横浜・馬車道の総合診療クリニック

前立腺がん Prostatic Cancer

|前立腺について

 

前立腺は男性固有の臓器でに精液の一部を造っています。膀胱・精嚢の前方に存在するのが名前の由来です。前立腺は尿道を取り囲み直径3〜4cmの栗の実のような円錐形を呈し恥骨の裏側に存在しています。直腸に接しし肛門から指で触知可能なので直腸診が前立腺疾患の診断に有用です。

 

  • 内腺部(移行域) ⇒ 前立腺肥大症(良性)が発症しやすい
  • 外腺部(辺縁域) ⇒ 前立腺がんの約70%が発症

 

|前立腺がんとは

 

前立腺がんは、前立腺の細胞が正常な細胞増殖機能を失い無秩序に自己増殖することにより発生します。がん細胞はリンパ液・血液 の流れで運ばれ別の場所に移動し、そこで増殖することもあります。これを転移 といいます。前立腺がんは近くのリンパ節 や骨に転移することが多いのですが、肺・肝臓などに転移することもあります。前立腺がんは早期に発見すれば手術や放射線治療 で治癒 することが可能です。また、比較的進行がゆっくりであることが多いため、かなり進行した場合でも適切に対処すれば、通常の生活を長く続けることができます。

 

前立腺がんとラテントがん
前立腺がんは、加齢と共に多くなります。その中には進行が緩徐で、寿命への影響が少ないがんもあります。生前での検査・診察でがんが発見されず死後の解剖で初めて確認されるがんを、ラテントがん(Latent Cancer = 潜伏がん) といいます。これに対し悪性度の高いがんは時間の経過とともに進行し、腫瘍マーカーPSA検査や診察で発見されるようになります。

 

|前立腺がんの疫学・統計

  • 前立腺がん死亡者数 約1.2万人(男性がん死亡全体の約5%)
  • 前立腺がんの罹患数 約4.7万人(男性がん罹患全体の約14%)
  • 胃がん⇒肺がん⇒結腸がんに次いで4番目(男性がん全体の12%)
  • 罹患率は65歳前後から顕著に上昇(年齢によるリスクファクター)
  • 日本人 < 欧米諸国 ・ アメリカ日系移民
  • 欧米諸国の中ではアメリカの黒人の罹患率が最高(人種によるリスクファクター)

前立腺がん患者数は上昇傾向
50歳以後罹患率は上昇し70代では約200人/10万人、80歳以上では300人/10万人 以上になります。前立腺がんは高齢者のがんであるといえます。食事の欧米化・高齢人口の増加・腫瘍マーカーPSA(前立腺特異抗原)検査の普及により、前立腺がんの患者数は将来的に肺がん・大腸がんに次ぐ3番目になると予想されています。他のがんに比べて進行が緩やかな場合が多く、したがって病気に罹患する期間が長いので、薬物療法の役割も大きいと思われます。

前立腺がんの原因

前立腺がんの原因は遺伝子異常と考えられており、加齢と男性ホルモンの存在が影響しますが、いまだ発がんのメカニズムは明確ではありません。発生してから症状を呈するがんに育つまでには30〜40年かかるといわれています。

 

|前立腺がんのリスクファクター

 

遺 伝   前立腺がんの家族歴

遺伝的要素が強いと考えられています。前立腺がんと診断された親族がいる場合40歳からPSA検査を継続的に受けましょう。

年 齢  

高齢者の発症率が高い事実は統計的に裏付けられています。

人 種

欧米諸国と比較し、日本人の前立腺がんの罹患率・死亡率はいまだ低いとされています。全人種の中でもアメリカの黒人が最高の罹患率です。

男性ホルモン

動物実験などからアンドロゲン(男性ホルモン)が前立腺がんの発生に密接に関与していると仮定されています。その根拠に前立腺がんのホルモン療法でアンドロゲンの効果を抑えると腫瘍は縮小しPSAは減少して行きます。しかし疫学研究ではこの仮説は十分に立証されていません。また細胞増殖に関係しているタンパク・IGF-1により発症リスクが高くなる可能性が指摘されています。

高脂肪食・低線維食

高脂肪食の多量摂取で前立腺がんの発症率が増加し、高繊維食(穀類や豆類など)でがんの発生を抑える効果があると考えられています。ハワイやアメリカ東海岸在住の日系人は日本人と米国人の中間の発生率であり、食事の欧米化が原因とする考えの根拠のひとつになっています。喫煙との関係を指摘する報告もあります。

  • リスク要因 ⇒ 乳製品・カルシウム・肉・脂肪
  • 予防要因 ⇒ 大豆・リコピン・セレン・ビタミンE・魚・コーヒー・野菜など

 

|前立腺がんの予防

 

前立腺がんの発生原因は明確ではないので予防法も明らかではありません。しかし前立腺がんは欧米諸外国での男性患者数が最も多いがんです。この事実より日本でも生活様式・食習慣の欧米化などの環境要因が原因のひとつと考えられています。疫学的な観点から、若いころよリ動物性脂肪の摂取を少なくし、緑黄色野菜を多くとるのがよいと考えられています。伝統的な日本食がよいわけです。もちろん禁煙も重要です。

前立腺がんの症状

|前立腺がんの一般的な症状

 

前立腺がんは前立腺の外腺の腺上皮から発生しやすく初期にはほとんど症状がありません。前立腺がんと同時に存在することの多い前立腺肥大症による症状が一般的な症状となります。

  • 排尿困難 ⇒ 尿が出にくい・尿の切れが悪い・排尿に時間がかかる
  • 残尿感 ⇒ 排尿後すっきりしない・尿線が細い
  • 頻 尿 ⇒ トイレに立つ回数が多い(特に夜間)
  • 尿失禁 ⇒ 我慢できずに尿を漏らしてしまう

症状がなくても人間ドックなどの血液検査で腫瘍マーカー前立腺特異抗原(PSA)が高値であることがわかり、専門医を受診される方が増えています。

 

|病期による症状のちがい

 

早期前立腺がん

前立腺がんの70%は前立腺の辺縁域(外腺部)に発生しますので早期には全く無症状です。一方前立腺肥大症は移行域(内腺部)に発生し早期より症状が出現します。前立腺肥大症はがんに合併することが多く、その症状が発現します。

 

局所進行前立腺がん

前立腺肥大症と同様な症状がみられます。前立腺が尿道を圧迫するため、

 

頻尿(尿の回数が多い・特に夜間) ・ 尿が出にくい ・ 尿線が細く時間がかかる   タラタラ垂れる ・ 尿線が中絶する 

 

などの症状が見られます。がんが発育し隣接臓器に浸潤すると次のような症状は出現します。

  • 膀胱・尿道への浸潤 ⇒ 血尿・排尿時痛・尿閉
  • 精嚢腺・射精管への浸潤 ⇒ 血性精液
  • 勃起神経への浸潤 ⇒ 勃起障害(インポテンス・ED)

 

進行転移前立腺がん

前立腺がんはリンパ節と骨(特に脊柱と骨盤骨)に転移しやすいがんです。転移した臓器により

  • リンパ節転移⇒下肢のむくみ(転移により腫大したリンパ節が静脈還流を阻害)
  •  

  • 骨転移 ⇒がん性疼痛(腰痛など)

        ⇒下半身麻痺(転移した椎骨が変形し脊椎神経を圧迫・ヘルニア症状)

などの症状が生じることがあります。腰痛などで骨の検査を受けたり、胸部X線検査で肺転移が先に見つかり原発前立腺がんが発見されることもあります。

前立腺がんの分類

前立腺がんの病期(ステージ)とは、がんの進行の程度を示す言葉です。次の3つの分類方法があります。

 

TNM分類 ・ ABCD分類 ・ グリソンスコア

 

一般的に、病期分類 にはTNM悪性腫瘍分類が用いられています。また臨床病期(画像などで得られた治療前の進行度)分類としてABCD分類もあります。またグリーンスコアでがんの悪性度を評価します。

 

|TNN悪性腫瘍分類

 

前立腺がんのTNM分類では、次の3点に基づいて、その病期を判定します。

T(Tumor)がんが前立腺の中に留まっているか・周辺の組織・臓器にまで及んでいるか
N(Lympho Node)周囲のリンパ節 (所属リンパ節)へ転移しているか
M(Metastasis)離れた臓器への転移(遠隔転移)はないか

T・N・Mは更にいくつかに分類されます。

T1  直腸診でも画像検査でもがんは明らかにならず、偶然に発見された場合
T1a 前立腺肥大症などの手術で切り取った組織の5%以下にがんが発見される
T1b 前立腺肥大症などの手術で切り取った組織の5%を超えた部分にがんが発見される
T1c 前立腺特異抗原(PSA)の上昇のため、針生検によってがんが確認される
T2  前立腺の中にとどまっているがん
T2a 左右どちらかの1/2までにがんがとどまっている
T2b 左右どちらかだけに1/2を超えるがんがある
T2c 左右の両方にがんがある
T3  前立腺をおおう膜(被膜)を越えてがんが広がっている
T3a 被膜の外にがんが広がっている(片方または左右両方・顕微鏡的な膀胱への浸潤)
T3b 精のうにまでがんが及んでいる
T4  前立腺に隣接する組織(膀胱、直腸、骨盤壁など)にがんが及んでいる

 

N0  所属リンパ節への転移はない
N1  所属リンパ節への転移がある

 

M0 遠隔転移はない
M1 遠隔転移がある

例えば、がんが精のうまで及んでいて、所属リンパ節に転移があるけれども、別の臓器への転移はない場合は、T3bN1M0と表記することになります。

 

|ABCD分類

 

ABCD分類による臨床病期分類はTNM分類より複雑です。以下()内は該当するTNM分類です。

 

<前立腺がんを疑わない場合>

 

ステージA 

がんを疑わず前立腺肥大症の手術の結果がんが発見された場合(T1a・T1b)
         <早期がん> の意味ではありません。

 

<前立腺がんを疑う場合>
がんを疑って検査を行った結果、前立腺がんであると診断された場合、ステージはB・C・Dとなります。

 

ステージB

一般的な早期がんで前立腺内にがんが留まっている場合(T2)

 

ステージC

前立腺外への進展が認められる場合(T3・T4の一部)

 

ステージD 

D1 骨盤内への進展・転移がある場合(T4・N1)
D2 遠隔転移がある場合(M1)

 

現在ではABCD病期分類が若干曖昧なため可能な限りTNM分類に従うことが推奨されています。

 

|グリソンスコア

 

グリソンスコアは前立腺がんの悪性度を示す数値です。前立腺がんの治療方法を選択する際に利用します。前立腺がんはがん細胞が数種あり悪性度の異なる複数の細胞が混在しています。その細胞像を5段階の組織分類に照合し、がんのグレードを確定します。前立腺針生検(組織検査)を行って採取したがん細胞を顕微鏡で調べて

 

一番面積を占めている細胞像・2番目に面積を占めている細胞像

 

を選びます。それぞれを5段階の組織分類(スコア)に当てはめます。その2つのスコアを合算したものがグリソン・スコアになります。最も悪性度が低いものが2、高いものが10の9段階で表示されます。

組織診断では、分化度が低いほどグリソンスコア・悪性度が高くなります

  • 高分化(G1) グリソンスコア3+3=6
  • 中分化(G2) グリソンスコア3+4or4+3=7
  • 低分化(G3) グリソンスコア4+4=8

グリーソンスコア さらに詳しく!転移のない前立腺がんに対するリスク分類
超低リスク (T1c)

  • グリーソンスコア<6
  • PSA値が10ng/mL未満
  • 前立腺生検の陽性コア数が3未満
  • 全コアでのがんの占拠率が50%以下
  • PSA密度が0.15ng/mL/g未満

低リスク (T1〜T2a) グリーソンスコア<6・PSA値が10ng/mL未満
中間リスク (T2b〜T2c) グリーソンスコアが7またはPSA値が10?20ng/mL
高リスク (T3a)  グリーソンスコアが8〜10またはPSA値が20ng/mL以上
超高リスク(T3b〜T4)

前立腺がんの検査と診断

前立腺がんの検査及び診断の流れをご紹介します。

問 診

排尿・尿の異常に関する症状をチェックします。排尿困難・・頻尿・残尿感・血尿など

直腸診

古くから行なわれている診断法です。肛門から示指を挿入して前立腺の状態を調べます。前立腺は直腸に接しているので外側の辺縁域のがんは、ある程度の大きさになれば直腸から指で診断することが可能です。前立腺がんは硬いしこりを前立腺内に触れ、前立腺肥大では表面平滑な腫大した腫瘤を触れます。

PSA検査(前立腺特異抗原)  正常値 0〜4ng/mL

前立腺がんの早期発見においては、PSAの値を測定することが必須の検査となっています。前立腺がんがPSAという特殊な物質を分泌するので現在腫瘍マーカーとして、最も有用な検査のひとつです。前立腺がんになるとPSAの値は上昇しますので

 

スクリーニング・診断・進展度・治療効果の判定・再発の有無・予後

 

までも予測することができます。

 

全年齢でPSA基準値は0〜4ng/mLです。PSA値が4〜10ng/mLの場合前立腺肥大症と前立腺がんの確定診断が困難な場合ありますので<グレーゾーン(Gray Zone)>と呼ばれ25〜40%の割合でがんが発見されます。また4ng/mL以下でも前立腺がんが15〜20%発見されることもあります。100ng/mLを超える場合には前立腺がんが強く疑われ更には転移も疑われます。

 

PSA検査の値と検診頻度

PSA検査は前立腺がんのスクリーニング検査としては最も有用と考えられています。

  • 1ng/mL以下の場合は3年毎
  • 1.1ng/mL以上の場合では年1回の再検診

 

PSA検査と発見率・年齢の関係

カットオフ値とは、この値を境に再検査や治療を始めるための数値です。前立腺がん発見率は、カットオフ値4.0ngmlで検診を受けると以下のようながん発見率となります。

  • 50 〜 54歳 (0.09 %)
  • 55 〜 59歳 (0.22 %)
  • 60 〜 64歳 (0.42 %)
  • 65 〜 69歳 (0.83 %)
  • 70 〜 74歳 (1.25 %)
  • 75 〜 79歳 (1.75 %)年齢と共に発見率は増加すると報告されています 

PSA更に詳しく!  PSAサブタイプによる前立腺がんと前立腺肥大症の判別

 

PSAには、遊離型のfree PSA・結合型のcomplexed PSAがあり、総PSAに対する遊離型のfree PSAの割合を% free PSAといいます。

  • 前立腺肥大症 % free PSA高値

    (遊離型free PSA>結合型complexed PSA)

  •  

  • 前立腺がん  % free PSA低値

    (遊離型free PSA<結合型complexed PSA)

 

尿検査

尿一般の検査で潜血などを調べます。前立腺がんが膀胱まで浸潤していたら異常所見が出ます。

経直腸的前立腺超音波検査(経直腸エコー検査)

超音波を発する器具(プローブ)を肛門から挿入して、前立腺の状態を調べる検査方法です。前立腺内部の異常の有無を直接観察します。前立腺がんは前立腺の変形・腫瘤陰影(低エコー領域)として認められます。

前立腺生体組織検査(前立腺組織生検)

PSA値・直腸診・経直腸エコー検査で前立腺がんの疑いがある場合、確定診断のために前立腺の組織の一部を採取し前立腺生体組織検査(生検)を行います。がん細胞の有無や、がん細胞の性質が調べられます。一般的には、多部位生検(10本以上の組織を採取)のため短期入院・麻酔(局所・腰椎・全身麻酔)が必要です。経直腸エコーで前立腺を観察しながら、バイオプティガンという優れた生検器具を使用し細い針で前立腺を刺し、組織を採取する <系統的生検> が行われます。
前立腺生検では、超音波による画像で前立腺の状態をみながら、初回の生検では、10〜12カ所からの組織採取が勧められます。検査の精度を上げるために通常の 経直腸的生検(6本)+経会陰的生検(8本)(合計14本)組織を採取する施設もあります。画像的に異常がない部位からも前立腺がんが発見されることが多くあるためです。

 

前立腺組織生検の合併症
血尿・肛門出血・血精液症・急性前立腺炎(抗生剤投与により対応)

CT検査・PETCT検査

リンパ節転移や肺転移の有無を確認するために行われます。

MRI検査
  • がんの存在位置(がんが前立腺内でどこに存在しているのか)
  • がんの浸潤度

    (がんが前立腺内に留まっているか・前立腺外への進展・精のうへの浸潤 )

  • リンパ節転移(前立腺周囲のリンパ節への転移)

などをチェックします。

骨シンチグラフィ

全身の骨転移の有無をチェックします。骨に転移・異常がある場合にはラジオアイソトープの強い集積反応がみられます。反応の度合いやその偏りなどにより骨転移があるかどうか判定することができます。

X線検査

前立腺がんの肺転移をチェックします。

最近は前立腺がんの早期発見の目的で、MRI検査、PETCT検査も行われています。CT検査、MRI検査ともに、造影剤を使用するため、アレルギー反応が起こることがあります。薬剤によるアレルギー反応を起こした経験のある方は担当医に申し出てください。

 

病期診断

 

生検検査でがんと診断が確定したら、次に行うことは病気の進行度の診断です。治療法の決定に必須の検査です。

病期診断と対応する検査方法

  • 原発巣の進行度診断 直腸診・経直腸エコー・MRIなど
  • リンパ節転移の診断  腹部/骨盤CT・MRI・腹部エコーなど
  • 骨転移の診断 骨シンチグラム・単純X線写真・CT・MRIなど
  • 肺・肝転移などの診断 単純X線写真・CTなど

 

前立腺がんの病期 (ステージ)

  • 病期A(限局がん) 前立腺肥大症に対する手術の結果、偶然発見されたがん
  • 病期B(限局がん) すなわちがんが前立腺の中に留まる
  • 病期C(局所浸潤がん) がんが前立腺の被膜を超えて周囲組織に浸潤
  •               (脂肪組織・精嚢・膀胱頚部など)

  • 病期D(進行がん) がんがリンパ節や骨、肺、肝などの遠隔臓器に転移

前立腺がんと前立腺肥大症との区別
早い段階では、前立腺肥大症と前立腺がんに症状の差はありません。どちらも、血尿や尿が出にくくなるなどの症状が現れます。前立腺肥大症ではどんなに進んでも、骨の痛み、下肢のむくみなどはみられません。直腸診では、前立腺肥大症は、弾力性のある腫大(はれて大きくなる)した表面が平滑な腫瘤(しゅりゅう)として触れますが、がんでは、硬いしこりを触れます。PSA値は、前立腺がんのほうが高値を示します。最終的には、前立腺の針生検を行って診断します。

病気に気づいたらどうする
開業医・検診センターでPSA検査を受けてください。PSA検査の結果が4ngml以上だったら、泌尿器科専門医の診察を受けてください。PSA値が4〜10ngmlをグレーゾーンといい、針生検で20〜30%の割合でがんが発見されます。PSA値が10ngml以上だったら、針生検を受けることをすすめます。生活での注意は、脂肪の多い食事はひかえ、繊維、穀物、豆類を多くとり、運動をして太らないようにします。もちろん禁煙です。

前立腺がんの治療

前立腺がんの治療法には一般的に

 

外科治療・放射線治療 ・ホルモン療法・化学療法・PSA監視療法(待機療法)

 

があります。症例・病期に対し各々組み合わせて治療を行って行きます。前立腺がんの治療を考える上で大切なポイントは、

  • がん診断時のPSA値
  • 腫瘍 の悪性度(グリーソンスコア)
  • 病期診断に基づくリスク分類
  • 患者様の年齢と期待余命(今後平均的にどのくらい生存可能か)
  • 患者様の病気に対する考え方

などにより総合的に決定されます。

 

 

|外科療法(根治的前立腺全摘除術)

 

前立腺全体を精嚢と共に摘除しがんを取り除き膀胱と尿道をつなぐ手術です。一般的には前立腺の周囲のリンパ節 も取り除かれます(リンパ節郭清)。がんが前立腺内に留まった状態で余命10年以上は期待できる場合には最も高い生存率 が保障できる治療法であるとされています。局所療法ですから適応症例はABCD分類で 転移のないステージA・B・C の一部 です。次の方法があります。

恥骨後式前立腺全摘除術

下腹部を切開し骨盤内にアプローチする方法。入院期間は約3週間で、原則として輸血に備えて自己血貯血を行います。原則的に術前に自己血貯血を1回(400cc)行い、手術開始直前に麻酔下でもう1回貯血することもあります。

会陰式前立腺全摘除術

股の間を切開し骨盤内にアプローチする方法(最近は稀な術式)

腹腔鏡手術 

腹部に数か所小さな穴を開けて長細いスコープ(腹腔鏡)を腹腔内に挿入し体外のモニターを観察しながら施行する手術

メリット

  • 開腹手術に比べて出血量は少ない

ディメリット 

  • 手術時間が比較的長い
  • 切除不完全なケースもある
  • 前立腺尖部やそのまわりで切除断端陽性率(手術で切り取った組織の端[切断面]に確認できるがん細胞の割合)が高い
  • 自発的に排尿コントロールできるまで時間がかかる
  • 尿禁制(自分の意志で、適切な場所と場面で排尿できる状態)の回復が遅い
ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(ロボトミィ手術)  

精密な鉗子を持つ操作用手術ロボットを遠隔操作して行う手術方法です。日本では2000年に登場し2012年4月より保険適用になり、今後も手術法の選択肢の1つとして期待されています。開腹手術と同等の制がん効果(がん細胞の増殖抑制効果)があり、手術侵襲(手術により生体を傷つけることによる影響)も開腹手術に比べ少ないです。現在、この手術方法に慣れた施設では、手術後7日前後で退院することが可能となっています。手術後は、カテーテルという管を尿道から膀胱まで挿入し、体の外に尿を排出させます。排出された尿の色や量を観察し、問題がなければ、通常、数日から1週間でカテーテルを抜くことができます。

手術療法の副作用
インポテンス(ED 勃起不全)・尿失禁が主なものです。EDは勃起神経温存手術により防止できる可能性がありますが、がんが大きい場合や広がっている場合は非常に危険です。勃起神経温存手術が行われた場合には、術後6ヶ月から2年程度の間に片側温存で30-40%, 両側温存で70%程度性機能は回復します。尿失禁は3ヶ月で70%の人が、6ヶ月で90%の人がおおむね改善しますが、1日数枚のパッドを要する方が10%弱見られます。

 

|放射線療法

 

前立腺がんに対しての放射線治療は一般的に次の2つの方法があります。

  • 外照射療法  体の外から放射線をあてる
  • 組織内照射療法(密封小線源療法) 体の中から放射線をあてる

高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺す方法です。近年、放射線治療技術が進歩し、陽子線や重粒子線を使用したり、IMRT(強度変調放射線治療)や3D(三次元原体照射)の使用で副作用を減らし、治療効果の改善が得られています。

 

外照射療法

 

転移のない前立腺がんに対して、体の外から患部である前立腺に放射線を照射します。前立腺がんに対する放射線治療では、照射された放射線の総量が多くなればなるほど、その効果が高くなることが知られています。外照射療法では一般的に、1日1回、週5回で7〜8週間前後を要し通常は通院による治療が可能です。適応症例は主にステージA〜Cとなります。問題は病巣のみならず周囲の正常組織も照射しダメージを与えることです。放射線治療は手術療法後に再発 した場合にも使用されます。骨転移 による痛みの治療や骨折予防のために放射線治療 を行う場合は、場所や痛みの程度などによって照射の方法が異なります。そこで以下の方法が施行されています。

周囲の正常組織への照射量を減らす方法

三次元原体照射(3D-CRT)

治療範囲をコンピューターで前立腺の形に適合させ周囲の正常組織(直腸や膀胱)への照射量を減らす

強度変調放射線治療(IMRT)

放射線に強弱をつけることでがんの形に合わせて治療を行い正常組織への照射を減らす

外照射療法の副作用
急性期副作用
治療後半から頻尿・排尿障害が一過性に出現。治療終了後2〜4週程度で改善
晩期副作用
治療後数年後に徐々に出現。放射線性膀胱炎・直腸炎による排尿痛・血尿・血便など
痔のひどい人は直腸、肛門の副作用が強くみられるようです。直腸出血が繰り返す場合や止血剤、安静で止まらない場合には直腸鏡的にレーザーを用いて止血する場合もあります。また、射精障害はほぼ必発で、EDも徐々に増えてきます。

粒子線治療(陽子線、重粒子線)は、2013年8月現在では先進医療となっています。施行可能な施設には限りがあり、保険適用になっていません。

 

組織内照射療法(密封小線源療法)

 

小さな粒状の容器に放射線を出す物質を密封した線源を、前立腺へ埋め込む治療法です。組織内照射療法には、線源を一時的に前立腺の中に入れる方法と、永久的に埋め込んでおく方法があります。

  • 永久的埋め込み 永久挿入密封小線源療法(LDR low dose rate) ヨウ素125
  • 一時的埋め込み 高線量率組織内照射(HDR high dose rate) イリジウム192

永久挿入密封小線源療法は、麻酔下に肛門から器具を挿入し経直腸的前立腺超音波検査(エコーガイド)で確認しつつ行います。事前に計画された場所に会陰(陰のうと肛門の間)から前立腺に線源を埋め込みます。半日で治療が終了し、前立腺に高濃度の放射線を照射することが可能であり、外照射療法と比較して副作用も軽度です。ただし、線源が尿中に排せつされる可能性があるため、手術後、最低一晩は入院が必要です。

 

埋め込まれた放射性物質は、半年程度で効力を失うため、取り出す必要はありません。手術後1週間程度は、自転車やオートバイなど、会陰部に力がかかることは避けましょう。また、手術後1週間は飲酒を避けた方がよいでしょう。その他の制限はありません。体の中に放射線が残っていますが、周囲の人に対する影響に関しては問題ありません。

組織内照射療法(単独治療)の適応症例

  • 前立腺内にとどまった前立腺がん
  • 悪性度の低いがん
  • PSA値が10ng/mL以下
  • グリーソンスコアが6以下の低リスク群

が単独治療の対象とされています。この場合には手術(外科治療)と同等の効果が得られるとされています。高リスク群では、組織内照射療法の単独治療は勧められません。上記以外には、組織内照射療法+外照射療法 の治療法が勧められています。

組織内照射療法(単独治療)の適応不可症例

 

  • 経尿道的前立腺除去術 施行例  線源を前立腺全体に埋め込めない
  • 前立腺が大きすぎる場合  前立腺の一部が恥骨背後に存在し線源を埋め込めなし
  •               (治療前にホルモン療法で前立腺を縮小化し対応)

日本では永久挿入密封小線源療法は2003年9月から開始されました。この治療では手術と異なり、正常な前立腺細胞が残っているのでPSAの値が手術後と比べて非常にゆっくりと低下します。そのため再発の判定が難しい症例があります。再発した場合には、総合的な判断から、治療を行うこととされており、ホルモン療法・救済前立腺全摘除術・組織内照射療法(LDR・HDR)・凍結療法などが行われています。

小線源治療(組織内照射)の副作用
治療直後の排尿困難は外照射より高度で尿閉状態になることもあります。排尿障害が強く出る場合があるので治療前に症状の強い方は注意が必要です。

 

|内分泌療法(ホルモン療法)

 

前立腺がんは、精巣や副腎から分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)の刺激で成長します。アンドロゲンの分泌や作用を妨げる薬を投与し、その分泌や働きを抑制すれば前立腺がんの勢いを抑えることができます。これを利用したのが内分泌療法(ホルモン療法) です。以下の3つの方法を組み合わせて行います。

 

LH-RHアゴニスト(注射)・抗男性ホルモン剤内服・両側睾丸(精巣)を摘除する外科的去勢

 

内分泌療法(ホルモン療法)の適応症例

 

  • 転移のある前立腺がん   転移したがん細胞も前立腺がんの性質がある!
  • 手術や放射線治療を行うことが難しい症例(年齢・合併症など)
  • 放射線治療の補助療法   放射線治療前後に短期間施行

全身療法ですから転移のあるステージDが適応となります。局所進行がん(ステージC)には放射線治療と9ヶ月間のホルモン治療による併用治療をしばしば行ないます。欧米のガイドラインでは2〜3年の長期ホルモン治療が奨められています。

 

LH-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)アゴニスト

男性ホルモンの作用を低下させることを目的として、LH‐RHアナログ製剤を皮下注射する方法が一般的です。精巣に働きアンドロゲンの一種であるテストステロン の産生を低下させます。注射剤の場合は、1カ月あるいは3カ月に一度注射することで精巣からのテストステロンの分泌を抑えます。中止すると男性ホルモンは元にもどります。精巣摘出術(去勢術)では同じ効果が一生続きます。

 

リュープレライド (リュープリン 武田薬品)
ゴセレリン (ゾラデックス ゼネカ薬品)

 

抗アンドロゲン剤

男性ホルモンのアンドロゲンががんに作用しないよう抗アンドロゲン剤を服用します。抗アンドロゲン剤は副腎から分泌されるアンドロゲンの働きも遮断します。

 

アンドロゲン受容体を阻害  エンザルタミド(商品名 イクスタンジ)
アンドロゲン合成を阻害    アビラテロン(商品名 ザイティガ)

 

それぞれの単独療法として施行される場合や、両方の治療を併用される場合もあります。併用した場合は combined androgen blockade (CAB)療法 あるいは maximum androgen blockade (MAB)療法 ともいわれます。

 

内分泌療法(ホルモン療法)の問題点
治療の長期継続により、治療効果が弱まり病状が再燃します。再燃状態となると女性ホルモン剤や副腎皮質ホルモン剤などが使用されますが、これも、使用当初は効果がみられても、次第に弱くなります(去勢抵抗性)。内分泌療法(ホルモン療法)は前立腺がんに対して有効な治療法ですが、この治療のみで完治することは困難であると考えられています。

 

内分泌療法の副作用  男性ホルモン欠落症状 
勃起障害・更年期障害・発汗異常・性欲の減退・電解質の代謝異常・心電図異常、肝機能障害・女性化乳房・筋力低下・骨粗鬆症・メタボリック症候群・うつ状態

 

|化学療法(抗がん薬)

 

内分泌治療は初期にはほとんどの前立腺がん患者に奏効しますが、やがて不応となり効果を認めなくなります。内分泌療法での効果を認めなくなった前立腺がんは

 

内分泌療法抵抗性前立腺がん(hormone refractory prostate cancer HRPC) 
去勢(内分泌療法)抵抗性前立腺がん(castration-resistant prostate cancer CRPC)

 

などと呼ばれ従来から抗がん剤も無効とされ治療に難渋してきました。前立腺がんへの化学療法とはこのような内分泌療法が効きにくい低分化がんや、再発・再燃した時に行う治療法です。最近タキサン系抗がん剤の有効性が証明され、本邦でも2008年に健康保険適用となってドセタキセルの使用が承認されました。現在は一般的に  ドセタキセル  が使用され、一定の効果が認められていますが、効果が続く期間が短いという欠点があります。2014年9月に、カバジタキセル(商品名ジェブタナ)という新しい抗がん剤が発売となりました。ドセタキセルの有効性が認められない場合でも、カバジタキセルを使用することにより、生存期間の延長が期待できます。

化学療法(抗がん剤治療)の副作用
ドセタキセルの副作用 下痢・吐き気・食欲不振・口内炎・脱毛・発疹・白血球低下による感染症状
一般的副作用  浮腫・手足のしびれ・骨髄機能の低下・心タンポナーデ・肺水腫

 

|PSA監視療法(待機療法)

 

前立腺生検の結果、比較的おとなしいがんがごく少量のみ認められ、治療を開始しなくても、余命 に影響がないと判断される場合に選択される方法です。特に高齢者の場合には、なるべく体への負担の少ない治療法を選択していくことが大切になるため、PSAの数値などをみながら経過観察をするPSA監視療法は治療法の選択肢の1つとして重要視されています。PSA値を3カ月から6カ月ごとに測定して、その上昇率を確認します。PSA値が倍になる時間(PSA倍加時間)が2年以上と評価される場合にはそのまま経過観察でよいと考えられています。

PSA監視療法の適応症例

 

  • グリーソンスコアが6以下
  • PSAが10ng/mL以下
  • 病期T1-T2までの低リスク群
  • 現在の生活の質を大切にしたい
  • がんが微少で病理学的悪性度が低い
  • 症状のない超高齢者

 

PSAの数値を確認し症状の変化により再び針生検を行います。その結果
<経過観察を継続か> それとも<根治的治療・ホルモン療法への移行か>
を判断するためです。

 

|進展度・悪性度別の治療法の選択

 

低リスク群  転移のない限局がん

さまざまな治療法の選択が可能です。

 

中間リスク群 限局がん

手術が主な治療法となります。各治療を組み合わせることも必要になります。

 

高リスク群

放射線治療が主となります。放射線治療には内分泌療法(ホルモン療法)を併用することが多いです。
放射線治療単独より再発率や遠隔転移発症率が低くなります。

 

超高リスク群

放射線治療+内分泌療法(ホルモン療法) が標準です。症例によっては局所進行がんでも手術が選択肢の1つとなります。遠隔転移のあるがんについては内分泌療法(ホルモン療法)が標準治療です。

 

|分化度による治療法の選択

 

高分化がん(G1 グリソンスコア3+3=6)

限局がんの場合は前立腺全摘出術・小線源療法(放射線療法)が第一選択ですが、内分泌療法も有効なので、どれを選択しても生命予後には影響しません。限局がんでもさらに初期の場合は無治療、厳重な経過観察も選択可能です。

 

中分化がん(G2 グリソンスコア3+4or4+3=7)

限局がんの場合は前立腺全摘出術・小線源療法・外照射療法(放射線療法)が第一選択です。内分泌療法をまず行い、再度生検で効果を確認したあとで治療法を選択することも可能です。局所浸潤がんの場合は、内分泌療法後に放射線療法を行うのが一般的です。進行がんの場合は内分泌療法が第一選択です。

 

低分化がん(G3 グリソンスコア4+4=8以上)

限局がんの場合は前立腺全摘出術全摘が絶対的適応です。局所浸潤がんでは、内分泌療法と抗がん薬療法を行い、さらに放射線療法を併用します。進行がんでは、内分泌療法・放射線療法・抗がん薬療法を併用しますが、予後は不良です。

75歳以上の高齢者では、前立腺の全摘の代わりに、放射線療法を選択するのが一般的です。

 

|治療後の問題点

 

がんの診断がついて上記の治療が完了した後問題となるのは 再発・再燃・転移 です。

  • 再 発  

    治療後低下したPSA値が再上昇・局所の再発・リンパ節または他臓器に転移した場合

  • 再 燃

    最初から進行がんと診断され、内分泌療法施行し低下したPSA値が再び上昇した場合

再発・再燃に対する標準的な治療法はまだ定まっていません。どのがんもそうですが、再発あるいは再燃したら根治治療は難しいのが現状です。

 

1.再 発(Recurrence)

 

再発にはPSA再発と臨床的再発の2つがあります。根治を目的とした治療を実施したにもかかわらず、

 

PSA値がある基準を超えたとき(PSA再発)
リンパ節 または他臓器に転移 や新病変がみられたりしたとき(臨床的再発)

 

を再発 といいます。一般的には、PSA値の推移から再発を発見します。

 

PSA再発

治療後に正常化した血中PSA値が再び上昇してきた場合です。限局がん(ステージA、B)では臨床的再発(リンパ節や骨への転移など)が見られる数ヶ月ないし数年前からみられます。PSA再発に対する標準的治療法はまだ確立していません。経過観察、放射線、ホルモン治療、化学療法などが状況(根治療法前のがんの悪性度や進行度、およびPSA上昇速度など)に応じて考えられます。

 

臨床的再発

限局がんでは治療後に局所再発や遠隔転移が新たに出現した場合、進行がんでは治療により落ち着いていた病巣が再び増大したり、新しい転移巣が見られた場合です。ほとんどの場合、PSAの再上昇を伴います。治療はやはり状況に応じていろいろあります。

 

通常、PSA値の上昇は再発の最初の兆候としてあらわれます。併用療法が行われていない場合、PSA値の上昇が認められなければ、画像検査や触診は不要とされています。ただし、特殊な前立腺がんの場合は、例外もあります。施行治療別の再発については次のようなものがあります。

 

手術療法のみを受けた場合

一般的に、2週から4週あけて測定したPSA値が2回連続して0.2ng/mLを超えた場合、再発の疑いがあると考えられています。PSA値0.5ng/mL未満の段階で、救済療法 として放射線治療を始めることが勧められます。また、PSAが倍の値に上昇するまでにかかる時間(倍加時間)が10カ月以内、またはグリーソンスコアが8?10の再発については転移をしている可能性が高く、局所療法である放射線治療は効果が乏しいため、全身療法である救済ホルモン療法が勧められます。

放射線治療のみを受けた場合

治療後のPSA最低値から2ng/mL以上の上昇がみられると、再発の疑いがあるとされています。
この場合の治療としては、ホルモン療法が最も広く行われています。また、局所再発前立腺がんに対する根治的救済療法としては、前立腺全摘除術・凍結療法 ・組織内照射療法(密封小線源療法)・高密度焦点式超音波治療法(HIFU:High Intensity Focused Ultrasound)の4つがあげられますが、どの治療がより有効であるかは、専門家の間でもまだ意見の一致がみられていません。

内分泌療法(ホルモン療法)を受けた場合あるいは臨床的再発をした場合

内分泌療法(ホルモン療法)によって、がんの進行が一時的にとどまっていたものが、再びPSA値が上昇した場合、あるいは臨床的再発をした場合も再燃 とよばれ、この場合には内分泌療法(ホルモン療法)の種類を変更したり、化学療法(抗がん剤治療)を行ったりします。

 

PSA値に関しては場合によって誤差が出ることがあります。また、いずれの病態でも当面、経過観察という選択肢もあります。それぞれの患者さんの状況に応じて治療やその後のケアを決めていきます。痛みなどの症状があるときには症状を緩和する治療も行います。

 

2.転 移(Metastasis)

 

がん細胞がリンパ液 や血液 の流れで運ばれ別の臓器に移動し、そこで成長したものをいいます。がんを手術で全部切除できたようにみえる場合や、放射線治療でがん細胞が完全に死滅していない場合、その治療終了時点の検査では見つけられないごく少数のがん細胞が、別の臓器に移動している可能性があります。根治治療を実施した時点では見つけられなくても、その後がんの細胞が増えてがんが大きくなることで、時間がたってから転移として見つかることがあります。前立腺がんでは骨・肺・リンパ節への転移が多いとされています。転移症例に対しての治療は一般的にホルモン療法さらには化学療法(抗がん剤治療)が施行され痛みのある場所が限局している場合は、放射線治療(外照射療法)が有用なことがあります。

 

骨転移症例に対しての治療法
進行期前立腺がんの患者様では骨転移を多く認めます。次の薬剤を使用します。治療の目的は 骨転移の進行を抑制・骨粗しょう症による骨折防止 です。

 

ビスホスフォネート製剤 3−4週毎点滴投与
元来骨粗しょう症・高カルシウム血症の治療に使われていた薬ですが、前立腺がんの骨転移の痛み・骨折の軽減などに有効とされています。

 

ゾレドロン酸 (ゾメタ ノバルティスファーマ)  点滴投与
破骨細胞(骨を破壊・吸収する働きをもつ細胞)を抑制することにより、骨転移の進行を抑制する

 

デノスマブ(ランマーク 第一三共) 皮下注射
破骨細胞の分化と機構を調節する因子(RANKL)を阻害し、破骨細胞の働きを抑え、骨が弱くなるのを抑制

 

ストロンチウム療法
ストロンチウムが体内でカルシウムと同じはたらきをすることから、ストロンチウムの放射性同位元素を投与して、骨転移の痛みを和らげる治療です。放射性物質のため治療のできる施設が限られます。

 

3.生活の質を重視した治療(緩和ケア Quality Of Life)

 

がんと診断時より クオリティ・オブ・ライフ(Quolity Of Life 生活の質) の改善・向上 を目的として、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげたり、患者さんとご家族が自分らしく過ごしたりするための緩和ケア が浸透しはじめています。がんの患者様が自分らしい生活を送ることができるように、緩和ケアでは医学的な側面に限らず、幅広い対応をします。痛み・吐き気・食欲不振・だるさなど身体症状や、気分の落ち込み(うつ)や孤独感など心のつらさを軽くするため様々な治療を心身ともに行います。

 

|治療成績と予後

 

前立腺がんは早期発見例が増加し内分泌療法が有効なため他のがんと比較すると治療成績と予後は比較的よいがんといえます。

 

前立腺がんの5年生存率

  • 限局がん 90%以上 (高分化・中分化がん 5年生存率は100%近く)
  • 局所浸潤がん 70〜80%
  • 進行がん 40〜50%
  • 転移症例 30%以下

治療後の経過観察と検査
前立腺がんの進行はゆっくりであることが多く、長期間にわたり経過をみていきます。治療後安定した状態の方でも、手術後2年間は3カ月ごと、以降2年間は6カ月ごと、その後は年1回程度受診し、必要に応じて診察、PSA検査や画像検査を受けることが一般的です。尿の量が急に減ったり、血尿が出たりしたときは、診察の時期でなくても必ず受診するようにしましょう。

田島クリニック

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