横浜・馬車道の総合診療クリニック

麻疹(Measles)とは?

麻疹(痲疹・ましん・はしか・measles・rubeola)とは麻疹ウイルスによる急性熱性発疹性のウイルス感染症です。感染力が極めて強く、死亡することもある重症の感染症です。感染性は非常に高く、感受性のある人(免疫抗体を持たない人)が暴露を受けると90%以上が感染します。予防接種を受けていない1歳前後の赤ちゃんが多くかかりますが、予防接種を受けいないと30歳くらいまでには必ずといってよいほど感染します。

 

空気感染・飛沫ひまつ感染・接触感染、いずれの方法によっても感染し、好発年齢は1歳代が最も多く、次いで6〜11カ月、2歳の順です。近年、成人麻疹の増加が問題となっており、10〜20代での発症が多く報告され社会的にも関心を集めています。

 

5類感染症疾患とは?

流行すると社会全体に甚大な影響をもたらす感染症は、1〜5類まで分類されています。麻疹(measles)はこの感染症法に基づく5類感染症全数把握疾患です。ある一時期の感染者数を算出することにより流行状況を把握します。

麻疹の原因

麻疹(ましん・はしか)は麻疹ウイルスに感染することにより発症します。麻しんウイルスの感染経路は、空気感染・飛沫感染・接触感染 で、その感染力は非常に強いと言われています。一般的にはヒトからヒトへの感染です。免疫(抗体)を持っていない人が感染するとほぼ100%発症し、一度感染して発症すると一生免疫が持続します。

 

|麻疹ウイルスの感染経路と病態

 

麻疹ウイルスは、飛沫感染(空気感染)により拡散しますので、感染者・発病者の咳の飛沫や鼻汁などに含まれています。ヒト(免疫がない人)の鼻咽頭から侵入、気道粘膜上皮細胞で増殖し気道や鼻腔や眼の粘膜上皮に感染します。その所属リンパ節に達して、第一次ウイルス血症を起こします。その後、扁桃腺・アデノイド・リンパ節・脾臓など全身のリンパ組織で増殖し宿主細胞(感染した細胞)を融合させ、多核巨細胞が形成され、それが血中に出現する。その後第二次ウイルス血症を発症させます。

 

麻疹ウイルスは、かぜの様な症状が出現するカタル期(prodromal period:catarrhal stage)と、発疹が現れから少しの期間、気道分泌物(nasopahryngeal secretions)・血液・尿から検出されます。

麻疹ウイルスの細胞変死効果(CPE)
麻疹ウイルスは培養細胞に感染すると巨細胞を形成させ、やがてそれを死滅させる作用を有しています

 

|麻疹と免疫

 

自然感染して発病した場合、終生免疫が成立し2度とかかりません。また麻疹にかかった後、麻疹ウイルスに再感染した場合、発病しません(臨床症状は現れない)が、血中の麻疹抗体価は再上昇します。

麻疹に感染後は細胞性免疫能が低下してツベルクリン反応も陰性化(陰転)します。細胞性免疫能は2週間以内に正常に回復するとされていますが、回復に6週間要することもあります

 

麻疹に2回目かかることもありますか?

2回目かかる可能性は0ではありません。麻疹・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の様に潜伏期間が長いウイルス性疾患は、一度かかるとウイルスに対する抗体(血中)により、ウイルスが体内で増殖出来ないので、<2度とかからない(終生免疫を獲得する)>認識されて来ました。しかし次の理由で1度かかった後、ウイルスに対する免疫が低下して、2度罹患すること(終生免疫にならない)こともあります。

 

ウイルスの自然感染(野生株の流行)が減少

1度かかった後に、ウイルスに暴露される(感染する)機会が減少し免疫的な記憶が低下してしまう(ブースター効果がかからない)。

 

ウイルスが微妙に変異する

1度かかった際にできた抗体が完全に機能しない

 

1度目の感染で抗体の形成が不十分である

長期に渡り交代価も減少し不十分となり、2回目の感染を防止できない

 

|乳児と麻疹ウイルスへの免疫

 

乳児は、胎児期に胎盤を経て、母親から移行抗体が体内に与えられます。生後4〜6カ月の期間、麻疹ウイルスに感染しても発病しないか、発病しても軽症となる傾向にあります。(乳児麻疹の特徴)しかし次の様な場合、乳児でも麻疹にかかる可能性があります。

 

  • 母親が麻疹の自然感染歴がある
  • 母親に麻疹ワクチン接種歴がある

 

乳児期の麻疹(乳児麻疹)の症状は非典型的なことが多いです。発熱などの症状が顕著でなくても軽症でないこともあります。発熱などの症状はウイルスに対する免疫応答で起こりますが、リンパ球のIFN-γ産生能は新生児期や乳児期では低値なのも理由のひとつです。

 

 

|麻疹ウイルスの詳細

 

原因ウイルスである麻疹ウイルスは分子生物学的に次のような特徴があります。

  • Paramyxovirus(パラミキソウイルス)科  Morbillivirus 属
  • 直径100〜250nmの球状・エンベロープを有する
  • 非分節一本鎖RNAウイルス(15,894の遺伝子を有する)
  • A〜H 8群(crade) に分類(世界保健機関 (WHO)の分類)
  • 遺伝子型(genotype) 22種類報告されている(世界保健機関 (WHO)の分類)
  • 日本で主に流行しているのはD3・D5 タイプ  ワクチン株はAタイプ

 

|麻疹ウイルスの構造

 

麻疹ウイルス表面には外殻(エンベロープ)タンパクが内部にはribonucleocapsid(RNP)・Mタンパクが存在します。

 

外殻(エンベロープ・envelop)蛋白  Fタンパク と Hタンパク

外殻(エンベロープ・envelop)蛋白は、宿主(感染者)の麻疹ウイルスレセプターに結合し感染を拡大して行きます。

 

  • H(Hemagglutinin/HA)蛋白・(赤)血球凝集素蛋白   4量体を形成
  • F(fusion)蛋白・膜融合蛋白    3量体を形成

 

麻疹ウイルス感染後はリンパ節・脾臓・胸腺など全身のリンパ組織を中心にウイルスは増殖します。エンベロープ蛋白のうち、F(fusion)蛋白H(hemagglutinin)蛋白がその病原性に大きく関与しています。H蛋白(HA)は4量体を形成し、F蛋白は3量体を形成し、ウイルスと宿主細胞の膜融合を引き起こし宿主細胞へのウイルスの侵入を可能にします。

 

ウイルス粒子内     ribonucleocapsid(RNP)・Mタンパク
  • ribonucleocapsid(RNP) = nucleocapsid(N)+phospho(P)+large(L)蛋白+ウイルス遺伝子
  • membrane蛋白(M蛋白)  ウイルス粒子を安定化させる

 

宿主細胞の麻疹ウイルスのレセプター

 

1993年に補体調節蛋白であるCD46 (membrane cofactor protein : MCP)であると発表されました。CD46 はヒトの全ての有核細胞に発現しており、サルでは類似したホモローグが赤血球にも認められるため、麻疹ウイルスのサル赤血球凝集反応が起こると説明されていましたがリンパ組織を中心に感染することについての機序は不明でした。
 2000年Tatsuoらにより麻疹ウイルスのレセプターがリンパ組織に特異的に発現する膜蛋白SLAM(signaling lymphocyte activation molecule : CDw150)であることがNature に発表されました。SLAM は未熟胸腺細胞・活性化されたリンパ球・単球・成熟樹状細胞に発現し、リンパ球の活性化とIFN‐γ産生制御を誘導すると報告されています。

 

 

豆ちしき
麻疹ウイルスは熱・紫外線・酸(pH<5)・アルカリ(pH>10)・エーテル・クロロホルムによって速やかに不活化されます。熱では20℃でも急速に不活化され、空気中や物体表面では生存時間は短く2時間以内に不活化されます。

 

その他のParamyxovirus(パラミキソウイルス)

  • ムンプスウイルス(流行性耳下腺炎の原因)
  • RSウイルス(細気管支炎の原因)
  • パラインフルエンザウイルス(気管支炎の原因)

 

 

豆ちしき
RSウイルスによる重症細気管支炎の際には気道分泌物中のインターフェロンγ(IFN-γ)やサブスタンスP(SP)が低下していることが知られています


 

 麻疹ウイルスは、Paramyxovirus科Morbillivirus属の一本鎖RNAウイルス。

 

 麻疹ウイルスは、F蛋白(Fusion protein)、H蛋白(Hemagglutinin protein)、L蛋白(Large protein)、M蛋白(Membrane-matrix protein)、NP蛋白(Nucleocapsid protein)、P蛋白(Phosphoprotein)の、6種類の蛋白から構成されている。

 

 M蛋白は、麻疹ウイルス粒子のマトリックスを形成する。M蛋白は、ヌクレオカプシドとエンベロープ(脂質二重膜)との中間に存在し、ウイルスの出芽(budding)の際に、両成分の会合を助ける。

 

 ・麻疹ウイルスは、ヒト(発病者)の咳の飛沫や鼻汁などに含まれていて、ヒト(免疫がない人)の気道や鼻腔や眼の粘膜上皮に飛沫感染(空気感染)する。
 麻疹ウイルスは、空気中や物体表面では、2時間以内に不活化される。
 麻疹ウイルスは、患者の唾液、鼻水(鼻汁)、目やに(眼脂)、尿などに排泄されるが、主な感染経路は空中に撒布されるウイルスと言われる。
 患者の衣服の消毒は、感染予防に必要でない。麻疹ウイルスは、感染力は強いが、温度や紫外線により死滅し易いので、ウイルスが衣服に付着しても、速やかに失活すると言われる。衣服を介して麻疹ウイルスが感染することはないと言われる。

麻疹の症状

|麻疹の症状の現れ方

 

麻疹ウイルスは、ヒトからヒトへの空気感染(飛沫核感染)・飛沫感染・接触感染などの経路で感染します。麻疹(はしか・measles・Masern)は、ウイルスが感染した後、10〜12日間の潜伏期間の後、発熱・上気道などのカタル症状等で発病します。発熱期は 咳・鼻水・結膜炎症状が強く、38℃以上の発熱が数日続きます。その後一度解熱傾向を示し、すぐに耳後部付近から特有な発疹が現れると共に39℃以上の発熱が数日続きます。

 

|麻疹の病期

 

麻疹の臨床経過は、 潜伏期・カタル期・発疹期・回復期 に分けられます。ウイルスの感染力が、最強なのは発疹が現れる前のカタル期と発疹が現れてから36時間以内です。

 

麻疹ウイルスは、発症(発熱)する3〜4日前から、発疹出現2〜3日後までの期間、患者からウイルスが排泄されます。ウイルス感染後、鼻や喉の粘膜や結膜に付着し、侵入し、潜伏期間中にリンパ節で増殖します。麻疹感染時の一次ウイルス血症では網内系組織(reticuloendothelial system)に広がり、二次ウイルス血症では皮膚表面(body surfaces)に広がり、麻疹のカタル期(prodromal illness)が始まります。

 

麻疹患者は、ウイルスに感染後9〜10日目(カタル期の始め:早い人では、感染後7日目)には、感染力があります。病院ではウイルスに感染7日目から、発疹が出現して5日後までの期間、感染が疑わしい人を隔離します

 

潜伏期間

麻疹ウイルスへの曝露から、発症まで7 - 14日間程度かかります。麻疹ウイルスの潜伏期間は、まれに、6〜10日間と短いこともあります。

 

カタル期(前駆期) 発病後1〜3日

感染後に潜伏期10〜12日を経てカタル期となり発症します。つまり発熱が起こるのは、麻疹ウイルスに感染して約10〜12日後となります。

カタル期の症状

  • 38℃前後の発熱(稽留熱)が2〜4日間持続
  • 上気道炎症状・風邪症候群様症状(発熱・咳嗽・鼻漏・くしゃみ・倦怠感・不機嫌など)
  • カタル症状  漿液性で透明な分泌物が増加
  • 結膜炎症状(結膜充血・眼脂・羞明)が2〜4日間持続
  • 一度解熱傾向となる(2相性の発熱の第1期)
  • 消化器症状(下痢・腹痛・嘔吐)・乳幼児期に多い
  • コプリック斑(Koplik斑)

 

麻疹カタル期の口腔内所見

 

咽頭粘膜・口腔粘膜・口内粘膜の著明な発赤・充血(特に口蓋弓部(口蓋垂の両脇))

 

軟口蓋・硬口蓋に粘膜疹(enanthem)・溢血斑(red mottling)・濾胞性変化が出現

 

麻疹ウイルスの感染期間と感染力
麻疹ウイルスは、発熱する3日程前から、対外に放出されます。カタル期は3 - 4日間続き、他者への感染力はカタル期が最強です。発熱前(潜伏期間初期)と、発疹出現36時間以後は、感染力はないと言われています。

麻疹の眼症状
麻疹のカタル期の眼症状として、多量の眼脂・流涙・眼痛が出現します。眼脂は発熱後7日頃が、一番重症化します。眼症状が悪化すると角膜潰瘍(角膜が白濁する)や角膜穿孔が起こり失明することもあります。

 

コプリック斑

 

発疹出現の1〜2 日前頃に頬部の口腔粘膜・臼歯(奥歯)対面付近に、やや隆起し紅暈(こううん)に囲まれた約1mm 径のやや隆起した白色小斑点・粘膜疹(コプリック斑)が出現します。麻疹に特徴的であるため、これを確認して麻疹と臨床診断されることがほとんどです。

 

コプリック斑の特徴

  • カタル症状が始まって2〜3日後(発熱後第3病日付近・発疹が現れる1〜2日前)に出現
  • 発疹出現3日後以内に急速に消失
  • 頬部の口腔粘膜・臼歯対面付近・数個〜数十個出現
  • やや隆起した白色小斑点・粘膜疹・粟粒大の白斑(赤地に塩の結晶を撒いた様な外観)
  • 周辺は大小不規則な形をして集合して存在
  • 著明な紅暈(こううん)を伴う
  • 口腔粘膜は発赤し口蓋部には粘膜疹(溢血斑を伴うこともある)

コプリック斑の年齢による違い

  • 年長児  白色粟粒状の斑点が集合
  • 乳 児  白色鵞口瘡様(カンジダの病変の様)

コプリック斑と鵞口瘡の違い

  • コプリック斑 発赤した粘膜に囲まれた白色の小斑点・白色のミルク・母乳滓様の病変
  • カンジダによる鵞口瘡  舌に厚い白苔が存在

 

 

豆知識
コプリック斑様の白色の小斑点は、麻疹と同じパラミクソウイルス科のRSウイルス感染症でも稀に見られることがあります。コプリック斑はミルク滓と異なり、粘膜から剥がれないことが鑑別点となります。


発疹期(最盛期) 発病後3〜7日

発疹が現れるのは、麻疹ウイルスに感染して潜伏期を経て約14日後です。発疹期では、カタル期の後にいったん1 ℃程度下熱しますが半日〜1日ほどで再び39〜40℃の高熱(稽留熱もしくは少し弛張)が出現し平均3〜4日間続きます(二峰性発熱)。その後発疹が出現します。カタル症状はカタル期より発疹期の方が重症化します。

 

発疹期のカタル症状

  • 発熱・咳嗽・鼻汁・下痢などのカタル症状が更に重症化
  • 咳嗽や眼脂は、発熱後7日頃(発疹期)が最も重篤
  • 口腔粘膜が荒れて痛みを伴う
  • 高熱に伴う全身倦怠感
  • 経口摂取は不良
  • 特に乳幼児では脱水になりやすい
  • 特有の麻疹様顔貌を呈する

 

麻疹の発疹の特徴

  • 発熱後の第4病日ころ一過性の体温下降の後に高熱と共に出現
  • 耳介後部・頚部・前額部から、下向性に<顔面→体幹→四肢>へと約2日かけて拡大
  • 直径が2〜5mmの大小不同の紅斑で、辺縁は不整、やや隆起した丘疹状
  • はじめ鮮紅色扁平、まもなく皮膚面より隆起し、融合して不整形斑状(小斑点丘疹)
  • 指圧によって退色し、一部には健常皮膚部分を残して融合傾向を示す
  • 最初は鮮紅色を呈するが、後に毛細血管外に出血し暗紅色になり、色素沈着が残る
  • 発疹は出現順序に従って1〜2週間かけて退色する
  • 全身性の発疹となった数日後に色素沈着を残して回復に向かう
  • 発疹の程度は、麻疹の重症度(発熱の程度や全身状態)と相関する

 

突発性発疹の発疹も、色素沈着を残すことがある。典型的には、突発性発疹は、発疹が現れた後は熱がなく、咳も酷くないが、麻疹は、発疹が現れた後も熱が続き、咳が酷くなる。

 

麻疹の発疹は、発疹部の皮膚組織(皮膚小血管内皮細胞、皮脂腺、表皮など)に存在する麻疹ウイルスと、血中の麻疹ウイルス抗体との反応(III型のアレルギーのアルサス反応)によって、生じる。
免疫抑制状態にある患者は、麻疹に罹患しても、発疹が現れないこともある。

 

 

 

 

 

発疹期は発疹出現後72時間程度持続します。これ以上長い発熱が続く場合には、細菌による二次感染の疑いがあります

 

回復期  発病後8日〜10日

回復期に入ると発疹出現後3〜4日間続いた発熱も解熱し微熱となって解熱します。全身状態、活力も改善して来ます。カタル症状も合併症のないかぎり7〜10 日後には次第に軽快します。下熱後も咳は強く残るが徐々に改善してくる。発疹は退色しますが色素沈着がしばらく残り5 - 6日程で皮がむけるように(わずかの糠様落屑)取れるてきます。

 

麻疹患者の気道からのウイルス分離は、前駆期(カタル期)の発熱時から第5 〜6 発疹日まで(発疹の色素沈着)は持続するとされています。この間に感染力があるがカタル期が最強です。回復期2日目ごろまでは感染力が残っているため、学校保健安全法施行規則により下熱後3日を経過するまでを出席停止の基準としています(学校保健安全法施行規則19条2号)

 

|麻疹の合併症

 

麻疹感染時の合併症には次のようなものがあります。中でも麻疹の2大死因は肺炎と脳炎であり注意が必要です。

 

麻疹ウイルスによるもの (中耳炎・ウイルス性肺炎(間質性肺炎)・細気管支炎・仮性クループ)
細菌の二次感染によるもの (中耳炎・細菌性肺炎・気管支炎・結核の悪化)

 

  • 肺 炎
  • 中耳炎
  • クループ症候群
  • 心筋炎
  • 中枢神経系合併症
  • 亜急性硬化性全脳炎
  • 肝機能障害
  • 口内炎細菌性腸炎
  • カンジダ症
  • 播種性血管内凝固症候群 (DIC)

 

肺 炎

麻疹自体でもカタル症状として咳嗽(せき)が続きますが、発熱が持続したり再発熱する際には肺炎の合併を疑います。肺炎は、麻疹ウイルス性の肺炎と細菌二次感染(肺炎球菌・インフルエンザ菌・化膿レンサ球菌・黄色ブドウ球菌)による肺炎とがあります。気管支肺炎・大葉性肺炎(肺炎球菌性肺炎)になるケースもあります。乳児では毛細気管支炎になる可能性もあります。

 

ウイルス性肺炎

麻疹の初期に認められ、胸部X 線では両肺野の過膨張・瀰漫(びまん)性の浸潤影が認められます。また片側性の大葉性肺炎になる場合もあります。

 

細菌性肺炎

発疹期以後解熱しない場合二次感染として細菌性肺炎を考えます。抗菌薬により治療する。原因菌は一般的な呼吸器感染症起炎菌である肺炎球菌・インフルエンザ菌・化膿レンサ球菌・黄色ブドウ球菌などです。

 

巨細胞性肺炎

成人の麻疹感染の一部または特に細胞性免疫不全状態時に見られる肺炎です。肺での麻疹ウイルスの持続感染で生じるます。予後不良で死亡例も多く見られます。発疹は出現しないことが多いのが特徴です。巨細胞性肺炎の場合麻疹抗体は産生されず、長期間にわ たってウイルスが排泄されます。発症は急性または亜急性で胸部レントゲン像では、肺門部から末梢へ広がる線状陰影が認められます。

 

細気管支炎 

小児に起こりやすい合併症です。

 

中耳炎

麻疹患者の約5 〜15%にみられる最も多い合併症の一つで細菌の二次感染により生じます。乳幼児では症状を訴えないため、中耳からの膿性耳漏で発見されることがあり注意が必要です。乳様突起炎を合併することもあります。

 

クループ症候群

喉頭炎および喉頭気管支炎によりクループの状態に陥るケースは合併症として多く認められます。麻疹ウイルスによる炎症と細菌の二次感染により発症します。重症例の吸気性呼吸困難が強い場合には、気管内挿管による呼吸管理を要するケースもあります。

 

心筋炎

心筋炎・心外膜炎を時々合併することがあります。麻疹の経過中半数以上に<一過性の非特異的な心電図異常>が認めされることがあります。その後予後が重篤な結果になることは稀です。

 

中枢神経系合併症(急性脳炎と亜急性硬化性全脳炎(SSPE))

 

麻疹に合併する脳炎には、急性期に発症する麻疹脳炎(急性脳炎)と、麻疹罹患後数年して発症する亜急性硬化性全脳炎SSPE(subacute sclerosing panencephalitis)とがあります。

 

1.麻疹脳炎(急性脳炎)

 

麻疹脳炎(急性脳炎)は、麻疹ウイルスが脳神経系を直接侵襲して起こります。発疹出現後2〜7日目(発熱6〜12日目頃)に発症することが多いとされています。解熱後、再び発熱して発病することもあります。

 

急性脳炎の主症状

高熱・頭痛・嘔吐・意識障害(嗜眠状態など)・痙攣など

 

急性脳炎の発症頻度

麻疹1,000例に1例程度の頻度で発症

 

急性脳炎の予後

  • 約60%の症例は完全回復
  • 約20〜40%の症例は中枢神経系の後遺症残存(精神発達遅滞・痙攣・行動異常・神経聾・片麻痺・対麻痺)
  • 約15%の症例は死亡

 

急性脳炎の検査所見(髄液所見)

  • 単核球優位の中等度細胞増多
  • 蛋白レベルの中等度上昇
  • 糖レベルは正常かやや増加

 

麻疹重症度と麻疹脳炎発症の相関性
麻疹の重症度と麻疹脳炎の発症(neurologic involvement)とには相関関係はありません。初期の麻疹脳炎の病状(severity)と麻疹脳炎の予後も相関関係がありません。麻疹で急性脳炎を合併し傾眠傾向・嗜眠状態となっても後遺症が残らないこともあります。

 

2.亜急性硬化性全脳炎(SSPE : subacute sclerosing panencephalitis)

 

亜急性硬化性全脳炎(SSPE : subacute sclerosing panencephalitis )は、麻疹罹患後に数年(5〜9年)して発症する中枢神経疾患です。変異した麻疹ウイルスが潜伏感染して起こると言われています。

 

亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の症状

  • 特に学童期に発症
  • 行動や性格の変化
  • 知能低下・知能障害・運動障害
  • ミオクローヌスなどの錐 体・錐体外路症状
  • 徐々に症状出現
  • 次第に特有なミオクローヌス発作が周期的に出現
  • 昏睡状態に陥る
  • 6〜12カ月後に死亡
  • 進行性の予後不良疾患

亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の発症頻度

  • 麻疹罹患者10万例に1人・麻疹ワクチン接 種者100万人に1人(ワクチンの予防効果)
  • 50%の症例は2歳前 ・ 75%の症例は4歳前麻疹に初感染
  • 男児>女児(男児は女児の2倍の発症頻度)
  • 稀に予防接種でも発症

亜急性硬化性全脳炎(SSPE)が発症しやすいケース

  • 1歳未満の時期に麻疹に罹患した場合
  • 免疫機能が低下している状態(ステロイドホルモン剤や抗癌剤などの長期使用)

 

SSPEの患者の脳の封入体から分離された麻疹ウイルスは、遊離ウイルスを産生しにくい、不完全型の麻疹ウイルスと言われる。SSPEの患者の脳内の神経細胞には、好酸性封入体(Cowdry A型ないしfull型)が認められるが、ウイルスの出芽(budding)は認められない。

 

 麻疹ウイルスは、F蛋白(Fusion protein)、H蛋白(Hemagglutinin protein)、L蛋白(Large protein)、M蛋白(Membrane-matrix protein)、NP蛋白(Nucleocapsid protein)、P蛋白(Phosphoprotein)の、6種類の蛋白から構成されている。

 

 M蛋白は、麻疹ウイルス粒子のマトリックスを形成する。M蛋白は、ヌクレオカプシドとエンベロープ(脂質二重膜)との中間に存在し、ウイルスの出芽(budding)の際に、両成分の会合を助ける。
 SSPEの患者から分離される麻疹ウイルスは、M蛋白が欠損していて、感染した細胞から出芽(発芽)することが出来ない。
 最初は、完全型の麻疹ウイルスが、感染して、麻疹を発症させた後、脳に潜伏感染している期間に、不完全型の麻疹ウイルスに、変異して、SSPEを発症させる。

 

 SSPE患者の血清中では、麻疹のM蛋白に対する抗体が、欠損しているか、低下している。
 SSPE患者は、血清中の麻疹抗体価(HI抗体、CF抗体、NT抗体)が、上昇する。SSPE患者は、初診時、血清中の麻疹抗体価が、X1,000以上のことが多い(近年は、X128〜X256程度の症例が多いと言う)。
 SSPE患者は、髄液中の麻疹抗体価も陽性になる(X8以上である)。
 SSPE患者は、髄液中のIgGも増加する。髄液中の総蛋白量の20%以上を、IgGが占める(普通、髄液中の総蛋白量の50%が、IgG)。

 

 

 

 

 

亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の発症頻度と歴史的背景

麻疹の予防接種が普及しない時代、自然に麻疹に罹患した場合、1/10万人でした。1970〜1978年に麻疹に罹患した症例の調査結果(1993年)では、SSPEの発症頻度は、21/100万人(48,000人に1人)と報告されています。麻疹の生ワクチンを接種した場合も、SSPEの発症が見られるが、その頻度は、100万人に1人と言われています。

 

SSPEのUSAでの発症頻度は、1960年は20歳前の小児では、0.61/100万人で、1980年には、0.06/100万人に減少しました

 

亜急性硬化性全脳炎(SSPE)とワクチン

ワクチン接種後に発生したSSPE患者の脳内から検出される麻疹ウイルスは、当時流行していた野生株ウイルスです。ワクチン接種後に発生するSSPEは、ワクチン株ウイルスが原因でなく、野生株ウイルスが原因と考えられています。従ってワクチン接種によりSSPEの発生頻度が減少することはあっても、ワクチン接種(ワクチン株の麻疹ウイルス)がSSPEの原因とはなりません。

 

肝機能障害

成人の麻疹では肝機能障害が合併することがあります。肝機能を示す値トランスアミナーゼ(ALT・AST・LDH) が上昇することがあります。

 

口内炎

麻疹感染による抵抗力の低下などにより口内炎が発症することがあります。

 

細菌性腸炎

赤痢菌やサルモネラ菌などの細菌の二次感染によって腸炎が発症することもあります。主な症状は激しい下痢と腹痛で、下痢は粘血便となることもあります。

 

カンジダ症

麻疹感染による抵抗力の低下などにより真菌感染が起こり、カンジダ症となることもあります。

 

播種性血管内凝固症候群 (DIC)

麻疹と合併するのは非常にまれだが重篤な疾患です。本来出血箇所のみで生じるべき血液凝固反応が、全身の血管内で無秩序に起こります。このため出血傾向(紫斑・止血不良など)になり臓器虚血に陥ります。脳内出血・消化管出血・多臓器不全に至ると生命の危険があります。

 

妊娠と麻疹感染
ワクチン未接種の女性が妊娠中に麻疹にかかると子宮収縮による流産を起こすことがあります。妊娠初期での感染では31%が流産し、妊娠中期以降でも9%が流産または死産、24%は早産との報告があります。

 

|麻疹の異常経過

 

麻疹に感染した際、大半のケースは典型的な通常の臨床経過をたどります。しかし稀に異常な経過をたどるケースもあります。

 

内 攻

麻疹の内攻は、気管支肺炎に、急激に心不全による循環不全(ショック)が加わって起こると言われています。昔の麻疹では、普段から気管支炎に罹患している子供に合併することがありました。

 

麻疹の内攻の症状

  • 麻疹の経過中、発疹が急に消退したり、褐色に変化
  • 全身状態の悪化
  • 鼻翼呼吸・呼吸困難・チアノーゼ

 

重症出血性麻疹(Severe Hemorragic Measles, Black Measles)

重症出血性麻疹は急激に発症します。

 

重症出血性麻疹の症状

  • 高熱・痙攣・意識障害(譫妄・昏迷・昏睡)
  • 二次的に呼吸困難・皮膚や粘膜の癒合した出血斑
  • 口腔・腸管からの出血

 

重症出血性麻疹の病態
重症出血性麻疹は、通常の麻疹に播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併して起こると言われています。口腔・腸管からの出血は止血困難で重篤な症状です。かつては<むらさきはしか(black measles)>とも呼ばれました。

 

 

豆ちしき
通常の麻疹でも、発疹が出血斑になることがありますが意識障害にはなりにくいです。


 

修飾麻疹(Modified Measles)

麻疹ウイルスに対する抗体をある程度有している人が感染した場合、発症した際に一般的な麻疹の症状が修飾され軽度な症状を示す状態を修飾麻疹と言います。

 

修飾麻疹の症状

  • 発熱が著明でない
  • カタル症状やコプリック斑(Koplik斑)などの典型的症状が明確でなし
  • 発疹が少ない
  • 発疹の融合傾向が少ない
  • 発疹消失後に色素沈着を残さないことがある
  • 肺炎や中耳炎などの合併症が少ない

 

修飾麻疹の起こりやすいケース   通常よりも臨床症状が軽度

  • 予防接種を受けて少量だが抗体が残っている
  • 麻疹に対する抗体を含んでいるガンマグロブリン製剤の投与を受けた人

    (特に3カ月以内・潜伏期間中)

  • 母親からの移行抗体が残っている乳児(9カ月未満の乳児)

 

修飾麻疹の発症時期
潜伏期間が延長し、麻疹ウイルスに感染した後14〜20日間後に発症
(通常の麻疹は、潜伏期間は、10〜12日間)

 

修飾麻疹の危険性   麻疹ウイルスの感染源
修飾麻疹の患者は症状は軽いので麻疹として診断され難いです。しかし麻疹ウイルスを分泌・排泄し麻疹ウイルスの感染源となります。次のような方に感染させる可能性があります。

 

  • 麻疹にかかったことのない人
  • 予防接種(ワクチン)を受けたことがない人
  • 免疫が低下している人

 

異型麻疹(Atypical Measles)  不活化ワクチン接種時に発症

麻疹の不活化ワクチン(K)接種2-4年後、自然感染で麻疹を発症すると高熱・異常な発疹・肺炎併発など重症化したことが過去にありました。このため近年は、日本で麻疹の不活化ワクチンの接種は行われていません。

 

異型麻疹の発疹

  • 発熱してから第2〜3病日で発症
  • 耳介や手足から始まり上向性に、四肢→体幹へと拡大 時に顔面にも広がる
  • 蕁麻疹様・斑丘疹状・出血性紫斑状で  時に水疱形成

 

 

豆ちしき
典型的な麻疹の発疹は、発熱してから第4病日頃、一過性の体温下降の後、高熱と共に出現し、耳介後部や頚部から、下向性に、顔面→体幹→四肢へと広がります。つまり異形麻疹の発疹は、典型的な麻疹の発疹と逆方向への進展形式をとります。


 

水痘、麻疹など潜伏期間が長いウイルス性疾患は、ウイルス感染前に、他の感染症に罹患すると、発症した時の症状が重くなったり、遷延化し易い。
 水痘、麻疹などは、潜伏期間中に、他の感染症により発熱すると、発症した時の症状は、軽くなる。
 水痘、麻疹などは、発症した後、他の感染症(マイコプラズマ肺炎など)に罹患すると、免疫力(細胞性免疫)が低下していて、その感染症の症状が重くなったり、遷延化し易い。

麻疹の検査と診断

従来日本ではカタル期や発疹期に現れる特有の臨床症状のみで診断することが多く行われていましたが、今後は実験室診断が必要であると考えられています。現在具体的には麻疹ウイルスに感染したかどうかを診断するには次のような方法があります。

  • ウイルス分離
  • 麻疹特異的抗体価の測定
  • 急性期と回復期のペア血清での麻疹抗体の有意な上昇
  • 血液検査所見

 

 1.ウイルス分離

 

通常、<急性期の血液・咽頭ぬぐい液・尿> から麻疹ウイルスを分離します。近年の流行ウイ ルス株を調べたり、ウイルスのH抗原の変異などを検索する分子疫学的な調査のために、ウイルス分離は必須かつ重要です。

 

カタル期から発疹出現後3 日以内のウイルス分離率が高いです。B95a細胞を用いた場合、咽頭拭い液および血液から早ければ24 時間以内にウイルスは分離されます。

 

 2.麻疹の抗体価の測定

 

麻疹ウイルスに対しての特異的抗体化価(IgGI・gMなど)の測定方法は次のようなものがあります。

  • 赤血球凝集抑制試験(hemagglutination inhibition :HI 法)
  • 中和試験(NT法)
  • 補体結合試験(CF法)
  • ゼラチン粒子凝集法(particle agglutination :PA 法)
  • 酵素免疫測定法(EIA法)
  • 遺伝子診断  RT-PCR法(Polymerase Chain Reaction)

 

赤血球凝集抑制試験(HI法:hemagglutination inhibition test)

赤血球凝集抑制試験(HI法 : hemagglutination inhibition test)は、インフルエンザウイルス・麻疹・風疹など赤血球凝集能を有するウイルスの抗体価の測定に広く用いられています。麻疹に自然感染したり、生ワクチンを接種した場合、HI抗体の方が、NT抗体やCF抗体より、速く上昇します。

HI法の特徴

  • 感度や特異性が高い(NT抗体やCF抗体より速く上昇)
  • 測定方法が比較的簡便
  • 短時間に検査が出来る(結果判明までの時間が短い)
  • 検査の保険点数が安価

HI法のディメリット

  • ヘルペス群ウイルスは、赤血球凝集能を有さないのでHI抗体価を検査出来ない

   (水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)・単純ヘルペス(HSV)など)

  • ムンプスウイルスに対するHI抗体価は、パラインフルエンザウイルスに対するHI抗体価を計測する可能性があり厳密性を欠くことがある

 

麻疹HI抗体価の経時的変化
麻疹にかかったり麻疹ワクチンを接種した人、つまり麻疹に免疫がある人は麻疹HI抗体価が陽性を示します(X8以上 : X32〜X128)

 

麻疹に自然感染した場合

  • 発病初期(麻疹で発疹が現れた時期) 低値(X8〜X64)
  • 感染後4〜6週後(発病1カ月後)・回復期  上昇(X256〜X1,024)
  • その後麻疹ウイルスに再感染(再暴露)しなければ、抗体価は次第に低下
  • 1〜5年後  X64〜X128に低下
  • 10〜15年後 X8〜X32に低下

麻疹の生ワクチンの接種を受けた場合

  • 接種2週間後  麻疹HI抗体価  陰性(X8未満)
  • 接種3週間後過ぎ頃から陽転
  • 接種4〜6週間後  最高値(X8〜X512:平均X64程度)
  • 自然感染の場合と同様に、麻疹HI抗体価は次第に低下
  • ワクチン接種10年後 陰性(8倍未満)に低下傾向(NT法・EIA-IgG法で陽性化)

赤血球凝集抑制試験(HI法)は、ワクチン接種後の抗体陽転率を調べる検査として用いられます。一般的に接種6〜8週間後に陽性になります。

 

中和試験(NT法)

NT法は感度や特異性が高く感染防御効果を反映します。ワクチン接種数年後に、麻疹ウイルスを予防する免疫がどの程度存在するか(抗体価の測定)検査するにはNT法が推奨されます。

 

NT法のメリット

  • 感度・特異性が高い
  • 信頼性が高い
  • 安 価

NT法のディメリット

  • 結果報告まで時間を要する(約1週間)

NT法はエンテロウイルス属ウイルスの型同定に利用されます(コクサッキーウイルス・エコーウイルスなど)

 

補体結合試験(CF法)

CF法は、群特異性がありインフルエンザウイルスのA型・B型の同定、アデノウイルスや、エンテロウイルスなどの群の同定等に用いられます。比較的短時間で検査結果が出ます。

 

CF抗体はムンプスウイルスの抗体価の測定にも利用されます。上昇が遅いといわれています。

 

ゼラチン粒子凝集法(particle agglutination method :PA 法)

PA法(ゼラチン粒子凝集法) ( Particle agglutination method ) とは日本で開発された抗体スクリーニング検査法です。感度が高く、大量の検体処理ができるので広く普及しています。あらかじめ特異抗原を結合させたゼラチン粒子に、抗体が存在すればゼラチンが凝集して陽性となります。麻疹はもちろん主にHIV感染の判定に使われています。

 

PA法のメリット  偽陽性が少ない!
偽陽性とは本当はHIVに感染していないのに陽性判定となることです。その他の検査と比較しPA法では0.3%しか偽陽性は発生しません。つまり検査精度が高いのです。むろん偽陽性は確認検査をすれば陰性だと分かります。

 

 

豆ちしき
実はPA法というHIV検査の方法は日本で生まれました。開発したのは富士レビオという会社です。

 

酵素免疫測定法(EIA法:ELISA法)

EIA法は感度が非常に高く髄液中などに存在する微量な抗体も測定可能な検査です。免疫グロブリンクラス別(IgM・IgGなど)に抗体量を定量することができます。

 

麻疹EIA-IgM抗体(IgM-EIA抗体)  最近の感染の確認

EIA-IgM抗体 陽性  感染初期(今回感染の原因がこのウイルスの可能性が高い)

 

麻疹EIA-IgG抗体(IgG-EIA抗体)  過去の感染の確認・抗体量の確認

EIA-IgG抗体 陽性  過去に麻疹既往歴あり ・ 過去に受けた麻疹の予防接種の効果が残っている

 

EIA-IgG法で測定した抗体(麻疹EIA-IgG抗体)は4.0以上が陽性と判定されます(陽性基準4.0)感染予防効果があるのは8.0以上の場合と言われています。入学時に麻疹抗体値の提出を要求する学校もあります。

 

麻疹に免疫があるかどうか検査するのには、麻疹HI抗体価か、麻疹EIA-IgG抗体価を測定しますがEIA抗体の検査は保険点数(検査費用)がHI抗体検査の約3倍程度で高価です。

 

 

豆ちしき
風疹EIA-IgM抗体(風疹IgM-EIA抗体)は、風疹感染180日後でも検査キットによっては67%の症例で陽性を示すといわれています。

 

遺伝子診断  RT-PCR法(Polymerase Chain Reaction)

RT-PCR法(Polymerase Chain Reaction)で麻疹ウイルスの遺伝子(RNA)を検出し麻疹の診断が可能です。

 

RT-PCR法(Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction)とは?

ウイルスの遺伝子(RNA)を検出し、それを逆転写酵素(Reverse Transcriptase)によりc-DNAを作製します。c-DNA を Polymerase Chain Reactionにより大量に増幅し、それを検出することにより確定診断します。

 

 3.急性期と回復期のペア血清での麻疹抗体の有意な上昇

 

麻疹の診断には麻疹ウイルスに対しての抗体価を測定します。その値で急性期・回復期を判断します。麻疹に特異的なIgM・IgG抗体を証明することで診断されます。

 

ペア血清(paired serum)とは?

同一患者から採取された1組の急性期血清および回復期血清のことです。感染初期の血清を急性期血清とし、病気が回復した後の血清を回復期血清とし、その抗体価の上昇を指標として血清学的診断を行います。感染症の診断、ワクチンの効果の判定に使用されます。

今回の発熱や発疹が麻疹かどうか検査する場合

  • 麻疹HI抗体価 ・ 麻疹EIA-IgM抗体価を測定(発疹が現れた頃から陽性化)

 

過去の麻疹の既往・過去に受けた麻疹の予防接種の効果が残っているか検査する場合

  • 麻疹HI抗体価 ・ 麻疹EIA-IgG抗体価を測定(麻疹に免疫があるかどうか検査)

 

かつての日本ではカタル期や発疹期に現れる特有の臨床症状のみで診断することが多く行われていましたが <2012年の麻疹排除計画> 開始以降は、実験室内診断を重要視し、現在では<IgM抗体検査><遺伝子検査> が推奨されています。IgM抗体検査では伝染性紅斑の罹患に伴う血清中の麻疹ウイルスIgM抗体の陽転化が報告されていることから可能な限り遺伝子検査を行うようになりました。

 

 4.血液検査所見

 

麻疹にかかった時の血液検査は次のような特徴があります。

麻疹にかかった時の血液検査の特徴

  • 典型的には白血球数が減少傾向 (WBC 4400/μL以下)
  • 比較的リンパ球増加
  • 好酸球減少(又は消失)傾向
  • 白血球の分類・分画  好中球の左方変移(Stabが30%程度)・リンパ球数減少(6%)
  • LDH上昇(リンパ球の死滅のため)
  • CRP 上昇傾向

 

豆ちしき
麻疹にかかった時に免疫抑制状態になるので、白血球の分画で比較的リンパ球は増加しても、麻疹初期にはその絶対数は減少しています


麻疹と風疹の血液検査の違い(鑑別診断)
麻疹にかかった場合好酸球が減少・消失します。風疹では好酸球は消失しません。

 

麻疹と風疹の共通点

 

  • 白血球減少
  • 好中球の左方変移(核左方移動)
  • 比較的リンパ球増多
  • 異型リンパ球の出現(多い場合は10%以上)

 

以上2〜3週間で回復します。

麻疹の治療

発症してしまった場合はウイルスに特異的な治療方法はなく、症状に応じた対症療法だけとなります。肺炎や中耳炎を合併することも多く、入院率は約40%といわれています。麻疹にかからない、かかっても軽く済ませるのにワクチンによる予防が最も重要です。

 

対症療法の内容

  • 解熱剤(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)
  • 鎮咳去痰薬
  • 支持療法(輸液や酸素投与など)
  • 細菌性の2次感染(中耳炎・肺炎など)  抗菌薬(抗生剤)の投与

免疫賦活薬イノシンプラノベクス  ハイリスク患者限定
免疫賦活薬イノシンプラノベクスは抗ウイルス作用のある薬剤です。麻疹患者に接触後72時間以内の免疫グロブリン製剤の投与が、麻疹発症を予防するか、あるいは症状を軽減させることが認められています。しかしながら血液製剤であるため、適応は原則としてハイリスク患者に限られます。
(ワクチン未接種の乳幼児や免疫不全患者など)

 

 

豆ちしき
日本の民間信仰には次のようなものがあります。

 

富山県高岡市
<はしか>がはやると九紋龍の手形の紙をもらい<九紋龍宅>と書いて門口に貼って病除けにしました

 

神奈川県横浜市・大和市・藤沢市
点在する鯖神社(左馬神社、佐婆神社とも言う)を一日で巡る<七さば巡り>により麻疹や百日咳の病除けになると言われています。

 

愛知県・三重県
アワビの貝殻を入口などに吊つるして、はしか除けをしたといわれています。

 

長野県開田地方
麻疹にかかるとに患者の枕の傍にはしか棚という神の棚を作り、供物を捧げます。12日経過したら、御神酒を下げ、湯と混ぜ体にふりかけます。またワラで輪を作って、吊るすと<はしかの神>が通り抜けて出て行くと言うわれています。

 

長野県佐久地方
麻疹にかかると岩村田の子育地蔵を参詣します。この地蔵は江戸期の飢饉で幼児40人を間引きし、それを供養したもので、地蔵や亡き子供達の霊が助けてくれると言われています。


 

 

 10.麻疹とビタミンA
 ビタミンAは、気管支などの上皮細胞の再生を促進させる(粘膜を丈夫にする)。
 麻疹に罹患すると、血清中のビタミンA濃度や、レチノール結合蛋白濃度が、著明に低下する。
 麻疹罹患時に、ビタミンAが欠乏すると、重症化、遷延化する。

 

 麻疹では、食事は消化の良い流動食か半流動食にし、味噌汁やORSなどで、水分や塩分を補給する。
ビタミンAの投与が症状の悪化を防ぎうるとの報告があったが、発展途上国のような低栄養(ビタミンA欠乏)状態の患児のみに有効であるとの指摘もある

 

 

 

麻疹の予防

麻疹の予防策として唯一の方法は、幼児期での麻疹ワクチンの予防接種が有効です。麻しんに対し、そのワクチンを接種することによって、95%以上の人が麻しんウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。

 

|麻疹ワクチンの適応

 

過去に麻疹にかかったことのある人は麻疹ウイルスに対し免疫(抗体)を持っているので予防接種(ワクチン)を受ける必要はありません。次のような方々がワクチン接種の優先的な対象となります。

 

  • 定期予防接種の対象者(18歳までの1,2,3,4期)
  • 麻疹にかかったこともなくワクチンを1回も受けたことのない人

 

麻しんが流行し、ワクチンの需要が増大している時期においては、定期の予防接種対象者のうち、特に1期の生後12ヶ月から24ヶ月までの小児の患者様が優先されます。

 

 麻疹抗体測定方法

 

麻疹ゼラチン粒子凝集法(PA法)により血中の麻疹抗体価が測定可能です。この検査で麻疹に対する免疫の有無を調査することが可能です。PA法(ゼラチン粒子凝集法) ( Particle agglutination method ) とは日本で開発された抗体スクリーニング検査法です。感度が高く、大量の検体処理ができるので広く普及しています。あらかじめ特異抗原を結合させたゼラチン粒子に、抗体が存在すればゼラチンが凝集して陽性となります。麻疹はもちろん主にHIV感染の判定に使われています。

 

ワクチン接種後の抗体価の低下を防ぐため、全世界113ヶ国(2004年現在)では年長幼児〜学童期に2回目のワクチン接種を行い、抗体価の再上昇(ブースター効果)を図っています。

 

 

豆ちしき
アメリカでは1970年代後期より麻疹ワクチンの徹底した導入により2000年に麻しんが排除され、2002年以降の患者数は100人未満となりました。その多くは輸入・外来症例となりメディカルスクール(医学部)の学生の実地教育にも麻疹の症例が足りないほどに患者が減少したといわれています。

 

 

 麻疹抗体価とワクチンの適応

 

過去にワクチンを接種し麻疹ウイルスに対しての抗体が体内に存在しても、麻疹にかかる可能性があります。次のような患者様は再度ワクチンの接種が推奨されます。

 

  • NT抗体価(中和抗体価)が4〜8倍未満(EIA-IgG抗体価が6未満)
  • 麻疹抗体価(麻疹EIA-IgG抗体)が8.0以下
  • 麻疹抗体価(麻疹EIA-IgG抗体)が16.0以下の医療従事者

   (日本環境感染学会・院内感染対策としてのワクチンガイドライン)

予防接種を受けたり、ガンマグロブリンを受けた人で麻疹抗体価(麻疹EIA-IgG抗体)が4.0以上で <陽性> であっても麻疹に罹患することがあります。

 

 

豆ちしき
風疹はHI抗体価が16倍未満(EIA-IgG抗体価が5〜8)未満の人には、ワクチン接種が推奨されています。

 

麻疹の生ワクチンを接種すると、接種者の98.0%は、HI抗体が陽転する。接種後の麻疹HI抗体価は、平均でX64倍(X26倍)程度に、上昇する。生ワクチンを接種後、麻疹に対する十分な免疫を獲得するまで、約1カ月を要する(注7)。
 ボランティアを対象に採血した結果では、麻疹ウイルスNT抗体価は64倍までの人が殆ど(16倍の人が多い)で、麻疹ウイルスHI抗体価は128倍までの人が殆ど(8倍の人が多い)で、麻疹ウイルスCF抗体価は、4倍未満の人が74%を占めていた(CF抗体価は感染後、短期間に低下・消失する)。

 

 

 

|麻疹ワクチンの副反応

 

麻疹ワクチンの副反応は、代表的には次のような症状があります。

 

  • 発 熱      接種した人の約13%が接種して2週間以内に発熱
  • 鼻汁 ・ 咳嗽   接種15日後以内に発現することも
  • じんま疹      接種者の約3%
  • 発熱に伴う熱性痙攣(けいれん)  約0.3%(200〜300人に1人程度の頻度)
  • 脳炎・脳症  100万〜150万人に1人以下(極めてまれ)
  • 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)  100万〜200万人に1人(極めてまれ)

 

自然感染で麻疹に感染した患者様が急性脳炎(麻疹脳炎)を発症する頻度は1,000〜5,000例に1例と言われています。麻疹ワクチンの副反応の脳炎の発症率ははるかに低いといえます。

 

 

 麻疹の生ワクチン接種の副反応は、アナフィラキシーは接種24時間以内、脳炎・脳症・痙攣は21日頃見られる。

 副反応として、脳炎・脳症を発症する頻度は、1/100〜150万人以下と言われる。

 副反応として、SSPE(亜急性硬化性全脳炎)を発症する頻度は、1/100万人と言われる。
 
 
5.ワクチン株麻疹ウイルスによる発疹
 麻疹ワクチン接種後に、ワクチン株の麻疹ウイルスにより、発疹など、麻疹の症状が現れることがある。

 

 ワクチン株の麻疹ウイルスによる麻疹は、典型的には、麻疹ワクチン接種後11日目(接種した日が1日目)に、発熱(37.6℃)が現れ、麻疹ワクチン接種後14日後に、発疹が、主に四肢に、出現する(発疹は、躯幹にも、少し出現する)。発疹は、2〜3日後、色素沈着もなく、消失する。

 

 

 ワクチン接種後の発熱・発疹の特徴

 

麻疹の生ワクチン接種の副反応としての発熱・発疹はワクチン株の麻疹ウイルス(に対する免疫応答)が原因で起こります。その特徴は次のようなものです。

 

発 熱

  • 接種して9日後が多い
  • 発熱までの期間は、麻疹に自然感染した場合(10〜12日後)より短期間
  • 接種後7〜12日(5〜14日後)に37.5℃以上接種者の約20%・38.5℃以上数%
  • 発熱は通常1〜2日間程度で解熱 ・ 長い場合7日間程度持続することがあり

発 疹

  • 接種者の10〜20%に麻疹様の発疹が現れる可能性
  • 接種後平均9.1日後(接種して15日以内)に発現
  • 発疹は3日程度で消失
  • 熱発しない接種者にも発疹が現れることあり

 

麻疹ワクチンはニワトリの胚細胞を用いて製造されています。卵そのものを使っていないため卵アレルギーによるアレルギー反応の心配はほとんどないとされています。しかし、重度のアレルギー(アナフィラキシー反応既往)のある方は、その他の成分によるアレルギー反応が生ずる可能性もあるので、接種時にかかりつけ医に相談してください。

 

 

麻疹の生ワクチンは、製造には、ニワトリ胚細胞(ニワトリ胚初代培養細胞)を使用している。しかし、麻疹の生ワクチンを接種して、卵アレルギーによるアナフィラキシーショックなどの副反応が現れることはないので、原則として、ワクチン接種に当り、皮内反応を行う必要はないとされる。卵アレルギー児への皮内テストは、卵摂取でアナフィラキシーを来した例のみに行えば良い。なお、麻疹の生ワクチンは、通常、0.5mlを皮下注射するが、皮内反応を行う為に、麻疹の生ワクチンを、少量(0.1ml)皮内注射しただけでも、免疫を誘導する(EIA-IgG抗体価、HI抗体価が、陽性になる)。

 

 注7:麻疹は、自然感染した場合、発疹が現れた頃(感染14日後頃)には、麻疹抗体(麻疹HI抗体)は、検査で陽性になる。
 しかし、麻疹の生ワクチンを接種して、副反応として、発熱したり、発疹が現れた頃(ワクチン接種10〜12日後)では、麻疹に対する抗体(麻疹HI抗体)は、陽性にならないことが多い(X8以下)。例えば、自経例で、麻疹の生ワクチンを接種して17日後ぐらいでは、麻疹HI抗体価は、陽性にならなかった(X8未満)。
 なお、自経例で、麻疹の生ワクチンを接種して、2日後に、水痘を発症したが、軽症に経過し、治癒した。

 

 

 

|麻疹ワクチンの種類

 

麻疹の生ワクチンは、もともと発熱や発疹の出現率が多く弱毒化させるための改良が加えられて来ました。

 

1.KL法 (不活化ワクチン ⇒ 生ワクチン)

生ワクチン(L live vaccine)の副反応(発熱)を軽減させるために、あらかじめ不活化ワクチン(K killed vaccine)を注射してから、生ワクチン(L)を注射するKL法が考案されました。

 

日本でも1966(昭和41)年から、KL法による麻疹予防接種が任意接種で行われました。しかし、KL法は、1967年に異型麻疹の報告があり中止となりました。

 

不活化ワクチン(K)を接種すると異型麻疹を発症するのは、不活化ワクチン(K ホルマリンで不活化)では麻疹のF蛋白に対する抗体を産生できません。このためウイルスが細胞間へ感染することを予防できません。

 

2.FL (further attenuated vaccine 高度弱毒生ワクチン)

高度弱毒生ワクチン(further attenuated vaccine FL)の開発が試みられました。

 

  • 微研-CAMワクチン(阪大微研)
  • Schwarz(シュワルツ)株ワクチン(武田薬品工業)
  • AIK-C株ワクチン(北里研究所)
  • TD97株ワクチン(千葉県血清研)(1990-2002)

 

2013年7月時点で販売されている麻しん生ワクチンは、シュワルツFF-8株(武田薬品工業株式会社)・AIK-C株(北里第一三共ワクチン株式会社)・CAM株(田辺株:阪大微研)の3種類です。千葉県血清研のTD97株は2002年9月に閉鎖され現在販売されていません。

 

3.MRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)

現在最も接種されているタイプのワクチンです。麻しん感染防止対策としては、MRワクチンは単独ワクチンと同様の効果が期待されます。麻しんワクチンの替わりにMRワクチンを接種することにより健康への影響が大きくなることは通常ありません。

 

麻疹ワクチンと妊娠
MRワクチンは風疹のワクチンも含まれています。妊娠している方は接種を避けましょう。妊娠していない方も接種後2ヶ月程度の避妊が必要です。おなかの赤ちゃんへの影響を出来るだけ避けるためです。麻疹単独ワクチンの接種も妊娠している方は接種を避けるなど同様の注意が必要です。

 

|日本での麻疹ワクチン接種の歴史 (MRワクチン/MMRワクチンを含む)

 

1966年 KLワクチン(K(不活化)とL(生)ワクチンの併用)による予防接種開始(任意接種)

 

1969年 KLワクチンに代えてFLワクチン(高度弱毒生ワクチン)による予防接種開始(任意接種)

 

1978年 FLワクチンが定期接種となる。(1回接種法)対象は生後12ヶ月から72ヶ月

 

1988年 MMRワクチン(FLワクチンを含む)の接種開始(1回接種法)対象は生後12ヶ月から72ヶ月

 

1993年 MMRワクチンの接種終了

 

2001年 小児科医会が中心となり <1歳の誕生日に麻疹ワクチンを> のキャンペーンを開始

 

2006年 MRワクチン(FLワクチンを含む)の接種開始
             1回接種法   対象は生後12ヶ月から24ヶ月
             2回接種法の開始  (1期)生後12ヶ月から24ヶ月(2期)就学前年の4月1日〜3月31日
             単味のFLワクチンの定期接種は終了

 

2007年 単味のFLワクチンの定期接種を再開

 

2008年 2006年 - 2007年のoutbreakを受け、キャッチアップキャンペーンとして2008年4月から5年間に限定し中学1年、高校3年相当での定期接種を開始

 

|麻疹ワクチンの接種計画

 

日本では弱毒生麻しんワクチンが、昭和45年から任意接種で導入され、昭和53年から定期接種に組み込まれました。平成18(2006)年4月1日からは、新制度により、麻疹の予防接種は、風疹の予防接種と同時に計2回(第1期 1歳〜2歳まで ・ 第2期 学校入学までの1年間)受けることになりました。

 

現在の麻疹ワクチンの接種スケジュール

  • 第1期 満1歳〜満2歳未満の1年間
  • 第2期 小学校就学前年の4月1日 - 3月31日
  • 第3期 中学校1年相当年の4月1日 - 3月31日(2013年3月31日まで)
  • 第4期 高校3年相当年の4月1日 - 3月31日(2013年3月31日まで)

 

 2).新制度による麻しん風しん混合生ワクチンの2回接種
 麻疹の予防接種は、1回生ワクチンを接種しただけでは、数%の子供さんは、十分な麻疹に対する免疫を、獲得出来ないことがある(primary vaccine failure:PVF)。また、一旦、生ワクチンを接種して獲得した免疫が、麻疹の野生株ウイルスの流行が少なくなった為、次第に低下して、野生株ウイルスに自然感染した際、麻疹を発症してしまうこともある(secondary vaccine failure:SVF)。
 このように、野生株の麻疹ウイルスの流行(自然麻疹)が減少して、SVFの症例が増加するおそれがある。その為、平成18(2006)年4月1日から、麻しん風しん混合生ワクチン(MRワクチン:医薬品名、ミールビック)を、2回接種するように、スケジュールが改訂され、新制度が導入される。即ち、第1期は、1歳〜2歳まで(生後12月〜生後24月に至るまで)に受け、第2期は、5歳以上〜7歳未満までに(学校入学までの1年間に)、受ける。

 

 

 2012年の麻疹排除計画

 

WHO/UNICEFにおいて日本を含む西太平洋地域での麻しん排除の目標時期を2012年に設定された事を受け、国内の麻しんを2012年までに排除する事となりました。目指す内容は次の通りです。これらを達成するために国内の医療体制を整備しました。

 

  • 輸入例を除き麻疹確定例が1年間に人口100万人当り1例未満であること
  • 2回の麻しん含有ワクチン接種率がそれぞれ95%以上であること
  • 全数報告などの優れたサーベイランスが実施されていること
  • 輸入例に続く集団発生が小規模であること

 

日本の1歳児の麻疹ワクチン接種率は約50%と極めて低く、麻疹患者のほとんどが予防接種未接種者です。麻疹による死亡例も毎年報告されています。50年前には数千人の麻疹による死亡者が出ていました。それと比較すると死亡数は著しく減少しています。

 

 

豆ちしき
厚労省の人口動態統計によると現在もなお数十名の死亡例があり、年齢的には0〜4 歳児が大半を占め、特に0〜1歳児の占める割合が多いという結果になっています。


 

|麻疹の社会的な取り扱い

 

麻疹は全数報告対象(5類感染症)であり、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出る義務があります。迅速な行政対応に寄与するため24時間以内をめどに届け出るよう求められています。

 

 学校保健安全法における取り扱い

 

麻疹は学校保健安全法では、第2種の疾患なので解熱した後3日を経過するまで、出席停止となります。 麻疹ウイルスの伝染力は、発疹が出現して5日目には消失します。麻疹に関しては次のように出席停止期間が定められています。

 

麻疹にかかった場合   発疹に伴う発熱が解熱した後3日を経過するまで出席停止

麻疹の伝染力は発疹出現5日目には消失するため、解熱後3日したら登校できるようになります。発疹のあと色素沈着がしばらく残りますが、元気が良くなっていれば登校してもよいでしょう。

 

麻疹患者の家に居住する者、または麻疹にかかっている疑いがある方

予防処置の施行その他の事情により学校医その他の医師において感染の可能性がないと認めるまで

 

麻疹が発生した地域から通学する方

その発生状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間

 

麻疹の流行地を旅行した方

その流行状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間

 

ただし病状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認めたときは、この限りではありません

 

学校保健法は、2009年(平成21年)4月1日から、学校保健安全法と改称されました。

 

 

 麻疹に免疫がない人が、麻疹患者(接触者)と接触し、麻疹ウイルスに感染した場合、感染後2日以内(72時間以内)に、麻疹の生ワクチンを緊急接種すると、麻疹の発病を阻止出来ると言われる。

 

<麻疹ワクチンとガンマグロブリン>
 筋注用のガンマグロブリン製剤(ガンマグロブリン-ニチヤク)は、麻疹、A型肝炎、ポリオには、予防や症状の軽減目的で、使用することが、保険で認められている。

 

 なお、ガンマグロブリン製剤の投与を受けると、生ワクチン(麻疹ワクチン、おたふくかぜワクチン、風疹ワクチン、水痘ワクチン等)の予防接種を受けても、効果が得られないおそれがある。ガンマグロブリン製剤の投与を受けた後は、3カ月以上、生ワクチンの予防接種を延期する。また、生ワクチンの予防接種を受けた後、14日以内に、ガンマグロブリン製剤の投与を受けた場合は、投与後3カ月以上経過した後に、生ワクチンを再接種する。なお、ガンマグロブリン製剤を大量(200mg/kg以上)に投与された場合(川崎病、特発性血小板減少性紫斑病など)は、6カ月以上(麻疹に感染する危険性が低い場合は11カ月以上)経過するまで、生ワクチンの接種を延期する。なお、麻疹の抗体を含むガンマグロブリン製剤を、大量に静注を受けても、麻疹に罹患したり、予防接種を受けていなければ、6カ月後には、麻疹抗体(HI抗体)は、陰性になる。

 

 麻疹の発病を阻止する為に、ガンマグロブリン製剤を0.3ml/kg(50mg/kg)程度、筋注しても、麻疹に感染していなかった場合は、血中の麻疹の抗体価は、上昇しない。自経例では、3カ月後検査した麻疹HI抗体価は、X8未満。

 

 ガンマグロブリン製剤は、血液製剤なので、注射により、未知の病原体などを、感染するおそれがある。しかし、現代の日本の医療レベルを考えると、そのようなリスクは、自然感染した麻疹を発症した場合のリスクより、少ないと考えられる。
 なお、生ワクチンは、製造工程で、ウシの血液由来成分(血清)などを使用しているので、予防接種も、未知の病原体などを、感染させるおそれ(リスク)は、存在すると思われる。

 

 注8:ガンマグロブリン製剤には、麻疹ウイルスに対する中和抗体(NT抗体)などが含有されている。
 接触した人(接触者)が、麻疹だと判明した場合は、麻疹ウイルスに暴露後6日以内に、ガンマグロブリン製剤を投与すると、発病が阻止され得る:筋注用のガンマグロブリン製剤(150mg/dl)は、麻疹の発病を阻止するには0.3ml/kg(50mg/kg)、症状の軽減させるには0.1ml/kg(15mg/kg)、筋肉内注射する(麻疹の発病阻止には、感染5日以内に、0.25ml/kgを、筋注する。病状を修飾して軽症にするには、0.05ml/kgを、筋注する)。

 

 

麻しんの患者さんに接触した場合、72時間以内に麻しんワクチンの予防接種をすることも効果的であると考えられています。接触後5、6日以内であればγ−グロブリンの注射で発症を抑えることができる可能性がありますが、安易にとれる方法ではありません。詳しくは、医師とご相談ください。

 

罹患したことのある人、ワクチン接種を行った人は終生免疫を獲得するとされていたが、ワクチン接種を行っていても十分な抗体価を得られない場合や、野生株の麻疹ウイルスの曝露がないまま長時間を経過することによって抗体価が低下した場合、麻疹を発症することがある。このような場合は典型的な麻疹の経過をとらず、種々の症状が軽度であったり、経過が短かったりすることが多い(修飾麻疹)。

 

なお、今まで、麻疹や風疹の予防接種を受けていない子供さんは、スケジュールの改訂に合わせて、1998年10月2日〜2004年4月1日までの期間に生まれた子供さんは、2006年3月31日までに、どちらのワクチンも接種を受ける。
 2004年4月2日〜2005年4月1日までの期間に生まれた子供さんも、2006年3月31日までに、どちらのワクチンも接種を受ける。なお、麻疹や風疹を、どちらも、予防接種で受けたり、自然感染で罹患したことがなければ、2006年4月1日〜2歳の誕生日の前日までなら、新制度により、麻しん風しん混合生ワクチン(MR)で、接種を受けられる。

 

麻しん風しん混合生ワクチンは、他の生ワクチンの接種を受けた子供には、通常、27日以上間隔を置いて、接種する。また、他の不活化ワクチンの接種を受けた子供には、通常、6日以上間隔を置いて、接種する。麻しん風しん混合生ワクチン(乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン「タケダ」、はしか風しん混合生ワクチン「北里第一三共」、ミールビック)は、成人に接種する際には、「妊娠可能な婦人においては、あらかじめ約1箇月間避妊した後接種すること、及びワクチン接種後約2箇月間は妊娠しないように注意させること」と、添付文書に記載されている。なお、麻しん単独のワクチン(乾燥弱毒生麻しんワクチン「タケダ」、はしか生ワクチン「北里第一三共」)は、接種後の避妊の注意書きはない(「妊娠していることが明らかな者」は接種を受けられない)。
 2005年4月2日以降に生まれた子供さんは、1歳の誕生日を迎えたら、麻しん風しん混合生ワクチン(MRワクチン)の第1期の接種を、受けられる。

 

 平成18年6月2日に、平成18年政令第210号(改正政令:予防接種法施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令)と、平成18年厚生労働省令第128号(改正省令:予防接種法施行規則及び予防接種実施規則の一部を改正する省令)が公布・施行された。これにより、麻しん風しん混合生ワクチン接種は、勧奨接種となり、麻しんワクチン接種や風しんワクチン

 

麻疹の疫学

|麻疹の発生・歴史

 

麻疹のルーツは紀元前3000年頃の中近東地域が最初の流行地であったと考えられています。日本では、平安時代以後度々文献に登場する疫病の一つ <あかもがさ(赤斑瘡/赤瘡)> は今日の <麻疹> に該当するというのが通説です。江戸時代には13回の大流行が記録されており、1862年の流行では江戸だけで、約24万人の死者が記録されていた大病のひとつです。

 

|麻疹ウイルスの流行タイプ

 

流行しているウイルスの型は、時々刻々数年毎に変化しています。国立感染症研究所によると2008年までは、いわゆる土着株の遺伝子型D5型(バンコク型)が流行していましたが2009年からは日本国外由来のD9型やD8型が検出されました。

 

  • 2011年以降 D4型・D9型・D8型・G3型が検出 (D5型(バンコク型)は検出されず)
  • 2014年以降 B3型が最多  次いでD9型・D8型が検出

 

 

豆ちしき
流行株の推移は、日本国外の流行地であるヨーロッパ、東南アジア等を反映しています


 

|近年における麻疹の日本での流行

 

最近の日本での麻疹は、次のような傾向にとなっております。

 

  • 毎年春から初夏にかけて流行
  • 過去10年の推移  2001年に大きな流行がみられ、その後は徐々に患者数は減少
  • 性別内訳ではやや男性に多い
  • 年齢階級別 20〜24 歳 ・ 20歳未満 ・ 25〜29歳などが多い

 

|麻疹の年次別の流行状況

 

1984年 大きな全国流行あり

 

1991年 小さな流行・以後大きな全国流行はなし

 

2001年 患者報告数が定点あたり11.20人(推計患者数 約27.8万人)

           予防接種率の向上や、1歳の誕生日に予防接種を行うキャンペーン等の対策施行

 

2006年 春に茨城県(96例)と千葉県(90例)での地域流行

 

2007年 南関東を中心に地域流行が発生・各地に拡大

           10歳から29歳の世代という比較的高年齢に発生が集中したのが特徴

 

2008年 地域的流行

  • 神奈川県(2008年9月30日の時点 3515件)(全体の35%)
  • 北海道(1453件)
  • 東京都(1148件)
  • 千葉県(1032件)
  • 福岡県(670件)

神奈川県での流行

  • 横浜市(2008年10月2日現在1466件)
  • 横須賀市(679件)

 

2012年  岡山県美作保健所管内で1〜2月にかけ5例の患者が発生

患者全員からD9型麻疹ウイルスが検出されました。5例目の患者はカタル期に200名を超える接触者があり、感染拡大が懸念されたが接触者調査と感染拡大防止に取り組み3月22日に終息宣言を行いました。

 

2014年 2008年以上の麻疹患者数を記録

2006年以降最大の患者数が報告された2008年を上回るペースで患者の報告がされている。ただし流行の規模は小さく数十人単位の小規模な流行であるが、海外渡航経験の無い患者が増加しており二次・三次感染感染が起きています。

 

 

|若年者の麻疹感染の原因

 

かつては小児期に麻疹に感染し自然に免疫を獲得するのが通常でした。近年大きな流行が少ないことから成人になるまでに麻疹にかかったことがない場合や小児の時に予防接種をしたという場合でも、大人になって感染する例が目立ってきました。確かに麻疹ワクチンの接種率の上昇で自然に感染する割合は減少しています。このような状況下、若年層が麻疹に感染する理由は次のような理由が考えされます。

  • 10-20代の若年者の中には今まで一度も麻しんの予防接種を受けていない人がいる
  • 予防接種は、一度で十分な免疫が獲得できない
  • 麻しんワクチンを一回接種しても、数%程度の人には十分な免疫がつかない

2006年以降、上記の原因で麻疹が流行したと考えられています。更に麻疹ワクチンの接種率の上昇に伴って、麻疹患者数が減り麻疹ウイルスに暴露する機会が減少しました。幼少時にワクチンを接種した現在の10-20代の人は免疫が強化されず、時間の経過と共に免疫が徐々に弱まって来ている人がいることも原因の一つと考えられています。

 

麻疹は小児の病気?
麻疹は子供の病気であると誤解されていますが、2008年の報告では4歳以下の症例は15%にも満たず、10代から20代の患者が大半です。2009年の報告では4歳以下の症例が40%で多数となりました。麻疹による死亡数は日本でも減少傾向にあり2000年以降は年間20人以下です。

 

|妊婦の麻疹と胎児

 

妊娠中に麻疹にかかると流産や早産を起こす可能性があります。麻疹にかかったことがなく、麻疹ワクチンを打ったことがない女性で妊娠前であれば麻疹ワクチン接種を受けることをお勧め致します。既に妊娠している場合ワクチン接種は受けられません。流行した場合は外出を避け感染者に接触しないなどの注意が必要です

 

先天性麻疹
出産した新生児に、発疹が既に出生時に存在するか、生後10日以内に出現する場合は、子宮内で麻疹ウイルスに感染していた、先天性麻疹と考えられます。先天性麻疹では、潜伏期間(感染から発疹が現れるまでの期間)は平均6日(2日〜10日)であり自然感染の潜伏期間(10〜12日)より短いのが特徴です。先天性麻疹には、肺炎など致死的になる重症例も存在します。

 

 

豆ちしき
麻疹に免疫がない(麻疹に自然感染したり、予防接種歴がない)妊婦の方が、麻疹ウイルスに感染し麻疹を発症しても、胎盤がバリアーとなって胎児には、麻疹ウイルスが感染しない場合があります


 

|諸外国の麻疹疫学

 

日本を含めた世界保健機関(WHO)西太平洋地域では、2012年までに麻疹を排除することを目標に決めています。麻疹は伝染力が非常に強く、世界保健機関WHOの推計によれば、2004年の全世界の患者数は約50万人で、東南アジア・中近東・アフリカで多く発生しています。

 

 アメリカ(USA)

 

一時国内での麻疹根絶が宣言されました。しかし海外旅行者が国外からウィルスを持ち帰ったり、麻疹の記憶が薄れ保護者が予防接種を怠ったりなどの理由で2011年から再流行しています。

  • 2010年以前の過去10年では年平均で約60例
  • 2011年 508例が報告(例年の数倍に増加)
  • 2014年 感染症例数は27州で644件と過去最高を記録(12月カリフォルニア州で50名超)

ディズニーランドでの集団感染(2014年のOutbreak)
2014年12月カリフォルニア州で50名超えた麻疹感染者が報告されました。アメリカ疾病対策センター (CDC) は、この内42名はディズニーランドでの集団感染であったと報告しました。これに対しカリフォルニア州の保健当局は、ワクチン接種を受けていない高校生20名の自宅待機を命じました。背景には幼児のワクチン接種率が低下が挙げられます。<麻疹ワクチンと自閉症に関係があるのではないか> という不安と、予防接種の安全性を疑問視する保護者の考えかあり、小児の予防接種を避ける傾向に向かっているからです。

 

 フランス

 

  • 2007年 ほぼ根絶状態にあったが感染者は復活
  • 2008年 - 2011年 3年間で2万人が罹患

 

 イギリス

 

  • 1998年 英国ウェールズ地方 1219名が感染
  • 2012年 1200人以上の感染者

 

 

豆ちしき
1998年当時に英国人医師による <ワクチンが自閉症を引き起こす恐れがある> と発表した結果ワクチン接種率が低下しました。ウェールズ南西部は、新三種混合ワクチン接種に反対していました。


 

 ベトナム

 

麻疹の発生が多い。視覚障害者60万人の95%が薬や病気が原因で発症し、その主な原因が麻疹となっております。日本は <麻疹抑制計画> に対する無償資金協力をしています。

 

 アフリカ

 

現在麻疹は、ナイジェリアなどアフリカ大陸で多く発生しています。発症者の約30%が合併症を併発し、約40%が入院を必要としています。発熱時に不適切に解熱剤などを投与した場合、細菌による二次感染の危険性が高まります。

 

 

 

 

 

 

日本では2007年以前は麻疹発生数の正確な統計が行われていなかったが、2001年の流行を契機に開始された"1歳の誕生日にワクチンを"や、2006年度よりの第2期接種の開始、2008年度よりの第3期/第4期接種の開始により、2008年の報告数は11,005件(2009年1月6日現在)、2009年の報告数は702件(2009年11月18日現在)と大幅に減少した。ウイルスの遺伝子検査によれば、日本古来の土着ウイルスによる発症例は2010年5月が最後となり、以後、海外から持ち込まれた型による発症例のみとなった。厚生労働省は、2013年9月に排除状態と宣言。2015年までに現状が維持できればWHOによる排除認定を得る見込み[25]。

 

 しかし、麻疹ウイルスは、発熱する3日前から感染力があり、家庭内では、兄弟に発疹が現れ、麻疹と診断された時点で、既に、感染後、4日以上を経過していることが多い。また、急性脳炎などを発症した場合、自然感染した麻疹ウイルスが原因なのか、それとも、ワクチン株ウイルスが原因なのか、問題になりかねない。従って、麻疹の発症予防の為に、生ワクチンを緊急接種する方法は、乳児院など施設内の流行を阻止する際に、利用する方が良いと言われる。

 

 

 

 接種を、単独で、受けることが出来る。

 

 麻しん風しん混合予防接種の対象年齢外者(生後2歳〜来年学校に入学しない5歳児、7歳〜7歳半未満の小学校児)や、麻しんか風しんを単独接種したことのある児は、麻しんワクチン接種や風しんワクチン接種を、単独で、受けることが出来る。
 麻しんか風しんに罹ったことがある児や、保護者が単独ワクチンの接種を希望している児は、麻しんワクチン接種や風しんワクチン接種を、単独で、受けることが出来る。
 過去に、単独で、麻しんワクチン接種や風しんワクチン接種を、いずれも接種した児、あるいは、いずれかを接種した児は、第1期の予防接種を受けたと看做され、麻しん風しん混合生ワクチン(MRワクチン)の第1期分の接種は、受けられない。
 麻しん風しん混合生ワクチン(MRワクチン)は、任意接種として行う(市町村の委託が行うのでない)場合は、年齢や性に関係なく接種出来る。

 

 麻しん風しん混合生ワクチン(MRワクチン)を接種した場合、風しん生ワクチンウイルスが、接種1〜2週間後に、接種を受けた人(小児)の咽頭から、周囲に排泄されるが、周囲の風しん感受性者(風しんに免疫が無い妊娠中の母親など)に感染することはないと言われる。
 麻しん生ワクチンは、麻しん患者と接した麻しん感受性者(麻しんの免疫がない人)に、感染後2日以内(72時間以内)に、緊急に接種すると、麻疹の発病を阻止出来ると言われる。
 風しん生ワクチンは、風しん患者と接した風しん感受性者(風疹の免疫がない人)に、緊急に接種しても、確実に風しん発症を予防出来るとは限らないが、接種自体は構わない。

 

 MRワクチン第2期接種(学校入学までの1年間)に関して、接種前と後(4〜6週後)と、接種後平均40ヶ月後(34〜46ヶ月)に、抗体を測定した調査結果がある(西村直子等、MRワクチン第2期接種後の抗体追跡調査、第52回日本臨床ウイルス学会、平成23年6月11〜12日)。その結果では、麻疹HI抗体、麻疹NT抗体、風疹I抗体が、接種後に接種前より上昇する。しかし、接種後3〜4年後には、第2期接種前の抗体価と有意差がなくなる。第2期接種は第1期接種でMRワクチンの接種を受けたがで、十分な免疫が作れなかった子供さんや、接種を受けていない子供さんに、免疫を付けることには有用だが、麻疹や風疹に対する免疫(抗体価)を長期に維持させる効果は、限定的なのかも知れない。

 

 なお、以前、麻疹の生ワクチンと風疹の生ワクチンに、流行性耳下腺炎の生ワクチンを加えた統一株MMR混合ワクチンが、使用されたが、副反応(副作用)として、ムンプスウイルスにより無菌性髄膜炎を来す症例が多く、中止になった。MMR混合ワクチンは、副反応として、発疹(やや発赤を伴なった小丘疹で、水痘様、あるいは、ストロフルス様の発疹)が現れる頻度も多かった(24.2〜24.8%)。副反応の発疹は、主として、顔面、四肢、胸部に、バラバラ程度に現れ(稀に全身に現れた)、色素沈着を残さずに、消失した。副反応の発疹は、ワクチン接種7〜9日後に出現し、平均3.5日間、持続し(消失し)た。

 

 

 

母体由来の麻疹特異IgG抗体があると、接種した麻疹ワクチンウイルスの増殖が十分でないため、母体由来の抗体がほぼ消失したと考えられる生後1歳以降 の児に接種を行う国が多い。

 

我が国における現行の予防接種法では、生後12カ月〜90カ月未満を接種年齢としているが、麻疹ワクチン接種は、疾患に罹患し た場合の重症度、感染力の強さから考え、接種年齢に達した後なるべく速やかに、少なくとも生後12〜15カ月に接種することが望ましい。例えば、誕生日と の関係でポリオの集団接種の時期と重複した場合は、麻疹ワクチンを優先するのが望ましいと考えられる。生後6か月以降は母親由来の免疫が減弱するため、麻 疹流行期や保育園などで集団生活をしている場合は、緊急避難的に1歳以前にワクチンを接種する選択もあるが、この場合の接種は定期接種ではなく、任意接種 として有料で実施することになる。いずれにしても、1 歳前に接種を受けた場合は、1 歳以降に再接種(この場合は定期接種として実施)をする必要がある。その理由は、乳児期後期まで母親からの移行抗体が持続している場合があり、その場合は ワクチンウイルスが母親の免疫で中和されてしまうため、十分な抗体が産生されない可能性があるためである。また、γグロブリンを投与された後は、6 カ月未満の乳児と同様の理由で効果が得られないため、3カ月間は接種を行わない。川崎病などの治療で大量療法を受けた場合には、6カ月間あける必要があ る。

 

 ワクチンによる免疫獲得率は95%以上と報告されており、有効性は明らかである。接種後の反応としては発熱が約20〜30%、発疹は約10%に認められ る。いずれも軽症であり、ほとんどは自然に消失する。熱性けいれん既往者に対しては、発熱性疾患罹患時と同様の方法で抗けいれん剤(例:ジアゼパム坐剤) による予防が可能である。

 

 ワクチンアレルギーの原因となったゼラチンに関しては、ゼラチン・フリーや低アレルゲン性ゼラチンを採用するなどで改善された。ごく稀に (100〜150 万接種に1例程度)脳炎を伴うことが報告されているが、麻疹に罹患したときの脳炎の発症率に比べると遙かに低い。
感染症法における取り扱い  (2012年7月更新)

 

 

数日たっても熱が下がらないで咳がひどいときは、肺炎のことがあります。
また中耳炎を合併することもあります。
まれながら急性脳炎を起こすことがあります。
けいれんや意識障害を起こしたときはすぐに診てもらいましょう。
呼吸困難や脱水症が強くなると入院が必要なこともあります。

 

麻疹ウイルスは、感染源となる患者が部屋から離れても、1時間後も(as long as)、空気中に漂っている。
麻疹は、発症3日前から、発疹出現4〜6日後まで、感染力がある。

 

流行には季節性があり、初春から初夏にかけて患者発生が多い。日本での患者数は推計で年間20万人程度とされ、患者報告数を年齢別に比較すると、2歳以下が約半数を占め1歳代が最も多い。次に6〜11か月、2歳の順となる。小児以外の患者数は地域によるバラツキがあり、ワクチンによる抗体価[2]の低下した10歳代から20歳代前半が最も多く、次いで、20歳代後半の順である。

 

麻疹には、症状の出現する順序や症状の続く期間に個人差が少ないという特徴がある。ただし、免疫のある患者では、非典型的で軽症な経過をとることがある(修飾麻疹)。ワクチン接種歴により軽く済むといわれる。
母体からの免疫移行があり、生後9カ月頃までは移行免疫により発症が抑えられる。なお、抗体価が低下している女性が妊娠し、胎児が十分な抗体を持たず生まれ、生後5カ月以内で免疫が切れてしまうケースが報告されている。

 

成人の麻疹は、他の潜伏期間の長いウイルスの初感染(水痘など)と同様、重症化することが、多い。

 

 

はじめの2〜3日は、熱・せき・目やに・鼻水などかぜと同じ症状です。
ふつうのかぜと異なり重症感が強く、目やにが多く、目が充血していれば(結膜炎)、はしかの感染を疑う必要があります。

 

乳児期に麻疹ウイルスに感染して、発病した乳児麻疹では、発熱(38℃以上)しても、1〜2日以内と短く、咳嗽も軽度で、結膜炎は、認めないことが多い。

 

乳児麻疹では、Koplik斑は認められる(出現率は、100%でない)。
乳児麻疹では、発疹は一過性で、色素沈着を残さないで消退する(突発性発疹など、他のウイルス性疾患による発疹と、鑑別を要する)。

 

 

 

母親からの麻疹の移行抗体は、生後4〜6カ月程で、血中から消失する(検出感度以下になる)と言われて来た。

 

生後1歳6カ月以下の麻疹症例(103例)を検討した結果では、発熱(38℃以上)期間は、1歳未満の症例の方が、1歳以上の症例より、短い:1歳未満の症例の発熱期間は、5.0±1.9日、1歳以上の症例の発熱期間は、7.4±0.5日)。従って、麻疹の母親からの移行抗体は、生後1歳近くまで、作用している(生後1歳未満に麻疹の予防接種をした場合、効果が弱くなるおそれがある)。

 

 自経例:7カ月の幼児。姉が麻疹に罹患。(2週間後、)血液検査で、麻疹IgM抗体陽性だったが、麻疹の症状は現れていなかった。6カ月後、麻疹HI抗体X64。この症例では、母親からの移行抗体により、麻疹の発病が阻止され、かつ、麻疹に対する免疫も誘導された。このように、麻疹は、移行抗体が存在すれば、初感染であっても、不顕性感染で終わり、抗体も出来る。

 

 乳幼児の麻疹の移行抗体は、母親が、麻疹ワクチン接種により、麻疹の免疫を有していた場合は、母親が、麻疹に自然感染して、麻疹の免疫を有していた場合に比して、早く、消失してしまう。

 

 

 

 接触した人(接触者)が、麻疹だと判明した場合、麻疹ウイルスに暴露された日(感染した日)が、いつなのか、問題になる。麻疹は、発熱してから、発疹が現れて36時間の間、感染力が強い。しかし、麻疹ウイルスは、麻疹発病者(接触した人)が発熱する3日程前の潜伏期間中から、排泄されていて、感染していることもある(接触した人に発疹が現れた日を、感染第4日と計算する)。

 

 麻疹では、発疹が現れる4日前から、発疹が現れて3日後までの期間、鼻咽頭から、高率に麻疹ウイルスが検出される。

 

 麻疹は、自然感染の場合、麻疹ウイルスに感染して、10〜12日間の潜伏期間の後、発熱や、咳、鼻汁などの症状で発病する。麻疹は、ウイルスに感染してから7日目(発熱する3日前)から、麻疹の発疹が出現して5日後(解熱3日後)まで、ウイルスが排出される。

 

 麻疹の発症阻止には、生ワクチンの接種は72時間以内に行えば良いが、実際には、患者さん(接触した人)が、麻疹を発症した場合、発熱して発疹が現れるまで(4日間程)麻疹と診断されず、潜伏期間中に感染していて日数が経っている可能性があるので、抗体(ガンマグロブリン製剤)の注射の方が、有用な場合が多い。

 

 

 

 

 野生株ポリオウイルスにより、ポリオ(急性灰白髄炎)を発症した症例の経過を上記に示した(2008年3月時点で、日本で、最後の野生株ポリオウイルスによるポリオの症例となっている)。

 

 野生株ポリオウイルスに感染した際に、筋肉注射などにより骨格筋が物理的に障害されると、ポリオを発症するリスクが高くなることが知られている(傷害誘発性急性灰白髄炎:injury-provoked poliomyelitis)。

 

 経口ポリオ生ワクチン(oral polio vaccine:OPV)を接種(経口内服)した後、接種15日頃(4〜35日)に、1/450万人の頻度で、弛緩性麻痺(VAPP:Vaccine associated paralytic polio)が見られる。経口ポリオ生ワクチン(OPV)を接種した子供からワクチンウイルスが排泄され、周囲の人(親など)に感染して、1/550万人の頻度で、弛緩性麻痺(ポリオ:contact case)を来たすことが知られている。

 

 経口ポリオ生ワクチン(OPV)を接種して1カ月以内に、頻繁に筋肉注射すると、ワクチン関連麻痺(VAPP)を発症するリスクが高まる。

 

 ポリオウイルスは、感染初期にウイルス血症を来たす。
 ポリオウイルスは、末梢神経に存在するポリオウイルス受容体から取り込まれ、神経軸索を介して、逆行性に中枢神経に移行し、運動神経障害(ポリオ)を発症させる。
 筋肉注射などにより骨格筋組織が傷害されると、逆行性のポリオウイルス神経軸索輸送が活性化され、ワクチン関連麻痺(VAPP)のリスクを高める。
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者は、セフェム系等の抗生剤(の注射)が筋肉の萎縮を抑制すると言う。 

 

 ポリオウイルスは、消化管粘膜からリンパ節を経由し、血液に侵入し、一過性にウイルス血症を来たす。
 ウイルス血症が存在する際には、筋肉注射などにより筋肉が挫滅すると、変性した筋繊維の受容体発現量が増加し、筋繊維内神経終末からウイルスが受容体を介して取り込まれ易くなると推測されている。
 βラクタム系抗生物質(抗菌薬)は、GLT1(glutamine transporter-1)の発現を増加させる作用が知られている(Rothstein等、2005年)。
 アストロサイトに存在するGLT1は、シナプス間隙の細胞外グルタミン酸濃度を低濃度に維持する作用に関与している。
 βラクタム系抗生物質は、GLT1の発現を増加させ、神経細胞死を抑制し、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の筋肉萎縮を抑制すると考えられている。

 

 

病気に気づいたらどうする
 予防(ワクチン)に勝る治療はありません。ワクチンを接種する前に麻疹の患者さんと接触したことが判明した場合は、接触後48時間以内に麻疹含有ワクチンを接種する、あるいは接触後5日以内に γガンマグロブリン製剤の注射を受けることで発症を予防する、あるいは軽くすませる効果があります。ただし、家族内感染の場合は、これらの予防法では間に合わないことがほとんどです。

 

 発症してしまった場合は、早急にかかりつけの小児科、成人の場合は内科あるいは皮膚科を受診し、入院の必要性を含めて対応を相談することが必要です。

 

 

 

流行株の変異によって、ワクチンで獲得した抗体での抑制効果が低くなることが懸念されている。また、ワクチンによる獲得免疫の有効期間は約10年とされるが、ブースター効果による追加免疫が得られず、抗体価の低下(減衰)により再感染することもある。

 

 麻疹ウイルスは、ウイルスに感染してから7日目(発熱する3日前)から、麻疹の発疹が出現して5日後(解熱3日後)まで、ウイルスが排出される(特に、麻疹は、発熱してから、発疹が現れて36時間後までの期間、感染力が強い)。
 麻疹は、自然感染の場合、麻疹ウイルスに感染して、10〜12日間の潜伏期間の後、発熱や、咳、鼻汁などの症状で発病する。
 麻疹は、コプリック斑(Koplik斑:やや隆起した白色の小斑点)が、発熱が始まって2〜3日後に出現し、発疹出現3日後以内に消失する。
 麻疹の生ワクチン接種の副反応として、発熱(37.5℃以上)が、接種を受けた子供の約20%に見られる。発熱は、ワクチンを接種して9日後に見られることが多い(発熱は、ワクチン接種7〜12日後に見られる)。
 麻疹に免疫がない人が、麻疹ウイルスに感染した場合、6日以内にガンマグロブリン製剤を筋注するか、72時間以内に麻疹の生ワクチンを緊急に接種すれば、麻疹の発病を阻止し得る。

 

 

この検査は全国の地方衛生研究所(地研)で実施されており、麻疹を疑った場合は、保健所を通して地研に臨床検体を搬送します。地研での実施が困難な場合は、国立感染症研究所で実施します。急性期と回復期に採血して、麻疹ウイルスに対するIgG抗体が陽性に転じたことで診断する場合もあります。

 

 2008年1月1日から麻疹は、全数報告の感染症となり、診断したすべての医師が最寄りの保健所に1週間以内に(できる限り24時間以内に)届け出ることが義務づけられました。

 

ワクチンを接種して発症そのものを予防することが最も重要です。接種時期は、1歳になったらできる限り早く接種することが望まれます。日本では、2006年からMR(麻疹・風疹混合)ワクチンが広く使用されるようになり、2006年6月からは、1歳児と小学校入学前1年間の幼児を対象とした2回接種制度が始まっています。これらの時期に受けるワクチンは、定期接種として通常、無料で接種が受けられます。

 

 また、2007年の全国的な麻疹流行は10〜20代が中心であったため、国の麻疹対策が大きく変わりました。2008年度から5年間の時限措置として、10代の者への免疫強化を目的に、中学1年生と高校3年生相当年齢の者に対する2回目の予防接種(原則としてMRワクチン)が、予防接種法に基づく定期接種に導入されました。

 

 

基本方針
? 厚生労働省の予防接種に関する検討会が麻しん排除計画案を策定し、厚生労働省に提出[13]。
? 麻しんに関する特定感染症予防指針を告示[14]
? 2008年1月1日から麻疹と風疹は、それぞれ全数把握疾患に変更。
? 2008年4月1日から5年間の期限付きで、麻疹と風疹の定期予防接種対象を拡大。

 

関係者会議
? 国として麻しん対策会議/麻しん対策ブロック会議を定期的に開催する。
? 各都道府県にて麻しん対策会議を設置すべくガイドライン案を制定[15]。
学校等での対策
? 学校における麻しん対策の徹底の為、学校における麻しん対策ガイドラインを公表[16]。
? 保育所・幼稚園・学校等における麻しん対応ガイドラインを改版[17]。

 

医療機関での対策
? 医療機関での麻疹対応のガイドラインを改版[18]。
? 全数把握の徹底の為、医師による麻しん届出ガイドラインを改版[19]。

 

 

保健所での対策
? 麻しんを積極的に排除するための疫学調査のガイドラインを改版[20]。
? 予防接種の実施状況を把握するための予防接種管理システム(オフライン型)を国費で開発し、地方自治体に無償で提供する事になった[21]。
各自治体の対策
? 島根県[22]。
? 千葉県[23]

 

 

日本国内で2012年に生じた麻疹の小規模な集団感染を解析した研究者によれば、発症した子供の多くの保護者は「片親」「外国籍を有し日本語の案内を読めない」などの社会的なハンディキャップがあり、またワクチン接種歴が無い場合が多かったとしている[33]。また、第1期接種の対象は1歳児とされているため、定期接種の対象から外れている0歳児をどのように守るのかが課題となると問題提起している[33]。

 

 

 

本年は、小児(15歳未満)の患者数は例年に比べ、それほど増加しておらず、2007年5月現在2001年の約10分の1の程度です。しかし、成人(15歳以上)の患者数は2001年時と同じ程度に上っています。
また、今年はこれまで主に東京都と埼玉県など首都圏で流行がみられていますが、徐々に全国に拡がりつつります。
麻しんの流行状況に関する情報は、国立感染症研究所感染症情報センターのホームページで確認することができます。国立感染症研究所感染症情報センターのホームページアドレスは、
http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/index.html)です。

 

しかし、毎年地域的な流行が反復している。感染症 発生動向調査では、国内約3,000の小児科定点から年間1〜3万例の報告があり、実際にはこの10倍以上の患者が発生していると考えられる。この中で2 歳以下の罹患が約50%を占めており(図1)、罹患者の95%以上が予防接種未接種である。

 

近年の推移を見ると、小児科定点から報告された 麻疹患者数は、1999 (平成11)年には過去最低となっていたが、2001(平成13)年は過去10 年間では1993 (平成5)年に次いで二番目に大きい流行であった。

 

2001年は当初より高知県、奈良県、九州地方などで流行がみられ、3月に入って北海道でも患者数が急 増した。図2 にも示すように、近年の麻疹流行の特徴は、流行の多い県と少ない県が隣り合っていることである。

 

 

 

また、平成11 年度から、全国約500 の基幹病院定点より成人麻疹(18歳以上)の患者発生が報告されているが、2001年は過去3年間で最も多い報告数となっている。これらの症例の多くは入 院を要するような比較的重症例であると考えられる。

 

 

 

発症予防には麻疹ワクチンが有効であるが、感染症流行予測調査によると国内での麻疹ワクチン接種率は低く、1歳 児の接種率は約50%である(図3)。

 

2000 年度同調査から感受性人口を推計すると、日本全国で300 万人弱の感受性者が存在していると考えられる(図4)2 ) 。

 

2007年
      成人麻疹の流行により2007年7月27日現在で高校73校、高専4校、短大8校、大学83校が休校し、高
      校・高専・短大・大学のみで1657人の患者が発生

 

この対策の為、流行の中心地である東京都では都立学校の生徒・児童の内のワクチン未接種かつ未罹患者への有償での予防接種の実施、都内市区町村立学校の児童・生徒に対する市区町村が行う措置の支援、私立学校の児童・生徒に対しても同等の支援を行う事とした。

 

東京都の対策とは別に、東京都の市区においても緊急の予防接種が実施された。

 

麻疹・成人麻疹の流行により麻疹ワクチン・MRワクチンの需要が急増し、定期接種ワクチンが前年よりMRワクチンに移行された影響も重なり、全国的にワクチン在庫が不足する事態が生じた。麻疹ワクチン・MRワクチンは1歳〜2歳未満・小学校就学前の1年間を定期接種により優先され、それ以外の世代では、緊急接種を除き、ワクチン接種の前に抗体検査を行うことが推奨されたが、それにより一時的に検査試薬が不足する事態を招いた。

 

10歳〜29歳の麻疹・成人麻疹が多くみられた原因として、定期接種世代の時点で使用されていたMMRワクチンの副反応の影響による接種率の低迷、麻疹発生の減少により、ブースター効果が期待できなくなった事で、抗体価が低下し修飾麻疹が発生したことなどが考えられる。

 

2008年
横浜市ではこの事態を受けて2008年3月21日より2009年3月20日の1年間の時限措置として、「定期予防接種対象者を除く1歳〜高校3年生に相当する年齢で、麻しん予防接種を1度も受けておらず、麻しんにり患していない方」を対象とする市費負担による予防接種(任意接種)を実施している[45]。

 

同様に横須賀市では2008年2月1日より3月31日の2ヶ月間の時限措置として、「2歳から高校3年生(相当年齢)で、麻しん予防接種を未接種、かつ麻しん未罹患の人(小学校入学前1年間の児童を除く)」に定期外予防接種を実施した。

 

 

日本では<麻しん>として感染症法に基づく五類感染症に指定して届出の対象となっています

 

ヒトからヒトへの空気感染(飛沫核感染)の他に、さらに、飛沫感染、接触感染など様々な感染経路で感染する。

 

田島クリニック

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