスが保たれ、骨量は維持されていますが、骨粗鬆症では、 骨吸収>骨形成 となり骨量が減少します。
コラーゲン架橋 <善玉架橋>と<悪玉架橋>
骨の体積の50%はコラーゲンです。骨を鉄筋コンクリートの建物だとすると、カルシウムはコンクリートで、コラーゲンはコンクリート内に埋まっている鉄筋となります。鉄筋(コラーゲン)の強さをは、コラーゲン同士をつないでいるコラーゲン架橋です。梁として骨全体の強さ影響しています。このコラーゲン架橋には「善玉架橋」と「悪玉架橋」があり、悪玉架橋が増加すると、コラーゲンからしなやかさが失われ、硬くてももろい、折れやすい状態となってしまいます。悪玉架橋は加齢や生活習慣病とともに増加します。生活習慣病の患者様では、骨質が劣化している可能性が高いため、骨密度検査で正常に近い結果が出ても安心してはいけません
私たちの骨は18歳ごろをピークに、年をとるごとに少しずつ減っていきますから、骨量の減少それ自体は生理的現象ともいえます。
骨粗しょう症の原因と分類
|骨のリモデリング(骨改変・骨の新陳代謝)とは
体の中で常に古い骨は壊され(骨吸収)、新しい骨が作られています(骨形成)。骨吸収が数週間続いたあと、数カ月にわたって骨形成が行われ、溶けた部分に新しい骨が埋められていきます。この過程を骨のリモデリングと呼びます。破骨細胞 と 骨芽細胞 の働きで骨吸収 と 骨形成 のバランスが維持されています。
破骨細胞(Osteoclast) 古い骨を溶かす(骨吸収)
骨芽細胞(Osteoblast) 新しい骨を造る(骨形成)
このバランスが崩れ、 骨吸収>骨形成 となると骨粗しょう症 となります。
骨軟化症では全骨量(類骨と石灰化した骨の合計)は減少しませんが、骨粗鬆症では全骨量が減少するのが特徴です。
|骨粗しょう症の分類
基礎疾患の有無により、原発性骨粗しょう症 と 続発性骨粗しょう症 に分類されます。
| 原発性骨粗鬆症
閉経後骨粗鬆症
閉経後の女性に多い エストロゲン分泌の低下による
老人性骨粗鬆症
65歳以上の高齢者に多い 腎機能の低下でビタミンDの産生低下
院長のひとりごと 以上の2つで骨粗しょう症全体の約90%となります!現在日本では骨粗しょう症の患者様は約1100万人超えます。そのの80%は女性です。更年期以降の女性に多く、60代女性の2人に1人、70代女性の10人に7人が骨粗しょう症の可能性があります。
閉経・更年期・骨粗しょう症 女性ホルモン エストロゲン
閉経後の女性では、女性ホルモンの一種 エストロゲン の産出が急速に低下します。エストロゲンには骨芽細胞の活動を高める作用があります。つまりエストロゲンが低下すると骨が弱くなります。男性に比べ女性はもともと骨量が少なく、骨粗しょう症の症状が表面化しやすいのです。男性は、女性に比べると骨粗しょう症になる人の割合は低いですが、加齢と共に腸管からのカルシウム吸収が低下するため、70歳を過ぎると骨粗しょう症になる人の割合が高くなります。
| 続発性骨粗鬆症
特定の病気や、服用している薬が原因となって骨強度が低下する骨粗しょう症です。
内分泌疾患・代謝性疾患・炎症性疾患・先天性疾患・薬物性・胃切除後・生活習慣病
などがあります。薬剤性ではステロイド長期投与による骨粗鬆症に注意すべきです。
- 内分泌疾患 副甲状腺機能亢進症
- 自己免疫疾患 関節リウマチ・全身エリテマトーデス
- 生活習慣病 糖尿病・動脈硬化・慢性腎臓病・慢性閉塞性肺疾患
- 薬剤性 ステロイド長期服用
|骨粗しょう症の原因
慢性的な高血糖状態が続き、弱い悪玉コラーゲン架橋を増加させ骨質を劣化させ、骨折のリスクが高まります。糖尿病では、骨密度は顕著に低下しませんが大腿骨近位部骨折のリスクが1.4〜2倍に高まるという報告があります
腎臓には血液をろ過する機能に加え、体内のミネラルを調節して骨を丈夫に保ちます。CKDになるとビタミンDの活性化が弱まり血液中のカルシウム量が減ります。、それを補うために骨からカルシウムが溶け出して骨が弱くなります
加齢とともに動脈の血管壁が固くなり血管が詰まりやすくなります。血中にあるホモシステインという物質が上昇し、体内の酸化ストレスが増加すると、動脈硬化が進むと同時に骨質も劣化し、骨がもろくなるといわれています。
気管支喘息・慢性気管支炎・肺気腫など、長期にわたり気道が閉塞状態になる病気です。呼吸困難によって体を動かす機会が減ることや、治療のためにステロイド薬を服用することも、骨に影響を及ぼすと考えられています
薬による骨粗しょう症のうち、代表的なものがステロイド性骨粗しょう症です。ステロイド薬の投与開始後、3ヵ月以内で骨への影響が現れ、長期間使用している方の50%で骨粗しょう症を発症しています。ステロイド薬を長期使用する病気では、関節リウマチや気管支喘息、膠原病をはじめとする自己免疫疾患などが挙げられます。病気そのものが骨に影響を及ぼしています。ステロイド性骨粗しょう症は骨折リスクが高いため、原発性骨粗しょう症の場合よりも、骨密度が高いうちから治療を開始することが推奨されています。
女性の骨密度は18歳くらいでピークに達します。そののち40歳代半ばまではほぼ一定ですが、 50歳前後から急速に低下していきます。骨をつくるのに必要なカルシウムは、腸から吸収されて骨に取り込まれますが、年を取ると腸からのカルシウム吸収が悪くなってしまうのも骨密度低下の原因の1つです。
女性の場合は、閉経期を迎えて女性ホルモンの分泌が低下しますと急激に骨密度が減り、同年代の男性に比べて骨密度が低くなります。骨粗しょう症の患者の80%以上が女性です。
女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、骨吸収をゆるやかにし骨からカルシウムが溶けだすのを抑制する働きがあります。閉経後、女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が急速に減少します。その結果骨吸収のスピードが速まるため、骨形成が追いつけずに骨がもろくなってしまうのです。
ダイエットによる栄養不足は、骨粗しょう症の原因の1つとなります。とくに成長期は丈夫な骨をつくる大事な時期ですので、無理なダイエットは将来の骨密度に悪影響を与えます。成長期にはカルシウムを十分に摂り、他の栄養素もバランスよく摂取するなど、よい食生活の習慣を保つことで、骨密度を高く保つことができます。
ニコチンやたばこ煙中のカドミウムが骨細胞に作用します。喫煙者は非喫煙者に比べてオステオカルシンなどの骨形成マーカーが低く骨が弱くなると考えられています。
骨はカルシウムの貯蔵庫
体内のカルシウムの99%は骨の中にあります。残りの1%は他の組織や血液中に存在し、血液中のカルシウムは、さまざまな臓器の細胞を働かせています。血液中のカルシウムが足りなくなると、骨からカルシウムが溶けだして補います。カルシウムの摂取量が少ないと、次から次へとカルシウムを骨から血液へ補わねばならず、骨の中のカルシウムがどんどん失われてしまうのです。
カルシウム・パラドックス
カルシウム摂取が不足すると骨中カルシウムも減少します。しかし血管・組織にカルシウムが逆に増加します。この逆説的な現象を カルシウム・パラドックス と呼びます。これにより動脈硬化・糖尿病・高血圧などの疾病が起こります。血中カルシウム濃度が低下すると、副甲状腺ホルモンの働きで骨からカルシウムが血液中に溶け出します。このカルシウムが血管へ沈着(動脈石灰化)し動脈硬化を引き起こすと考えられています。このため骨粗しょう症の患者様には動脈石灰化症による冠状動脈疾患・心臓病が多く合併します。予防には適切なカルシウム摂取とそれ以外の骨代謝に必要なビタミンDやビタミンKの摂取が必要です。また牛乳を良く飲む人ほど骨粗鬆症になりやすいと報告されています。ホメオスタシスの働きにより、急激に上がり上限値を越えてしまったカルシウム濃度を下げようと負のフィードバックが働き、今度は下限値を越えてしまい、骨からカルシウムを補うからです。
骨粗しょう症の症状
|骨粗しょう症の症状の現れ方
骨量の低下だけでは症状が出現しません。初期には自覚症状は全くありません。骨折に伴って疼痛や変形が出現します。骨がもろくなると骨折しやすくなります。脆弱性骨折と呼びます。
| 骨折の好発部位
原発性骨粗しょう症の場合
- 大腿骨頸部骨折(股関節・下腿の骨折)
- 撓骨遠位端骨折(手首の骨折)
- 脊椎圧迫骨折(背骨の骨折)
- 上腕骨頸部骨折(腕の付け根の骨折)
- 肋骨骨折(肋骨の骨折)
続発性骨粗しょう症の場合
- ステロイドによる骨粗しょう症 ⇒ 脊椎椎体骨折
- 関節リウマチによる骨粗しょう症で ⇒ 脊椎、四肢に限らずあらゆる部位が骨折
4cm以上身長が縮んだ人は積極的に骨密度検査やレントゲン検査を受けることが推奨されています。
| 脊椎変形に伴う症状
骨粗しょう症では脊椎(背骨)の椎体骨折が起こりやすく背中や腰が曲がってしまいます。その結果2次的に下記の様な症状が発現します。
- 下肢の運動・知覚麻痺や排尿・排便障害 潰れた椎体により脊髄が圧迫
- 疼痛(腰背部痛) 安静時・前屈時・起坐位時・歩行時・寝返り時
- 転倒する頻度が上昇 前傾姿勢によりバランスが不安定
- 腹部膨満による食欲減退
- 胸焼け・嚥下困難 食物が喉につかえる感じ
- ADL(日常活動性)の低下 疼痛・臥床・歩行困難・息切れ・筋力低下
- 身長低下
背骨の骨折は、背中や腰が丸くなる、痛みが出るなど、生活の質を低下させる要因となります。行動が制限されて運動量が減るとますます骨密度が低下し、運動不足により筋力も衰えるなど体の機能低下を招きます。高齢者が大腿骨近位部を骨折すると、治癒るまでに時間がかかり、その間に全身の身体機能が低下し、介護が必要になるおそれがあります。
| 骨折のリスクファクター
性別では女性の骨折リスクが高い。同じ骨密度の場合高齢ほど骨折リスクが高い。
骨密度が低いと骨折リスクが高い。
過去に骨折歴があると将来の骨折リスクは2倍。既に椎体骨折があると将来のリスクは4倍。
喫煙者は非喫煙者に比べて骨密度が低い。同じ骨密度でも現在喫煙している人の骨折リスクは非喫煙者の約1.3〜1.8倍高い。アルコール摂取過剰で1日3単位以上飲酒している人は骨折リスクが1.4〜1.7倍高い。
リウマチなどの治療でステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)を長期使用することにより骨折リスクは約2〜4倍に高まる。
病気の治療でステロイド剤が処方された場合は、担当医から十分な説明を受け、指示にしたがって服用しましょう。ステロイド剤による治療は、骨粗しょう症対策を含め十分な管理のもとで行わなくてはいけません。一方、自己判断による急な中止は危険を伴うこともありますので避けてください。
親が大腿骨骨折をしていると骨折リスクは2.3倍になる。その他の骨折では1.2〜1.5倍高い。
適度な運動(活発な身体活動・日常生活活動)は、骨粗しょう症による骨折リスクを20〜30%、最大50%予防する効果がある。運動不足は骨折のリスクファクターと考えられる。
大腿骨近位部骨折はほとんどが転倒によって起こる。転倒の危険因子には、転倒回数が多い、全身衰弱、マヒ、筋力低下、睡眠薬の服用、視力低下などが報告されている。
骨吸収マーカー高値の場合、骨吸収>骨形成となっており骨折リスクが高い
カルシウム摂取量が少ないと骨量が低下
たばこやアルコールを控えたり、カルシウムを積極的に摂取したり、適度な運動を行うなど生活習慣を改善することで骨密度の低下を防止すれば骨折の予防につながります。
また低体重で体格指数(BMI)が低いと骨密度が低下し、転倒時大腿骨近位部骨折が起こりやすいと言われています。
骨粗しょう症の検査と診断
|骨粗しょう症(骨粗鬆症)の検査と診断
骨粗しょう症の診断には以下の検査が一般的に用いられます。
問診・骨量(骨密度)・XP(レントゲン)・骨代謝マーカー
| 問 診
痛みの部位・疼痛の程度・外傷の既往・リスクファクター(骨折歴・閉経の状況・運動習慣・続発性骨粗鬆症の原因となる疾患の有無・薬剤投与の有無)
| 骨量(骨密度)測定
DXA法
腰椎・大腿骨・全身骨・橈骨・踵骨にエネルギー量の異なる2種類のX線を当て骨密度を測定。
SXA法
橈骨や踵骨にX線を照射して組織の吸収率から骨密度を測定する。 短時間で精度が高い。
MD法
第二中手骨の X線写真を撮り、濃度をアルミのスケールと比較して骨密度を測定する。 検査が短時間で済むので、多数例のスクリーニングに適している。
pQCT法
橈骨のX線のコンピュータ断層撮影法で測定。 三次元骨密度(mg/cm3)を測定可能。
QUS法
水中のかかと部分に超音波を当て踵骨の状態を測定する。 超音波使用。妊婦の測定可能。
骨密度の基準
骨密度の正常値は、若年成人平均値(YAM)(20〜44歳)の平均値を基準
基準の80%以上 :正常
70〜80% :骨量減少(要注意)
70%未満 :骨粗しょう症
骨密度測定部位は腰椎・大腿骨・橈骨・第二中手骨・踵骨いずれでもOK。橈骨ではビスホスホネート(ビスフォスフォネート)の治療効果判定ができないません。
| X線(レントゲン)検査
主に背骨(胸椎や腰椎)のX線写真を撮り、圧迫骨折や椎体変形の有無を確認します。骨粗しょう症と他の病気とを区別するためにも必要な検査です。骨粗しょう化や脆弱性骨折がはっきりと見られれば骨粗しょう症です。骨粗しょう化が疑われるという程度の場合は、骨量減少という診断になります。
脆弱性骨折とは?
外傷歴のない骨粗鬆症に関連した骨折です。患者様本人が自覚していない間に生じる骨折もあります。骨がもろくなったときに起こる脆弱性骨折が認められれば、骨密度の値が骨量減少のレベルであっても、骨粗しょう症と診断されます。
| 骨代謝マーカー
骨代謝マーカーを計測し骨の新陳代謝の速度を判断します。骨代謝マーカーは血液・尿検査で測定できます。骨吸収マーカー高値 または 骨形成マーカー低値 の場合、骨吸収・骨密度の低下の傾向と判断でき、骨密度の値によらず骨折の危険性が高くなります。骨粗しょう症と他の病気の区別にも使われます。尿中の骨吸収マーカーの検査は、骨粗鬆症の診断や治療の効果判定に有効です。
骨吸収マーカー DPD・NTX・TRACP-5b
骨形成マーカー BAP・P1NP
院長のひとりごと 25歳の時の身長を覚えていますか?25歳のときの身長と比べどのくらい縮んでいるかは、骨粗しょう症の指標になります。
骨粗しょう症の治療
|骨粗しょう症の治療の方法
骨粗しょう症の治療目的は骨の新陳代謝のバランスを整えることです。骨のリモデリングには、副甲状腺ホルモン・活性型ビタミンD・カルシトニン・エストロゲン(女性ホルモン)/アンドロゲン(男性ホルモン)・グルココルチコイド(副腎皮質から分泌されるステロイド系ホルモン)などの物質が深くかかわっています。
骨粗しょう症の治療には代表的に3つの方法があります。
生活指導 ・ 薬物療法 ・ 手術療法
| 日常生活指導
- 食事 乳製品を中心としたバランスのよい食事・十分なカルシウムを摂るを摂取
- 運動 歩行能力維持のため屋外歩行
- 日光浴・日光曝露 ビタミンDの活性化
| 薬物療法
骨粗しょう症の治療薬は、作用によって次の3種類に分けられます。
- 腸管からのカルシウムの吸収を促進し、体内のカルシウム量を増やす薬
=活性型ビタミンD3製剤
- 骨形成を促進する薬=活性型ビタミンD3製剤・ビタミンK2製剤・テリパラチド(副甲状腺ホルモン)
- 骨吸収を抑制する薬=女性ホルモン製剤(エストロゲン)・ビスフォスフォネート製剤・SERM(塩酸ラロキシフェン)・カルシトニン製剤
活性型ビタミンD3製剤
食事で摂取したカルシウムの腸管からの吸収を増す働きがあります。骨形成と骨吸収のバランスも調整し骨折抑制効果もあります。
- エルデカルシトール(エディロール)
- アルファカルシドール(ワンアルファ・アルファロール) 最も一般的
- カルシトリオール(ロカルトロール)
肝臓や腎臓における活性化の必要がなく、臓器障害がある時は有用
- フォレカルシトール(ホーネル・フルスタンなど) 強力作用
- マキサカルシトール(オキサロールなど)
血液透析における二次性副甲状腺機能亢進症で用いられる注射薬
副作用 胃部不快感、吐き気など
カルシウム製剤と併用は高カルシウム血症リスクがあるので注意が必要です。
ビタミンK2製剤
骨密度を顕著に増加しませんが、骨密度の減少を抑えて骨形成を促進する作用があり骨折の予防効果があります (グラケー・ケイツー)
副作用 胃部不快感、吐き気などの胃腸の調子をおかしくすることがあります。
女性ホルモン製剤(エストロゲン)
閉経期の女性が対象となります。女性ホルモン減少に伴う骨粗しょう症に有効です。骨密度を増加させ、閉経期の更年期症状(ほてり・痒みど)を軽減します。
エストリール
副作用 性器出血・乳がん発症の可能性
乳がんとエストロゲン
乳がんには女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)に感受性が強いものもあります。骨粗しょう症や産婦人科疾患の治療のためエストロゲンを投与する際、乳がんの存在をあらかじめチェックする必要があります。
エストロゲン様作用の薬剤 イプリフラボン
骨密度の減少を抑制・カルシトニンの分泌上昇・骨形成促進 副作用は胃部不快感、吐き気など
ビスフォスフォネート製剤
破骨細胞の働きを抑制し骨吸収を抑えます。骨吸収を抑制することにより骨形成を促進し、骨密度を増やす作用があります。
アレンドロン酸(フォサマック・ボナロン)・リセドロン酸(ベネット・アクトネル)
エチドロネート(第一世代) ダイドロネル
骨Paget病でも用いられる。骨軟化症のリスクたあり。2010年の時点でほとんど用いられていない。
アレンドロネート(第二世代) アレンドロン酸(フォサマック・ボナロン)
錠剤が食道に長く停滞すると食道障害の可能性あり。180mlの水とともに内服し、服用後30分は横にならない、水以外の飲食や他の薬剤の経口摂取をしないといった条件がある。週1回の投与が一般的である。
リセドロネート(第三世代)リセドロン酸(ベネット・アクトネル)
アレンドロネートと用法もほぼ同じです。アクトネル・ベネットは経口剤のため骨粗鬆症にも用いられる。インカドロネート(ビスフォナール)・ゾレドロネート(ゾメタ)は注射薬のため、悪性腫瘍による高カルシウム血症や大腿骨頸部骨折後の骨折予防で用いられる場合が多い。ゾレドロネート(ゾメタ)ならば、年に1回の投与で効果があるとされている。
ビスフォスフォネート製剤月1回の投薬へ
ビスフォスフォネート製剤ではこれまで主流だった週1回服用に加え、4週1回製剤(錠剤・点滴投与)が開発されました。また錠剤が飲みにくい高齢患者様へ経口ゼリー製剤も登場しています。
副作用 食道閉塞・胃部不快感・吐き気など
SERM(Selective Estrogen Receptor Modulator サーム)
エストロゲン受容体を刺激しエストロゲンの効果を上昇させます。骨に対しては、エストロゲンと似た作用があり、骨密度を増加させますが、骨外では高脂血症、乳癌のリスクも低下させ、骨以外の臓器(乳房や子宮など)には影響を与えません。1日1回食事や時間に関係なく服用でき、閉経後高コレステロール血症改善、乳癌抑制効果といったメリットがあります。
ラロキシフェン(エビスタ)・バゼドキシフェン(ビビアント)
副作用 静脈血栓閉塞症・肝機能障害・発疹・腹部膨満感・嘔気など
カルシトニン製剤(注射薬)
骨吸収を抑制する注射薬ですが、強い鎮痛作用も認められています。骨粗しょう症に伴う背中や腰の痛みに対して用いられます。
カルシトニン(エルシトニン)
副作用 注射後すぐに顔のほてり・めまい・吐き気が起こることがあります
カルシウム製剤
カルシウムを補充します。
カルチコール・アスパラCA
テリパラチド 遺伝子組換えヒトPTH(1-34)(副甲状腺ホルモン)
ヒト副甲状腺ホルモンのN末端1番から34番までのみを遺伝子組換えにより製剤化したもの。皮下注射であるためコンプライアンスでは短所があるが、骨量増加作用は上記の薬剤と比較して最も高い。
フォルテオ
デノスマブ/抗RANKL抗体
破骨細胞の分化・成熟・活性化シグナルである Receptor Activator of Nuclear Factor κβ ligand(RANKL) に結合することにより、骨吸収を抑制
骨形成促進薬/テリパラチド
新しい骨をつくる骨芽細胞を活性化させ、骨強度を高める「骨形成促進薬/テリパラチド(副甲状腺ホルモン)」は、骨密度が非常に低いなど重症の患者さんに適した薬です。現在、1日1回患者さんが自分で注射をする皮下注射剤と、週1回医療機関で皮下注射してもらうタイプとがあります。
脊椎圧迫骨折などによる腰背部痛がある場合
これらの薬以外にも、イプリフラボンやタンパク同化ホルモン製剤などが処方される場合もあります。腸管からのカルシウム吸収の低下がある場合にはビタミンDも併用されます。
| 手術療法
骨折を生じた場合、大腿骨頸部骨折では、原則として手術療法が選択されます。また、胸椎・腰椎圧迫骨折による下肢麻痺などの脊髄症状が生じた場合や骨折が癒合せず、偽関節になり、激しい疼痛が残存し、日常生活に支障のある場合には手術療法も考慮されます。
治療方針の決定
性別、月経の有無によって異なります。女性は、破骨細胞の活動を抑制するビスフォスフォネート系薬剤(第2世代薬アレンドロネートなど)、活性型ビタミンD、ビタミンK、カルシウム製剤の投与や、SERM・エストロゲン、遺伝子組換えヒトPTH(1-34)の投与が行われる。エストロゲンの投与は乳癌の発生率を高める副作用がある。SERM(ラロキシフェン、バゼドキシフェン)は閉経後女性にのみ有用である。男性はビスフォスフォネート、ビタミンD、ビタミンK、カルシウム製剤、遺伝子組換えヒトPTH(1-34)のみである。
骨粗しょう症の予防
|骨粗しょう症の予防
まだ骨粗しょう症になっていない方は、食事療法・運動療法を心掛けることによって骨粗しょう症の予防をすることができます。将来の骨粗しょう症予防にはバランスのとれた食事と積極的な運動が必要です。中高年の女性では閉経後の骨量減少を食い止めることが重要です。
適正な体重を維持しましょう。痩せすぎでは骨折リスクが高まるります。低体重)を防止・改善しましょう。適正体重は以下の公式で求められます。
BMI (Body Mass Index) = 体重(Kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
BMI 30以上 病的な肥満 治療が必要です
25-30 肥満傾向 生活習慣の改善・ダイエット・エクセサイズを心がけましょう
18.5-25 正常範囲 理想的な状態です。現状維持に努めましょう
18.5未満 やせ傾向
標準体重 = 22 × 身長(m) × 身長(m)
極端なダイエット ちょっと待った!
10代は骨の形成時期。20〜40代は一生で骨量が一番多くなり維持する時期です。極端なダイエットにより必要なカルシウムが十分摂取できず、生理が止まりホルモンのバランスを崩すようなことがあれば、若くても骨粗しょう症の危険性が高まります。
運動不足は骨密度を低下させる原因になります。骨密度低下を防止し増加させる運動は、ウォーキング・ジョギング・エアロビクスなどです。適度に骨に負荷をかけることが骨密度を保持・増加のために有効です。また日光欲で皮膚から体内へのビタミンD産生が促進されます。
日本人女性では骨密度は18歳でピークとなります。骨密度増加はそれ以前なので10代前半から骨密度を意識した生活を送ることが重要となります。学生時代に日常的に強度の高い荷重運動を行うと強い骨が造られます。思春期に高い骨密度を得ると、中高年になって骨密度が低下しても骨折するリスクを減らせます。これらの骨粗しょう症対策は、将来的に生活習慣病を予防するためにも有効です。また加齢に伴い骨密度は減少します。女性は閉経後、急激に骨密度が減りますが、高齢になってからも十分な骨密度を保つためには、カルシウムを十分に摂取するとともに、カルシウムの吸収を促す栄養素を食事に取り入れましょう。また、適度な運動が骨代謝を盛んにし、骨を強くするのに有効です。
骨折リスクを高めるため、禁煙をし、また過度の飲酒を控えることも、骨粗しょう症予防には効果的です。
大腿骨近位部骨折のうち85%は転倒が直接的な原因です。大腿骨近位部骨折により要介護状態になるのを防ぐには、骨粗しょう症の治療と共に転倒防止対策が重要になってきます。
思春期を過ぎた頃になると偏食やダイエットで痩せようとして栄養が偏りがちですが、食習慣の乱れは健康や発育の面でも悪影響をおよぼします。積極的なカルシウム摂取を意識しバランスの良い食事を心がけましょう。
- カルシウム 700〜800mg/日 骨の材料
- ビタミンD 400〜800IU(10〜20μg)/日 骨代謝を盛んにする
- ビタミンK 250〜300μg/日 骨の形成を促す
成人女性におけるカルシウム摂取の推奨量は600〜650 mg/日ですが、12〜14歳では800mg/日と多めに設定されています更年期・老年期の骨密度減少を抑制するために日本人高齢者では、最低800mg/日以上の摂取が必要です。カルシウムの吸収をよくするためにビタミンDの多い食品を組み合わせることも大切です。牛乳・チーズ・ヨーグルト・豆腐から一日二品は食べるましょう。
| 骨密度を低下させない食事療法
カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど、骨密度を増加させる栄養素を積極的に摂り、骨を丈夫にすることが予防となります。カルシウムとビタミンDの同時摂取で腸管でのカルシウム吸収が向上します。とくに骨吸収を抑制するビスフォスフォネートやSERM製剤ではカルシウムやビタミンDと骨形成の相乗効果があります。またタンパク質の摂取不足は骨密度を低下させます。タンパク質も骨の材料となり骨を丈夫にしますので意識して摂取しましょう。つまり栄養やカロリーのバランスがよい食事を規則的に摂るのがの基本となります。
- カルシウムを多く含む食品
牛乳・乳製品・小魚・干しエビ・小松菜・チンゲン菜・大豆製品など
- ビタミンDを多く含む食品
サケ・ウナギ・サンマ・メカジキ・イサキ・カレイ・シイタケ・キクラゲなど
- ビタミンKを多く含む食品
納豆・ホウレン草・小松菜・ニラ・ブロッコリー・サニーレタス・キャベツなど
| 骨密度を低下させない運動療法 骨粗しょう症予防・転倒防止・骨折予防
片足立ち(フラミンゴ体操)
片足で立ちます。何かににつかまってもOKです。体重を片足に乗せ負荷を与え骨を強くします。
背筋を伸ばす運動(1)
壁から20〜30cm離れて立ち壁に沿って両手をできるだけ上の方に伸ばします。
背筋を伸ばす運動(2)
頭のうしろで手を組み両肘をできるだけうしろのほうに引き、胸を開きます。
転倒を防ぐ運動(1)
ふくらはぎとアキレス腱のストレッチ
(1)前に出した方の足の膝を曲げて体重をかけていき、後ろの方の足のふくらはぎを伸ばします。
(2)続いて後ろの方の足の膝を曲げ、アキレス腱を伸ばします。
(片足30〜40秒ずつ左右行います)
転倒を防ぐ運動(2)
足の付け根の筋肉ストレッチ
短距離走のスタート姿勢からさらに片足を後ろに伸ばし、膝を床につけるような気持ちでゆっくり腰を低くします。(片足30〜40秒ずつ左右行います)
妊娠すると骨が減る?
骨量を維持するには女性ホルモンが重要です。妊娠すると胎児にカルシウムが移行しますが、女性ホルモンは通常の10〜20倍の高い値になり、体重も10キロぐらい増えるため、妊娠の時期は骨量が増えるといってよいでしょう。お産直後は閉経レベルまで女性ホルモンが下がるとともに、長期にわたる授乳でカルシウムを喪失するので骨量が減り、トータルでは妊娠・分娩・授乳時期の骨量は不変といえます。
院長のひとりごと 現在寝たきりの原因の第1位 脳卒中・第2位 老衰・第3位 骨粗しょう症による骨折であることから、骨粗しょう症は高齢社会が抱える問題の1つとなっています。
田島クリニック
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