横浜市中区・馬車道 総合診療クリニック 内科・小児科・外科系

肩関節周囲炎(五十肩)

肩関節周囲炎(五十肩)は、50歳代を中心とした中年以降に、肩関節周囲組織の加齢性変化を基盤として発症します。肩関節の痛み(疼痛)動きの制限(運動障害・拘縮)が代表的な症状です。原因が特定できないことが多く、軽微な外傷の繰り返しの後に肩の不快感や疼痛で発症しやすいです。肩関節とその周辺組織に炎症を来すため、炎症を起こしている部位、炎症の程度によりさまざまな症状を起こします。

 

肩関節周囲炎(五十肩)の特徴

  • 体をあまり動かさない人に起こりやすい
  • 好発年齢は40〜60歳代
  • やや女性に多い程度で、男女差はほとんどない

肩関節周囲炎とは、肩関節の炎症によって痛みが起きる病気です。代表的には五十肩があります。肩関節の痛みは <石灰性腱板炎> や <腱板断裂> などからも起こります。石灰性腱板炎や腱板断裂なども、広い意味で肩関節周囲炎に含めることもあります。最近は肩関節に障害があり、明確な診断名がつけられる場合は、肩関節周囲炎から除外しています。そのため、肩関節周囲炎という場合、一般的には五十肩のことを指します。

肩関節周囲炎の定義

  • 広 義  肩関節周囲炎
  • 狭 義  疼痛と拘縮を伴う肩関節(凍結肩)

肩関節周囲炎の原因

| 肩関節の構造

 

肩関節の骨格は、<肩甲骨・上腕骨・鎖骨> の3つの骨によって構成されています。肩甲骨のくぼみには、上腕骨の骨頭がはまり込んでいますが、肩甲骨のくぼみが浅いため、上腕骨頭のはまり方が浅く、関節が不安定です。骨だけでは構造的に不安定で脱臼しやすい状態をサポートするため肩甲骨の背中側に付いている棟上筋・棘下筋・小円筋と、肩甲骨の内側に付いている肩甲下筋が集合して、上腕骨頚部に付くことで、肩関節をしっかりと支えています。

肩関節の支持組織

  • 関節包
  • 腱板(棟上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)

肩の酷使によって炎症や損傷が起こりやすく、痛み、可動域の制限が起こります。肩関節の炎症は、肩峰下の滑液包や関節周囲の筋肉に広がることがあり、このような肩関節周囲炎が狭義の五十肩と呼ばれています。

 

| 肩関節周囲炎の病態

 

肩関節を構成する骨・軟骨、・靱帯・腱などが老化(変性)して肩関節の周囲組織に炎症が起きることが、主な原因と考えられています。中年以降、特に50歳代に多くみられ、その病態は多彩です。

肩関節の炎症が起こる部位

  • 肩峰下滑液包  肩関節の動きをよくする袋
  • 関節包  関節を包む袋
  • 腱 板  肩の筋肉が上腕骨頭に付くところ
  • 上腕二頭筋長頭腱  腕の筋肉が肩甲骨に付くところ

五十肩では、この筋肉と骨とを結びつける <腱板>骨と骨とを結びつける <靭帯> に炎症が起こります。また、肩甲下筋と棘上筋のすき問など、筋肉や腱板のすき間に炎症を生じることもあります。こうした炎症が痛みを引き起こし、悪化すると、肩関節の拘縮の原因にもなります。肩関節の周囲には、上腕骨頭を覆っている関節包や肩峰下滑液包などがあり、関節の動きを滑らかにする滑液をつくるとともに、クッションの働きをしています。五十肩の場合、これらの組織の弾力も失われ、炎症を起こします。

 

凍結肩(Frozen Shoulder)
肩関節の動きをよくする袋(肩峰下滑液包)や関節を包む袋(関節包)が癒着するとさらに動きが悪くなります(拘縮または凍結肩)

 

| 肩関節の変化を起こす原因

 

肩関節の変化を起こすファクターとして次のようなものが考えらえますが、現在どの原因で起こるのかは明確化されていません。

  • 加齢に伴う組織の変性
  • 肩甲上神経が圧迫されて起こる障害
  • 外 傷
  • 自律神経障害
  • 血行障害
  • ホルモンバランスの変化

肩関節周囲炎の症状

肩関節周囲炎(五十肩)の多くは、ある日突然、肩関節に激しい痛みやしびれが現れることによって始まります。なかには、朝、目が覚めたら肩関節が痛くなっていたという患者さんもいます。肩関節周囲炎の症状は肩あるいは肩から上腕への疼痛と関節の動きが悪くなることです。

 

症状と時期によって3段階に分類されます。

  • 急性期  疼痛が最も強く現れる
  • 慢性期  疼痛は軽快しているが運動制限(拘縮)が残っている
  • 回復期  関節拘縮が改善する

 

 

 1.急性期(筋痙縮期) 発症から約2週間

 

急性期では炎症を起こした腱板や肩峰下滑液包の痛みが主です。運動制限を引き起こす運動時痛や安静時痛や夜間痛が出現し、徐々に関節拘縮が現れて肩の可動域が制限されます。周辺組織に炎症が広がる場合もあり、肩周辺のかなり広い範囲に疼痛を感じます。その場合痛みは肩だけでなく、時に肩から上腕にも放散します。痛みが筋肉のけいれんを引き起こし、更に痛みを増悪させます。

急性期の痛みの特徴

  • 安静時痛  安静にしていても痛みは強く
  • 運動時痛  動かそうとすると更に強い痛み
  • 夜間痛   夜間に激しい痛み

 

運動痛

日常生活で衣服の着脱、帯を結ぶ動作、入浴時(体や髪を洗う動作)、トイレや、腕(上肢)を上に挙げようとする動きによって痛みが出たり強くなったりします(運動時痛)。肩関節が痛み、関節の動きが悪くなります(運動制限)。動かす時に痛みがありますが、あまり動かさないでいると肩の動きが悪くなってしまいます。

 

夜間痛

夜中にズキズキ痛み、痛みで眠れなかったり、あるいは、痛みのために目を覚ますこともあるほどです。

 

夜間痛の原因
夜間に痛みが強くなるのは、肩が冷えることや、寝ている時に上腕骨の肩峰下滑動機構に長時間圧力が加わることが原因と考えられています。このような場合、起き上がって座位で腕を下げておくと、痛みが軽減することもあります。

痛みが強いこの時期には筋肉を無理に動かそうとして、筋肉のけいれんを増強してしまうことがあるので、無理に動かすのはあまりお勧めできません。この時期の治療としては、痛みどめなど、炎症を抑える治療が有効とされます。

 

 

 2.慢性期(筋拘縮期・Frozen期) 急性期後の約6ヵ月間

 

肩関節周囲炎の痛みは軽症例は1〜2か月、重症例は3〜6か月ほどかけて徐々に軽減して行きます。急性期から慢性期になると、安静時痛は消失します。その一方で腕(上肢)を挙げていく途中で痛みを感じ、肩関節の動きが制限されます。肩関節の動きが悪くなり <肩・上肢の挙上・回旋> が困難になります。このような状態を <拘縮> といいますが、拘縮が起こってくると、日常生活にも支障が及ぶようになります。特に肩関節の内旋・外旋制限(関節稼働制限) が残ることが多いです。

 

この筋拘縮期を <Frozen(凍結肩)期>とも、欧米では <Frozen shoulder(凍った肩)> とも呼ばれています。この時期では日常生活でも、無理な肩関節の動作は避けて、肩の痛みが強くならない範囲で肩関節を動かしていくことが大切です。

肩関節周囲炎の慢性期 ・ 筋拘縮の原因
肩関節周囲炎の慢性期での筋緊張は1つの靭帯だけに限らず、他の靭帯や滑液包にも影響が出て、病理学的に <繊維化> が生じ <瘢痕化> と呼ばれる硬い組織に変化すると考えられています。このため肩の周り全体が硬化し肩関節拘縮が起こるといわれています。

 

 

 3.回復期  慢性期後の約1年

 

回復期になると運動制限も徐々に改善して、運動時痛も消失します。リハビリを行い肩関節の柔軟性を取り戻す必要があります。肩の痛みや不快感も軽快することから、凍結した肩が、<溶け始める時期>ともいわれています。一般的に回復時間は1年前後とされるが、一方で平均約7年後にも半数の患者様に症状(痛み・可動域制限)が残存していたとの報告もあります。肩関節周囲炎(五十肩)は、放置しても自然に治癒することがありますが、多くは定期的に再燃・寛解を繰り返す傾向にあります。また一度症状が消失しても数か月から数年経過して再発するケースもあります。

回復期には可動域制限がまだ残るものの、痛みが少ないために大きな機能障害の自覚はなくなり徐々に可動域が自然回復しますが、安静と患者の自然治癒力に任せるだけでなく、積極的に痛みと可動域制限を改善する治療が必要です。

肩関節周囲炎(五十肩)は、逆側の肩関節に新たに発症することがあります。左右同時に発症することはあまりなく一方の肩が軽快してから逆側することがほとんどです。

肩関節周囲炎の検査と診断

肩関節周囲炎(五十肩)の診断では他の疾患との鑑別診断が重要になります。肩に痛みがある場合、肩関節の障害と、肩関節以外の障害の、両方を考える必要があります。 肩関節に起こる痛みには、肩関節周囲炎のほかに、肩腱板損傷・肩石灰沈着性腱炎などがあります。

  • 肩関節の障害  肩関節周囲炎(五十肩)・石灰性腱板炎・腱板断裂
  • 肩関節以外の障害 肺尖部肺がん・狭心症・心筋梗塞・胆石症・頚椎の障害

 

| 肩関節周囲炎の検査の流れ

 

肩関節周囲炎の検査は次のようなものがあります。

 

問 診

問診により、症状の内容・痛みのある部位・発症のきっかけ・どのようなときに痛むか といったことについて、詳しく尋ねられます。

 

触 診

実際に肩に触る触診や、肩を動かしながら診察する身体的な検査も行います。身体的な検査では、肩関節の動きや関節の動く範囲がわかりますし、問診では得られなかった痛みに関する情報、痛み以外の症状などがわかる場合もあります。特に圧痛点は、障害されている部位の判別に役立ちます。肩関節に起こる痛みには五十肩である肩関節の関節包や滑液包(肩峰下滑液包を含む)の炎症のほかに、上腕二頭筋長頭腱炎・石灰沈着性腱板炎・肩腱板断裂などがあります。

 

X線検査

X線検査では、腕を上げたり、腕を内側や外側に回すなど、いろいろ姿勢を変えて肩関節を撮影します。エックス線検査では、石灰性腱板炎や肺の異常などが判読できます。X線像では肩関節周囲炎に特異的な異常所見はないので、前記した疾患を除外するために行われます。

 

肩関節MRI

磁気を用いた検査で骨に囲まれた軟部組織の診断に有効です。腱板断裂などの診断に有用です。

画像検査は、肩関節や他の部位に、障害の有無を確認するのが主要な目的です。以上の診察や画像診断により肩関節や他部位に、障害がない場合は、<肩関節周囲炎(五十肩)> と診断されます。

 

| 肩関節周囲炎(五十肩)の鑑別診断

 

肩関節周囲炎(五十肩)は通常、片側にだけ発生し、回復後に同側の再発はほとんどありません。このため強い肩の痛みを繰り返して訴える場合は、他の疾患との鑑別が必要となります。

肩関節周囲炎(五十肩)と鑑別すべき疾患

  • 腱板断裂
  • 石灰性腱炎
  • 変形性肩関節症
  • 絞扼性神経障害
  • 頸椎疾患
  • 神経原性筋萎縮症
  • 腫瘍性疾患
  • 内臓からの関連痛

問診・診察・理学所見・画像診断(単純X線撮影・MRI・超音波検査・関節造影など)から鑑別します。

 

| 肩関節周囲炎と腱板断裂の違い

 

肩痛が長期化する時は腱板断裂を疑います。肩関節周囲炎(五十肩)と腱板断裂では痛みの発現の仕方が若干異なります。

 

肩関節周囲炎と腱板断裂の相違点

  • 肩関節周囲炎(五十肩)  腕の挙上途中には痛みがない 

<これ以上は上がらない>という動きの最後の時点で痛みが起こることが多い

  • 腱板断裂  腕の挙上途中で痛みが起こることが多い

 

腱板断裂を放置すると腱板や周囲の筋肉がやせたり断裂が拡大して日常生活機能を冒しかねず、早期発見が重要です。これらは、X線撮影、関節造影検査、MRI、超音波検査などで区別(鑑別診断)します。

肩関節周囲炎の治療

| 肩関節周囲炎の治療の目的

 

肩関節周囲炎の治療の目的は、肩関節の痛みを和らげて、かつ可動域を改善すること です。

 

| 肩関節周囲炎の治療方法

 

肩関節周囲炎(五十肩)は自然に治ることもありますが、放置すると日常生活が不自由になるばかりでなく、関節が癒着して動かなくなることもあります。その治療法は次のようなものがあります。

 

保存療法・理学療法・薬物療法・運動療法・手術療法・生活習慣の改善

 

肩関節周囲炎は基本的に上記の治療法を組み合わせて行います。基本的に 保存療法・理学療法・薬物療法・運動療法 で改善することが多いので、多くの症例で手術は行われていません。もし手術が必要な場合でも侵襲性の低い関節鏡視下授動術などが第一選択となります。治療は数ヵ月以上にわたり、自発的な運動療法の継続が必要なため、患者様が積極的に治療に取り組むことが重要となります。

 

保存療法(安静)

痛みの激しい急性期には疼痛対策が重要です。三角巾・アームスリングなどで安静を図り、痛みを感じない肢位をとることが大切です。痛みを増悪させる激しい運動や、重いものを持ったり、無理な動作をすることは控えます。痛みが強くならない程度であれば、日常生活で、ある程度は、肩関節を動かすようにします。

 

理学療法(温熱療法・ウオーターベッド・レーザー・干渉波など)

関節の動きが悪くなる時期には、温熱療法・ウオーターベッド・レーザー・干渉波など各種理学療法が有効です。

マイクロ  赤い光で患部を温める(温熱療法)
レーザー  レーザーを患部にポイント照射
ウオーターベッド  水の上に浮かんだ状態で全身マッサージ
干渉波  数種類の周波数の波が患部を揉みほぐす

中でも患部を温める温熱療法が効果的です。患部を温めることにより、血行がよくなり、痛みが和らぐとともに、筋肉がほぐれて、肩関節を動かしやすくなります。温熱療法ではクリニックではマイクロ(赤い光による温熱療法)が有効です。

家庭でもできる温熱療法
一般にホットパック(ジェル状の温熱剤が入ったパック)や肩用のサポーター、カイロなどを用います。最近は、カイロを入れることのできるサポーターもあります。また、通常のサポーターに、面ファスナーをつけ、そこに使い捨てのカイロを貼りつける方法もあります。入浴して、全身をよく温めるのもよいでしょう。  患部の保温は大切で、特に夜間の冷えには注意する必要があります。

 

薬物療法

痛みがつらい場合は薬物療法を行って痛みを和らげます。薬物療法には、大きく分けて消炎鎮痛薬の使用・患部に鎮痛剤を直接注射する方法・神経の元をブロックする方法があります。

 

消炎鎮痛剤の内服・外用

消炎鎮痛薬には多くの種類があるため、患者さんの体質や症状を考慮しながら、適切な薬を選びます。消炎鎮痛薬には、一般的に 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs) が用いられます。状況に応じて筋弛緩剤や精神安定剤を組み合わせ相乗効果を求めることもあります。

 

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)

  • 内服薬・経口剤(錠剤・粉末・顆粒)
  • 外用薬(シップ・テープ・軟膏・ローション・坐薬)

 

 

院長のひとり言
肩関節周囲炎や変形性脊椎症の患者様から<温めるの・冷やす、どちらが効く?>とよくご質問を受けます。基本的に冷シップなどで冷やすのは急性期の痛みが強い場合に適しています。その一方で温シップなどで患部を温めると血行が良くなり慢性的な痛みに効きます。しかし原則はなく基本的に、患者様が試してみて症状が改善されると思われる方を選んでいただいて結構です!


 

患部に鎮痛剤を直接注射する方法(トリガーポイントブロック)

患部への注射は、痛みを早く抑える効果があります。肩峰下滑液包内または肩関節腔内にステロイド剤と局所麻酔剤の混合液や、高分子ヒアルロン酸ナトリウムを注射します。ステロイド薬は、強力な抗炎症作用がある反面、副作用にも注意が必要ですが、ヒアルロン酸ナトリウムは、本来滑液にある成分であり、注射しても副作用がありません。また、炎症を抑える作用もあるとの報告もあります。そのため最近は、ヒアルロン酸ナトリウムを用いるケースが増えてきているようです。ヒアルロン酸ナトリウムやステロイド薬の患部への注射は、過1回のペースで、3〜4回程度行います。

 

神経ブロック

薬物療法を行っても、どうしても痛みが治まらない場合は、肩甲上切痕というポイントに局所麻酔薬を注射します。一時的に痛みを抑えることができます。

 

運動療法

慢性期に入って痛みが弱まったら、肩関節の拘縮予防と可動域改善のために運動療法を開始します。肩を温めながら少しずつ動かし、痛みがほとんどなくなる回復期に入ったら、徐々に動きが良くなるのに合わせて、慢性期以上に積極的に肩を動かします。基本的には患者様自身が自宅で行えるCodman体操(振り子運動)などで訓練させるが、改善が思わしくない場合は通院にてリハビリを行います。運動療法と同時に保温、血行の改善、痛みの除去、筋痙縮の軽減などを目的として、温熱・冷熱療法、超音波療法などを組み合わせることもあります。肩関節周囲炎(五十肩)は痛みと関節可動域の制限から日常生活を大きく妨げます。症状を改善する治療が、中高年以降のQOLを高めるために重要です。

 

五十肩体操
五十肩では、肩関節を動かさずにいると拘縮がひどくなって、ますます動かしにくくなっていきます。痛みが和らいできたら、<五十肩体操>を行って、肩関節を積極的に動かし、リハビリテーションに努めましょう。 五十肩体操では、段階を追って、肩関節を動かせる範囲を徐々に広げていくことが肝心です。また、無理をせずに、痛みが強くならない程度に行うことです。 五十肩体操を、毎日繰り返し行うことで、肩関節の動きが滑らかになるとともに、血行がよくなり、筋肉が徐々にほぐれていきます。 なお、五十肩体操は、必ず五十肩と診断されてから、正しいやり方を医療機関で指導を受けて行うとよいでしょう。

 

手術療法

五十肩の多くは、こうした保存療法を行うことによって、症状が改善されていきます。しかし、治療を開始して半年〜1年以上たっても、症状が軽くならない場合や、痛みなどがひどくて、日常生活に支障を来すような場合は、手術を行うこともあります。五十肩が慢性的になると、肩甲下筋と棘上筋の腱板のすき間の炎症により、組織が瘢痕化して、すき間が狭くなります。手術では、この療痕化した部分を切り離して、肩甲下筋と棘上筋の腱板の間に、十分なすき間をつくることで、痛みが軽くなり、肩関節の動きもよくなります。手術には入院が必要で、全身麻酔下で行います。実際に、五十肩で手術をするケースは、あまり多いものではありません。

 

五十肩と糖尿病
五十肩の治療で、注意したいのが「糖尿病」です。糖尿病の人が五十肩を起こすと、症状がなかなか軽くならず、治療が長引く傾向があります。しかし、血糖を適正にコントロールすることによって、症状の改善や、治療期間の短縮が期待できます。糖尿病の人は、五十肩の治療を行うとともに、糖尿病の治療と生活管理に努めることが大切です。

 

生活習慣の改善(日常生活での対処法)

急性期の痛みの強い時期には荷物や肩を上げる動作で肩に負担をかけないようにし安静を保ちましょう。痛みが改善して来たら痛みのない範囲で動かしてみましょう。慢性期や回復期では痛みの状態を確認しながら、関節の拘縮を改善する運動療法で積極的に肩を動かしてみましょう。

 

夜間痛がある時

激しい痛みのために、夜眠れない場合は、クッションや座布団を二つ折りにして、悪いほうの肩からひじにかけて敷き、肩関節の負担を少なくします。さらに、クッションを腕に抱えて寝ると、痛みがより和らぎます。

 

服を着替える時

肩や腕を上げたり、後ろに回す動作をすると痛みが強まるため、衣服の着替えがつらくなります。服を着るときは痛いほうの腕から袖を通し、脱ぐときは楽なほうから脱ぐと、あまり痛くなく着脱ができます。セーターやシャツ、パジャマなどを前開きのものにすると、肩関節にあまり負担をかけずに、着替えられます。逆に、帯を結んだり、エプロンを結ぶ動作は非常につらいので、背中や腰で、ひもやファスナーなどを使う衣服は、避けたほうがよいでしょう。

 

| 病期による治療法の選択

 

急性期 疼痛対策が重要

  • 三角巾・アームスリングなどで安静を図る(痛みを感じない肢位をとることが大切)
  • 消炎鎮痛薬の内服
  • ブロック注射

 

慢性期

  • 理学療法(温熱療法・ウオーターベッド・レーザー・干渉波など)
  • 温熱療法(ホットパック、入浴など)
  • 運動療法(拘縮予防や筋肉の強化)などの理学療法

(理学療法は炎症症状が治まってから行うのが原則)

 

難治性のケース

  • 透視下関節内パンピング 局所麻酔薬+生理食塩水を関節包を拡大するよう反復注入
  • 手術療法(関節鏡視下関節受動術) 麻酔下に関節鏡を挿入して癒着を剥離

 

| 肩関節周囲炎(五十肩)の予防法

 

肩関節周囲炎(五十肩)は生活習慣に注意することで予防可能です。重要なのは次の3点です。

  • 普段から適度に肩を動かす
  • 肩を冷やさないようにする
  • ストレスと付き合う

 

普段から適度に肩を動かす・エクセサイズの習慣

五十肩は、体を動かすことの少ない人に起こりやすい病気ですから、中高年の人は五十肩体操やテレビ:ラジオ体操などを行い、意識して体を動かすようにすることです。また、仕事の合間に、背中を伸ばしたり、体を動かすのも、五十肩の予防に効果があります。

 

肩を冷やさないようにする

肩の保温で、注意したいのが冷房です。冷房で長時間肩を冷やすと、血行が悪くなり、筋肉が硬くなるので、好ましくありません。冷房を使いすぎないようにし、冷房の効いているところでは、長袖のシャツを着用したり、カーディガンを羽織るなどして、全身の保温に努めるようにしましょう。

 

ストレスと付き合う

ストレスが症状を悪化させる可能性もあります。日頃から心身のリフレッシュに努めるなど普段の生活で積極的に予防を心がけましょう。気分転換のために、温泉などに出かけたり、散策するのもよいと思います。

 

肩関節周囲炎(五十肩)に気づいたらどうする
自然に治ることもありますが、放置すると日常生活が不自由になるばかりでなく、関節が癒着して動かなくなることもあります。急性期は安静が原則ですが、人によっては痛みをこらえて動かそうとしてしまう場合があります。無理に動かすと肩周辺の炎症によりはれている組織(浮腫)は強い摩擦を受けて損傷され、ひどくなると腱板が損傷することもあります。このような状態を避けるためにも、整形外科への受診をすすめます。

田島クリニック

〒231-0023 横浜市中区山下町118-1 エトワール山下1F
TEL 045(264)8332
www.tajimaclinic.yokohama


1F Etoile Yamashita, 118-1 Yamashita -Cho, Naka-ku, Yokohama, 231-0023

English Available ! !

診療時間


HOME クリニックについて 診療科と診療時間 院内設備 健康診断・人間ドック 自費診療のご案内